少年期[697]眠らせて腐らせたくはない
「……ここはやっぱりあれじゃない、ゼルートが使うべきよ」
「お、俺が使うのか?」
「そうよ。斧やハンマーのスキルは習得してるのでしょ」
「そ、そりゃ一応習得してるけどさ……こんな破格の武器、使いこなせる自信はないぞ」
ゼルートもルウナやアレナと同じく、裂土豪災に関しては使用している最中、仲間に被害を与えてしまわないかが一番心配するポイントだった。
確かにゼルートは三人の中で一番ハンマーや斧などの武器を使い慣れている。
しかし、ここ最近は殆ど使っていないので腕が完全に鈍っていた。
そして使い慣れているとはいえ、三人の中でという話。
他のメインで斧やハンマーを使っている人達と比べればまだまだといったところ。
(使っている武器は大斧だけど、グレイスさんあたりなら使いこなせそうだな……今度あったら、グレイスさんに売るか?)
ゼルートの父親であるガレンの親友であり、元パーティーメンバー。
そして現在は家族でパーティーを組んでいる現役のAランク冒険者。
長い間大斧を使っていたグレイスなら、確かにゼルートよりも裂土豪災を使いこなせるだろう。
しかし少々危険な武器とはいえ、裂土豪災は破格の性能を持つランク八の武器。
さすがのゼルートも、よっぽどな理由がない限り、これをただであげようとは思わない。
そして適正な値段で売るならば、黒曜金貨に届くほど目玉が飛び出る金額になる。
基本的に冒険者より金を持っている貴族であったとしても、中々手が届かない。
オークションで売れば、まだゼルートの手元に残っているラッキーティアと同等か、それよりも高額な値段が付いてもおかしくない。
「ならどうするのよ。アルバラスのように誰かが使って腐らせないようにしておいた方が良いじゃない」
「それはそうだけどさ……こんな超一級の武器ばかり使ってたら、大抵の戦いは一撃で終わってしまうだろ。それはちょっとな……」
当ればメガトン級の威力を与え、標的を粉砕する裂土豪災。
ゼルートの言う通り、振るえば大抵の魔物は一撃で体をへこまされ……もしくは大きな穴が空いてしまい、戦闘終了に追い込まれてしまう。
(というか、これで相手を倒したら木端微塵になりそうなんだけど)
あまりにも威力が高過ぎる攻撃を与えれば、狙った箇所以外の場所も粉砕してしまう。
本人の技量によってはそれを防ぐことも可能だが、それなりに難しい技術なので、相手がスピードタイプであれば上手く決まらない可能性の方が高い。
(でも、アレナの言う通りアイテムバッグの中で眠らせておくのは勿体ないレベルの一品だからな……)
眠らせて腐らせるのは勿体ない。
そんなことはゼルートも十分承知している。
だが、少々自分の手に余る物だということも理解しているのだ。
「使いどころがないとは思わないが……やっぱり懸念すべきは、使い手が周囲に迷惑を掛けないかどうかが問題だ。俺が使うにしても、百パーセントアレナたちに迷惑が及ばないとは断言出来ないからな」
「……ゼルートならなんとか出来そうな気がするけど、本人がそう思うなら多少なりとも危険はあるということね。それなら、ホーリーパレスの六十階層以降に挑戦する際は使う。とりあえず、今はそれだけ決めておく?」
「そう、だな。六十層以降に出てくる魔物たちなら、こいつを使っても木端微塵になることはない、か。早く倒すつもりなら案外最適な武器かもしれないしな」
武器の重さを調整する効果は付与されていないが、ゼルートの腕力があれば振るうのに全く支障はない。
莫大な暴力を叩きこむ、リズムを刻むような連打も叩きこめる。
(岩石系? の魔物が相手なら有効打になるだろうな。なんせ、土竜の素材から造られた一品だ。そういった相手にはめっぽう強いだろう。適材適所って感じで役立ってもらう)
ひとまず裂土豪災をいつ使うのか決まった。
だが、ここでルウナが一つ疑問を言葉にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます