少年期[901]忘れてはいけない情報

ゼルートたちはザイアンと共に、普段海鮮丼を作って食べている、人気の少ない場所へ移動。


「んじゃ、ちょっと待っててくれ……って、そういえば腹の調子はどうなんだ?」


現在、時刻は九時過ぎ頃。

朝食の時間は過ぎているが、それでも大抵の者が朝食を食べ終えてから、数時間も経っていない。


そんな状態では、例え提供される料理がどれだけ美味くても、本当に満足するまで食べることが出来ない。


「大丈夫です!!! 朝食は食べていませんので!!!」


「そ、そうか。っそれなら丁度良いかもな」


自分たちを見つけ、自分たちがギルドに現れるまでずっと朝食抜きで待ち続け、一定時間を過ぎたら大人しく何かしらの依頼を受けて過ごしていた。


もしそんな生活をザイアンが送っていたと思うと、ほんの少しだけ申し訳なさを感じたゼルート。


(いや、別に俺は一ミリも悪いことはしてないけど……それだけ、ザイアンの海鮮丼に対する執念が凄かったってことか)


朝食を抜いてから依頼を受けてモンスターを倒しにいくなんて、正直バカだろと思いながら、ささっと調理を進めていく。


米を炊き、魚系モンスターを捌く。

前者の方が時間が掛かるが、ザイアンにとって涎が止まらない状態になれど、出来上がるまで待つことに対して、一切苦だと感じなかった。


「ほい、お待ちどうさま。これが俺たちが食べてた料理、海鮮丼だ」


「こ、これが……っ」


垂れそうになった涎を、なんとか堪えるザイアン。


「本当はこっちの箸を使って欲しいところだが、そこは別にいっか。お好みで醤油を追加してくれ。こっちの山葵は、ちょこっと付けるだけで十分だと思う。無理だと思ったら、無理して食べる必要はないから」


「わ、分かりました」


ゼルートからの軽い説明が終わると、ザイアンはがっつきたい気持ちを抑え、冒険者にしては礼儀正しい形で食べ始めた。


「っ!!!」


初めて食べた料理の味に、感動すら覚えた。

再びがっつきたい衝動に駆られるも、食べ方は礼儀正しい……が、食べるスピードが格段に上がった。


ザイアンはそこまで情報網が広いタイプの冒険者ではないが、ゼルートが戦争で例を見ない戦果を上げ、貴族の令息から貴族になったという情報は得ていた。


服装などは完全に冒険者らしいものではあるが、よ~~く見ると……貴族らしいオーラを感じなくもない。


そんな事情を知っているからこそ、目の前で下品な食べ方は出来ない。

貴族の令息から貴族になったゼルート本人は大して気にしないが、本人がそれをザイアンに伝えたところで、形が崩れることはない。


「ゼルート、私も食べて良いか?」


「あぁ、良いぞ」


ここ最近で魚系モンスターは随分と狩ったため、まだまだ量には余裕がある。


ザイアンの丼に乗せた刺身以外の種類もあるため、状況としては食い放題に似ている。


「全部食べたら、そっから好きなように取ってくれ」


「ありがとうございます!!!!」


ザイアンは五分と掛からず、一杯目の海鮮丼を完食。


一杯目とは違う刺身をご飯の上に乗せ、再び手と口を高速で動かす。


(凄いな。ちょろっとだけだ涙を流しながら食べてる……そんなに美味いか。作った本人としては……いや、料理したと言えるほど頑張ってはいないが、そんな表情で食べられると、少なからず嬉しいな)


そして、また五分と掛からず二杯目の海鮮丼を完食し、三杯目をおかわり。

一杯一杯のご飯の量、刺身の量は若干一人前を超えているのだが、そんなの関係無い! と言わんばかりの表情で食べ進める。


「ふぅ~~~……ゼルートさん、アレナさんとルウナさんも、ありがとうございました」


八杯目の海鮮丼を食べ終えたところで、ザイアンはお盆にスプーンを置いた。


その表情には「まだ食べたいがこれ以上は……」という悔しさもあるが、おおよそ満足気なものだった。

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