少年期[977]今度こそ休む

「どうすれば強くなれるか、ねぇ……それでダンジョンについて熱く語ったわけね」


「おぅ、勿論熱く語ったぞ。まぁ、コロシアムタイムの転移トラップについて語ったらちょっと引かれたけどな」


「そりゃ引かれるに決まってるでしょ」


コロシアムタイプの転移トラップとは、三回戦、五回戦、七回戦と時によって連続で戦わなければならない回数が増える転移トラップ。


回数が少ない程、比較的現れるモンスターの強さは低い。

回数が多い程クリアした時に手に入る宝箱の質が向上するが……ゼルートが転移してしまった時は七回戦のコロシアムであり、五回戦目の時点で成長を経験したサイクロプス二体。

片方は体術メインで、もう片方は大剣術がメインの個体と、戦い方が違うためそれなりに厄介な強敵。


そして六回戦目には真紅の毛を持つミノタウロス亜種という、ゴリゴリの近接狂暴魔物が出現。

ビリーズや、ビリーズの部下たちの戦闘力も並ではないが、超強敵であることに変わりはない。

そんな超強敵を倒したかと思えば、ラストにキングヴェノムサーペントという真紅の毛を持つミノタウロス亜種とは真逆と言えるタイプの超強敵と戦わなければならない。


そんな地獄の様な連戦を嬉々として語るのだから、歴戦の騎士であるビリーズが引いてしまうのも無理はない。


「ダンジョンか……そうえいばゼルート、ホーリーパレスはまだ最下層までの探索が終わってないのだろう」


「そういえばそうだったな。今も銀獅子や他の同業者たちが頑張って探索してるだろ」


「それなら、また私たちも探索しに行かないか?」


「え? マジで言ってるのか」


「ルウナ……つい最近までダンジョン探索してたじゃない」


三人はバカンス中であるにも関わらず、偶々未開拓の海底ダンジョンを発見してしまい、ギルドにバレない様に自分たちだけで最下層まで探索を行っていた。


最後はAランクの魔物であるフォーシックタートルと激闘を演じた。


「アレナ、ダンジョン探索はいつやっても楽しいだろ!!!」


「……そんな良い笑顔で言われたら、そう思えてきちゃうじゃない」


「おっ、本当か!!」


「気がするってだけよ。私としてはゆっくり落ち着きたいわよ」


「はっはっは、確かにここ最近バカンスには行ったけど、結局そこそこ強い海賊退治をしたり、海の魔物を相手に戦ったり、ダンジョン探索したりしてたからな」


ゼルートしてはラルフロンで十分英気を養う事が出来たと思っている。


アレナも一応……一応休むことが出来たと思ってはいるが、これから直ぐにダンジョンがある街に向かい、ダンジョン探索を行う勇気はなかった。


「ふむ…………それなら、ゼルートの実家に帰って休むか?」


「俺の実家か? 確かにバカンスとまではいかないけど、休むのに時間は当てられ、る…………はは、ったく。そういう事かよ」


ルウナが休むために何故自分の実家を選んだのか、ほんの少し考えれば直ぐに解った。


「まっ、俺としては全然構わないけど、アレナはどうだ?」


「……ちゃんと休ませてもらうわよ」


「あぁ、ゆっくり休んでくれ」


こうして急遽、ゼルートの実家に戻ることが決定した。



「ぜ、ゼルート様! お久しぶりです」


「どうも。ちょっとゆっくり休みたいなって思って、帰ってきました」


事前に連絡していなかった為、門兵の兵士たちは慌てて屋敷に報告。


「おぅ、ゼルート! 急にどうしたんだ? 俺としてはもっと何度も帰ってきてくれて良いんだけどな」


「おかえり、ゼルート! 皆もお帰りなさい!!」


報告を受けてガレンとミレアは慌てて玄関前に向かい、息子とその仲間たちを出迎えた。


「なっはっは!!! そんな事があったのか。バカンスに向かったつもりだったのに、結局はダンジョン探索を繰り返す日々……良いじゃねぇか。なんだかんだでゼルートらしいぜ!!!」


息子からの報告を聞いて大爆笑のガレン。

しかし、バカンス以降の話を聞くと、徐々に眼が細まっていった。

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