少年期[890]震える二人

「ゼルート、そっちは全部終わったみたいね」


「あぁ、思ったよ」


「……い、色々と破壊したみたいね」


「残しておいた方が良いかと思ったけど、どこから情報が洩れるか分からないからな」


ゼルートたちが今回潰した怪しい集団は、全員が有権者から追い詰められた過去がある者たち。


だからといって、文字通り世界を破壊する怪物を召喚して良い理由にはならないが……そんな装置と呼べる場所があれば、正真正銘悪意の塊の様な者たちが、装置を利用するかもしれない。


そう考えると、壊してしまった方が良いと判断を下した。

この判断には、アレナたちも特に不満はなかった。


「そうね。そういったもしもの事態を考えると、壊してしまった方が良いわね」


「だろ。それで……そっちの人たちが、行方不明になってた人たちか?」


「そうよ。意外という何と言うか、特に襲われたりされていないみたい」


「……まっ、大事な生贄ってことを考えると当然か」


ホルーエンに戻るまでの道中、ゼルートから詳しい話を聞いたアレナたちは、ゾッとした表情を浮かべていた。


「えっと、その……ゼルートが、恐怖を感じたってことで良いのよね?」


「あぁ、そうだよ。正直、ビビった」


相手がどんな強敵であろうと立ち向かってきたゼルートが、ビビったと宣言した。


まさかの言葉に、同じく強敵に笑顔で立ち向かうルウナの表情から、余裕が完全に消えていた。


「……それは、本当か? 事実か?」


「マジで本当で事実だよ。あそこであの爺さんを殺してなきゃ、どうなってたことか……時間制限があると仮定して、その時間制限までなんとか時間を稼ぐのが精一杯……いや、それを迎える前に死んでたかもな」


「「……」」


表情を見れば、誇張表現か本当かどうかぐらいは解る……解ってしまう。

仲間だからこそ、ゼルートが一切嘘を付いてないことが解ってしまったアレナとルウナ。


「おい、なんでそんな沈むんだよ。いくら俺だって、神様とかそういう存在には勝てないって」


「……そ、そうね」


なんとか反応するが、間近でゼルートの強さを見てきたためか、そのゼルートが全力を出しても勝てないと断言した。

これは二人にとって大き過ぎる衝撃。


「それに、実際召喚されたかもしれない化け物を視てはいないんだ。勝てる可能性がゼロって訳じゃない」


悪獣との戦闘でも、全ての手札は出し切っておらず、余力を隠していた。


全力を出す、正確には一人だけの力ではないので、ゼルート自身はあまり最後の切り札を使いたがらない。


「うん、ごめん。少し沈み過ぎてた」


「アレナの言う通りだな。まだまだ鍛錬と実戦が足りない証拠だ!」


ルウナらしい前向きな言葉を聞き、二人は小さく笑い、固い空気が和らいだ。


とはいえ、戻ったらやらなければならない事がある。

ホルーエンの領主と面会し、今回の件について真実を話す。


知らぬ間に解決されたことに関して、怒りを露わにする様子は一切無く、領主はただただゼルートたちに感謝した。

今回の一件はギルドから依頼として出されたものではないが、領主はゼルートにそれ相応の金額を渡した。


そんな大金貰えませんよ……という言葉が口から出かかったが、それはそれで領主の面子を潰すことになると思い、大人しく受け取る。


それが終わると、今度は国王への手紙を書き始める。


あの怪しい集団に関して、ホルーエンの領主は関係していなかった。

拠点としては、環境が厳しい場所の地下が優れていると判断されただけ。


しかし……トップの怪しいおじいさんの記憶や、他の原型がとどまっている人たちの記憶を取り除いた結果、弱者や私情で他者を貶めた者たちの情報はそれなりに拾うことに成功。


確かな書類などによる情報はない。

だが、今回の一件が起きる原因となった者たちについて、ゼルートは解る限り国王に知らせた。

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