少年期[784]意外と防がれた

今回の戦争とは関係無い国の者が開始の合図となる光魔法を放ち……いよいよ戦争がスタート。


そして始まった瞬間に、ゼルートはゲイルとラルから雷の魔力を……ラームからは風の魔力を受け取り、自身は火の魔力を体内から放出。


三つの魔力を組み合わせ、複数のワイバーンを形成。


「全く……詠唱もなしにとんでもないことをするわね」


「うむ、天晴れだ!!!」


ゼルートは今回の攻撃で自身の魔力の大半を使うと決めており、規格外の魔力を持つゼルートが大半の魔力を使用すれば……当然、とんでもない数のワイバーンが生み出される。


その数はどんどん増えていき、三十を超えた。


そして他の者たちの詠唱が終わったのを確認し、ゼルートはタイミングを合わせて特大広域魔法を発動。


「メテオワイバーンスコール」


名前の通り、流星と化したワイバーンの雨が降り注ぐ広範囲を攻撃する高火力の魔法。

並みの防御では防ぐことが出来ず、一瞬にして消滅させられる……そんな威力を持つほど強力な攻撃魔法なのだが、敵側がゼルートが生み出すワイバーンのヤバさに即座に気が付いた。


とある名将が各大魔法使いたちに頼み、降り注ぐワイバーンを撃ち落として欲しいと願い出た。

大魔法使いたちも一目であの魔法がヤバいと気付き、名将の申し出を聞き入れた。


「あっ!?」


というわけで……ゼルートが放ったメテオワイバーンスコールに対して、大魔法使いたちだけではなく、剣技や槍技に優れた者たちも全力で遠距離攻撃を放ち、相殺しようとした。


そして実力者たちが特大の遠距離攻撃を放ったこともあり、メテオワイバーンスコールは三十ほどあったのだが……そのうちの二十程は相殺されてしまった。


相手の特大魔法を相殺するという手段は、オルディア王国側も行っている。

そして敵側に自身の攻撃を集中的に相殺されるのは、寧ろ名誉な事。


なのだが……メテオワイバーンスコールで敵に甚大なダメージを与えようと思っていたゼルートとしては……ふざけんなよ!!! と、思ってしまう結果。


「……ッ!!! ふざけんな!!!!」


思うだけではなく、実際に言葉に出てしまった。


周囲の魔法使いたちが大量の魔力を消費して疲労状態の中、ゼルートは自身の魔力を放出し、結晶にしていたことを思い出し……アイテムリングの中から一つ結晶を取り出した。


そして結晶を砕き、自身の体に取り込む。


体内の魔力が総量を越え、その分を放出するためにゼルートはもう一度特大魔法を放った。

しかも、今回は一つではなく二つ。


「煉獄の凶弾!!! 天竜の戯れ!!!!」


ゼルートが放った二つの魔法は、どれもゼルートのオリジナルの魔法。

とはいっても、魔法スキルのスキルレベルが高くなければ放てないという制限はない。


制限はないが……圧倒的な魔力量がなければ、撃った瞬間にぶっ倒れてしまう。

人によっては死に直前まで追い込まれる可能性がある。


地獄の炎によって生み出された複数の恐ろしいパ〇クマンが敵国の兵士や冒険者は食い荒らし、風の魔力によって誕生した天竜が文字通り、戯れるかのように敵を蹴散らしていく。


「……ゼルート、ちょっと容赦無さ過ぎじゃない?」


「アレナ。戦争なんだから容赦無さ過ぎとか関係無いだろ」


「うっ、確かにルウナの言う通りだけど……どこからどう見ても、地獄絵図よ」


「あいつらが、俺のメテオワイバーンスコールを結構防いだのが悪い!!」


なんとも自分勝手な考えで追撃を行ったゼルートだが、今は戦争中であり……二度も特大魔法を撃ってはいけないという制限はなく、決して卑怯な手ではない。


「って訳だから、俺は最前線に行ってくる」


「ゼルート殿、ご武運を」


「……どうも。お互いに生き残りましょう」


無事を祈ってくれた宮廷魔術師のリーダーに戦争に勝って生き残ろうと伝え、ついでに魔力回復のポーション投げ渡し、ゼルートは身体強化を使いながらゲイルと一緒に大ジャンプ。


多数の兵士や冒険者たちを越え、一気に最前線の場所へと到着。

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