少年期[929]とりあえず確保しないと

「はぁ~~~~……マジで本当に美味かった」


「同感ね。海鮮丼を食べた時の衝撃も凄かったけど、今回は今回でまた……ゼルート、冒険者を引退したら本当に店でも開いたら?」


六人で食べたからというのもあり、ヴィールクラブがメインの料理は一時間もせず完食。


大きな巨体にはがっつり身が詰まっており、基本的に六人で食べる量ではない……が、一般人以上の食欲がある冒険者たちであれば、無理ではない。


無理ではないが、完食までの時間を考えれば、かなりのスピードで食べ進めた。


「店、ねぇ……まっ、選択肢の一つとして頭に入れとくよ。とにかく、ラルフロンにいる間に、ヴィールクラブを大量に狩っておかないとな」


「うむ、激しく同意だ」


満腹状態のルウナは地面に寝転がっており、ヴィールクラブの美味さを思い出し……うっかり涎を零す。


「ルウナ……あなた、まだ食べ足りないの?」


「いや、さすがに今回は腹一杯まで食べた。そうだな……とりあえず一時間は何も食べられないな」


パーティーメンバーの言葉に色々とツッコみたい部分はあるが、満腹感が原因で言葉が出てこなかった。


「なら、数時間後にダイドシャークの刺身……海鮮丼でも食べるか」


「……ふふ、ありだな!! ゲイル、今から腹を空かせないか?」


「勿論、付き合いましょう」


アレナから向けられる呆れの目線など気にせず、二人は満腹状態で軽い組み手を始めた。


「あの二人……バカじゃないの?」


「はは、ツッコミに鋭さがないぞ」


「仕方ないでしょう。ヴィールクラブを主体とした料理……本当に美味しかったもの」


食事中、今自分は確かに幸せを感じていると断言出来た。


(ヴィールクラブが元々美味しいってのもあるけど、やっぱりゼルートの料理あってこそよね~……本当に幸せだわ?)


女としてそれはそれで良いのか? という疑問が幸せ過ぎて出てこない。


その後、なんだかんだでアレナもゼルートと軽い組み手を初めて、それなりに消化を済ませ、お腹を空かせてからダイドシャークの刺身を使った海鮮丼を腹一杯食い尽くした。



「えぇ~~……そう、くるか」


翌日、疲れ知らずのゼルートたちは再びダンジョンダイブ。

その翌日も同じくダンジョンダイブを行い、二十五階層へ到達。


すると……目の前には雲一つない快晴の下に、海があった。


二十一階層から二十四階層まではそれまでと同じく密林だったため、ゼルートとしては予想外の展開だった。


「……この階層、冒険者たちにとっては思いっきり休息出来るところね」


「えっ? いきなり変な階層を出して冒険者を困らせようっていう、ダンジョンの性格が悪い部分が出た階層じゃなくて???」


リーダーの発言に疑問符が浮かぶも、何が言いたいのか解らなくもない。


「そうね。このダンジョンが地上にあったとしたら、何だかんだで冒険者からすれば休憩所じゃなくて、ちょっと面倒な階層かもしれないわね」


それでもアレナとしては、二十五階層は休憩所というイメージが強い。


「でもね、ゼルート。とりあえず思いっきり気配感知を使ってみなさい」


「? ………………へぇ~~~、こんな階層が……そういえば、話だけは聞いたことがある、な」


ゼルートの気配感知網には、殆どモンスターの気配がなかった。


(砂浜に関しては、小動物がチラホラ? モンスターがいないことはないだろうけど、多分このダンジョンの二十五階層には相応しくない強さ。海の方も……それなりに魚は多い。ただ、探った感じ、モンスターはとりあえずいない、な)


寝床などはないが、冒険者であれば生活するのに困ることはない階層。


当然、二十六階層へ続く階段を見つけるのは面倒ではあるが、それでも冒険者たちにとって心身共に休息できる地獄に仏の階層であることは間違いなかった。

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