兄の物語[28]彼を知る者たち

「護衛依頼、お疲れ様でした~~」


「う~~~っす。今回は盗賊が出てこなかったし、割と楽でしたよ~~。んで……なんで、俺たちの少し下の連中とか、タメの奴らが変に沈んでるか、ピリピリしてるんすか?」


鬼人族や武闘派の獣人族に負けない巨躯を持つ人族の冒険者、テック。


他の街の商人から指名を受け、ドーウルスまで無事に護衛し終えたばかり。

まずは冒険者ギルドに報告しないといけないため、そのまま直行したのだが……ロビーに居る同世代は後輩たちの雰囲気が暗い、もしくはピリついていることに違和感を覚えた。


「もしかして、ルーキー狩りでも怒ってるんですか」


自分たちと同じく、若い冒険者が狙われてる可能性が頭に浮かび、表情に薄っすらと怒りを浮かべるのはテックとパーティーを組んでいる男性冒険者、ソン。


「い、いえ。そういう訳ではありませんよ」


「えぇ~~、そうなんですか? でも、絶対に何かありましたよね。じゃなかったら、一部の冒険者が纏まってあんなに普段通り騒いでない? のはおかしいと思うんだけど」


テックとソン、二人とパーティーを組んでいる小柄の双剣使い、ヒルナ。

ドーウルスという街を拠点に活動してることもあり、今のロビーの状況がいつもと違うことには直ぐに気付いた。


「えっとですね……実は、今とあるパーティーがドーウルスで活動を始めたんですよ」


「とあるパーティーってのは、俺らの同世代をピりつかせる素行が悪いんすか?」


「いやいや、全くそんな事ないですよ。本当に優秀なパーティーではあるんです」


「…………なるほど、そういう事でしたか」


三人とパーティーを組んでいる母性溢れるヒーラー、シェリンが一人で納得のいった顔になる。


「何が解ったの、シェリン?」


「ひとまず邪魔になるので、移動しましょう」


何度も通っている酒場へ向かい、乾杯してから直ぐに話題は受付嬢が話した優秀なパーティーに移る。


「それで、何が解ったんだよシェリン」


「自分たちと歳が近いパーティーであるにも関わらず、その圧倒的な実力を見てしまったのでしょう」


「……それであんなに焦ってるのか? そういうのはここじゃあ、そこまで珍しくねぇと思うけどよ」


「言ったでしょう。圧倒的な実力を見てしまったと」


「EランクやDランクの中でも頭二つか三つ抜けてるぐらいの実力じゃねぇってことか」


「おそらく」


かつてゼルートたちと共に学園の生徒たちの護衛として仕事を受けた四人は、かなり順調に成長していき、ランクはDからCに昇格していた。


この四人も優秀といえば優秀なメンバーが揃ったパーティーではあるが……同世代の者たちが強過ぎる嫉妬を覚えるほどではない。


「マジかよ……ん? もしかして、誰かがその超強ぇ奴らにボコされたのか?」


「適当に絡んで喧嘩吹っ掛けて、結果的にボロ負けしたってのはありそうだね~~~」


「ボロ負けと言うと……ゼルートと戦った、ドウガンさんの様にか?」


「それって確か、ボロ負けって言うか……遊ばれたのに近かったんだっけ?」


「そういった戦闘内容だと聞いてる」


既にドーウルスから拠点は移しているが、まだ冒険者として活動はしているベテラン。


決して悪い、屑ぃ冒険者ではないのだが……調子に乗っているルーキーをそのまま調子に乗らせないようにしようと思い、行動するところがあった。


しかし……その結果、当時冒険者として活動を始めたゼルートに遊ばれ、顔真っ赤ドウガンという不名誉な二つ名まで付けられた。

そして最後には戦利品がのごとく、隠し持っていたお守りの白金貨を発見され……その日の宴会に参加した冒険者たちの食い代、呑み代へと消えた。


面子が全てというわけではないが、そういった部分が重要である冒険者という職業上…………同じ場所に長くは留まれない。

加えてその後、ドウガンを慕っていたルーキーがゼルートに喧嘩を吹っ掛け、同じく模擬戦でボロ負けした。


「ぶっちゃけ、そのパーティーには問題がねぇんだよな…………つっても、あの顔のままだとなぁ……」


気持ちが沈み続ける、スランプ。

そういった時期を体験し、乗り越えた経験があるからこそ、テックは彼らの今後が非常に心配だった。

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