少年期[803]厄介な存在を潰せるか?
(ふむ、やはり威力が高過ぎたようだな)
ゼルートも大概怪物だが、母親であるレミアも傑物だと本能的に感じ取った一撃。
ブラッソがミスリル製の棘棍棒で打ち飛ばしたお陰でカイザーボルケニオンは天雷の狼をあっさり打ち砕いたが、ブラッソが打ち飛ばさずとも打ち砕くことは不可能ではなかった。
(良い感じに打ってくれたじゃない)
レミアの魔力コントロールだけでは、天雷の狼を打ち砕いて終わり……だったかもしれない。
しかしそこでブラッソが思いっきり……尚且つ、コントロールを加えた打撃で打ち飛ばしたお陰で、カイザーボルケニオンは天雷の狼を撃破した後、下に降りて敵を滅ぼした。
「ブラッソ、ナイス打撃よ!!」
「お安い御用だ」
さて、このまま順調に前に進んで行こう。
思わずそう言いたくなる流れだが……敵側もそう簡単には行かせてくれない。
「ッ!! レミア、少しの間離れる」
「分かったわ、気を付けてね」
「あぁ。お前たち、レミアたちのことを頼んだ」
「「「「はい!!」」」」
ブラッソがどれほどの強さを持っているのか……身を持って知っている魔法使い組の護衛騎士、兵士たちは気合が入った返事を返した。
ブラッソが戻ってくるまでは、自分たちがレミアたちを守る盾。
そう思うと……自然と戦意が湧き上がってくる。
「ふむ……あの戦意はお前たちの者だったが」
そう口にするブラッソの前には、四人の冒険者たちが立っていた。
「そういうお前こそ、さっきカイザーボルケニオンを打ち飛ばした訳分かんねぇオーガだろ」
冒険者たちからの目でも、ブラッソが超高火力の炎槍を棘棍棒で打ち砕く光景が見えていた。
「訳分からないオーガか……ならば、一つ自己紹介をしようか。俺はブラッドオーガのブラッソ。最前線で仲間と共に暴れているゼルートの従魔だ」
ブラッソの言葉に、四人とも表情に小さな動揺が生まれたが、直ぐに鎮まった。
「ほ~う……なら、なんでお前はここにいるんだ?」
「決まっているだろう。ゼルートの家族を守るためだ」
「……そういえば、あの化け物は貴族の息子だったか」
その瞬間、男の表情にピエロの様な笑みが一瞬浮かんだ……そう、それは一瞬のみ。
「何やら愉快なことを考えているようだが、俺を簡単に超えられると思っているのか?」
「ッ……ふっ、お前こそ俺たちの攻撃を耐えられると思ってるのか」
ブラッソの悠然とした態度も変わらないが、四人の自信あり気な表情も変わらない。
(実力的には、先程ガレンが瞬殺していた冒険者たちよりも上か……しかも、全員が前衛)
個々がロングソード、双剣、槍、大斧を持つ前衛。
「俺たちはAランク冒険者の中でも前衛に特化した面子だ。さっきから的確にうちの戦力を削ってくる魔法使いが厄介に思ってな……ちょっくら殺そうと思ってんだよ」
「だな。さっきのカイザーボルケニオンもヤバかったし、サクッと殺しておきたい」
「完全に同意だ。あれを野放しにするのは危険だ」
「動く砲撃台……今すぐにでも潰すべき存在」
全員殺意がブラッソの後方にいるレミアに向いていた。
(レミアを早めに潰しておきたい。その意思は解る)
仮に自分が敵国側の戦闘者なら……潰しておきたい存在は多いが、その中でもばんばん攻撃魔法を放っても魔力切れになる様子がないレミアは早い段階で潰しておきたい。
だが……そうはさせない為にブラッソが護衛を行っていた。
「レミアの旦那である、ガレンは潰さなくても良いのか?」
「あっちには騎士様が向かってるから問題無い。俺たちは……まず、目標に到達する前にモンスター退治って訳だ」
「良い感じの役割分担だよね」
「貴様を倒せば、後衛職の魔法使いのみ」
「周囲の兵士や騎士は、取るに足らない存在」
対人戦に優れている騎士にガレンをぶつけ、モンスター討伐に優れている冒険者たちがブラッソを潰し、超高火力砲台のレミアを潰す。
悪くない動きだが……オーガが、モンスターが対人戦に慣れていないと思ってはいけない。
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