少年期[833]取り乱すことはない
王城で開かれるパーティー当日……ゼルートたちはガレンとレミアと一緒に、王城に来ていた。
王城で働く者たちによって、色々とセットされたゼルート。
「とてもお似合いです、ゼルート様」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
過去に来た動きやすい正装を身に纏い、髪型はヘアメイクスタイリストたちによって、普段は絶対しないような髪型にセットされていた。
(確かに変だとは思わないけど、俺に似合っているかどうかは……いや、王城で働く人たちの腕を疑うのは良くないな)
王城で働ける者たちは、使用人の中でも限られたエリートたちのみ。
当然、仕事の腕が並であるはずがない。
(この方が今回の戦争で活躍した英雄様なのよね……噂通りの外見だけど、あまり強そうには思えないわね)
(活躍の内容が本当のか疑わしいけど……横柄な態度じゃないところは好感が持てる子ね)
(こ、この人の魔力……いったいどうなってるのかしら? どうやら、戦争で活躍した内容は全部本当……なのかもしれないわね)
王城で働いていれば騎士たちと遭遇することは何度もあるが、彼女たちは戦力を測ろう……なんて考えで彼ら彼女たちを見ていないので、一目で戦力を見抜ける眼など持っていない。
だが、貴族の娘である者たちが多く、当然……貴族の娘というだけあり、魔法の腕はそこそこあるというメイドもいる。
そんなメイドの中でも魔力の感知力が高い者であれば、ゼルートの異質さに気付く者も……僅かにいた。
しかし、そこは王城で鍛えられたメイド。
予想外な事実が目の前にあろうと、取り乱すことはなく、淡々と自分の仕事を行った。
そしてヘアセットなどが終わったゼルートはアレナたちと合流。
「うん、やっぱり綺麗だな。母さんも凄く似合ってるよ」
「褒めてくれて嬉しいわ、ゼルート」
当然、今回の戦争に参加したレミアも祝勝会のパーティーに参加する。
ゼルートほどではないが、レミアも超強力な移動砲台としてディスタール王国側の戦力を削り、前で戦う兵士や騎士たちの援護も行っていた。
その戦闘力の高さは国に仕える魔法師団、宮廷魔術師たちの耳にも入っており、是非とも我が師団に入団してもらうべきだ!!!! と考える者も幾人かいるが……レミアは例え本当に勧誘されたとしても、入団する気は一ミリもなかった。
ゼルートたちが集合した後、直ぐに国に仕える騎士の一人が現れ、国王陛下が待つ場所へと案内される。
「まずはゲインルート様からお入りください」
「分かった」
ディスタール王国との戦争が始まった時すらあまり緊張していなかったガレンだが、これから国王陛下と会う……その未来にとても緊張しており、入る前に二度深呼吸をし……完全に心を落ち着かせてから入場。
勿論、この時一緒に活躍したレミアも一歩後ろを歩きながら中へと入る。
「父さんもこれで子爵か伯爵か」
「冒険者から貴族になり、一代で子爵か伯爵……改めてとんでもないわね」
「……ふむ、その通りだな」
アレナとルウナの言葉に同意するかのように、ゼルートたちを案内した騎士と、扉の前に立って侵入者を撃退する騎士二人も頷いた。
「とんでもないんだろうけど……まっ、時代が時代だったから、と言える面はあるだろうね」
爵位を上げるには当然、領地の発展や功績が必要となる。
今回の戦争に関しては、必要な功績になりうる可能性が大きかった。
領地もゼルートが生まれた頃と比べてかなり発展しているので、ゼルートとしては当然の流れと感じる部分がある。
「というか……これ、俺じゃなくて二人も中に入るんだよな」
「そういう指示ね」
「ということは、やっぱり二人も爵位を貰うことになりそうだな」
「そ。そうなりそう……ね」
ゼルートとの言葉はまさにその通りであり、二人に用がなければ……アレナとルウナがゼルートと一緒に国王陛下の御前に向かうことはないのだ。
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