少年期[714]そう感じる時はあっても
戦争で活躍すれば、自分の意見が通る可能性が高くなる。
それが分かっただけでもオーラスの誘いに乗った価値があった。
「爵位な……もしかして領地とか渡されるのか?」
「人によってはそうやな。お前さんの親父さんもそうやろ」
「……確かにそうだな」
ゼルートの父親であるガレンは元平民の冒険者。
冒険者時代の功績によって爵位と領地を貰い、現在に至る。
「けどさ、俺今そんなの貰っても困るんだけど」
「せやろうな。まだまだこれから冒険者としての生活を楽しみたいって感じやろ」
「それがまぁ……一番だな。それにさ、領地なんてもらったら色々と縛られそうじゃん」
「ゼルートの年齢を考えれば、いい歳になるまで冒険者として活動出来るんちゃうか? それまで代理人に任せておけばええやろ」
オーラスの言葉には前例がある。
まず、悪獣という最悪の化け物を単独で倒した功績に加えて、戦争で大活躍すれば功績の大きさ的に領地を貰ってもまったくおかしくない。
しかし誰かに領地経営を任せる、なんて無責任なことはしたくない。
「……そういうことが出来るとしても、俺は却下。やっぱり領地なんていらない」
「なんでや? 何もせん時でも金が入ってくんで」
「冒険者にとって金が大事なのは分かるけど、ぶっちゃけ結構大金持ってるからそういうのに惹かれない」
「ぶはっはっはっは!!!! 随分と堂々とした自慢やな!!」
「事実だからな」
ゼルートの懐にはそこら底辺の貴族や商人がチリに思える財力がある。
一般的な権力者であっても、好きに動かせる金額は負ける。
「てか、俺たちは冒険者だろ。依頼を受けて、倒したモンスターの素材を売って、ダンジョンで宝箱を手に入れて稼ぐ。それで良いだろ」
「……ふふ、本当に冒険者らしい考えよな」
「そりゃどうも。まっ、初めて金を稼いだ方法は錬金術で造ったポーションを売るだけどな」
「うぉい!!!」
良いツッコミを入れるオーラス。
(そういえばそんな情報があったようななかったような……いや、ほんまにバケモンやな。なんで魔法も武器もバリバリ使えんのに、錬金術の才能まであんねん)
偶にゼルートの様にある程度の戦闘が出来て、錬金術のような普通の冒険者が身に付けないようなスキルを身に着ける者がいる。
ただ、ゼルートの場合はあまりにも戦闘面の実力と才能が高く、錬金術の腕も半端ではない。
錬金獣ほど高性能なゴーレムを造れる錬金術師が現在、ゼルートしか存在しない。
「なんやねん、ちゃっかり冒険者として以外にも稼ぐ方法を持っとるやんけ」
「錬金術はがっつり趣味だ」
趣味を思いっきり楽しんだからこそ、あり得ない物を造り出せたともいえる。
「そうかい……そんなに領地が貰うのが嫌か? 案外領地経営が楽しいと感じるかもしれへんぞ」
クランを大きくするための活動をしていて、そういう部分が楽しいと感じることが何度かあった。
書類仕事などは基本的にクソ食らえと思っているオーラスだが、その楽しさは知っている。
「そう感じる時があるのかもしれないな。でもさ、ちょっとじっくり考えてみろよ……俺はこの先、権力者の敵を多くつくるだろ」
「……まぁ、否定はできへんな」
普通はお世辞でそんなことないと言う場面かもしれないが、本人が完璧に自覚しているので下手な気を使わない。
「そんな俺が領主になって領地経営を始めてみろ…………絶対に嫌がらせをしてくる奴らが現れるだろ」
「せやろうな」
「最近はなるべく問題は言葉で解決しようと思ってるが、相手がしょうもない理由を感情をこっちに押し付けるなら……物理的に解決するしかなくなるだろ。そんな俺が領主になれると思うか」
「あぁ~~~~~~……うん、せやな。ちっと厳しいやろうな」
ゼルートという人物が領主になる。
それはそれで個人的に面白いと思うが、ゼルートが他の貴族と物理的にぶつかり合う光景が容易に想像てきてしまった。
「てか、話し戻すぞ。俺が国王様と面会で来たら褒美にもし貴族であろうが商人であろうが、俺やその周りに牙をむいた人物を殺したりしても罪に問わないようにしてもらう」
「……お前さん、ほんまにぶっ飛んでるな」
褒美に貰う権利の内容がオーラスの言葉通り、ぶっ飛んでいた。
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