少年期[589]背負う必要は無い

「ッ…………すまない、こいつの処分を、頼んでもいいだろうか」


今、ダイブの頭の中にはプイーレとの思い出が駆け巡っていた。

一緒に初めて依頼を受けた時、ダンジョンに潜って宝箱を見つけた時の喜び、その他諸々の思い出が湧いてきた。

良い仲間だった、ダイブはそう思っていたが実際には良好な関係とは言えなかった。


マジックアイテムや特別なスキルを使わなければ相手の心を読むことなどは出来ない。


仲間の気持ちを解かった気になっていても、実は読めていなかった。

それは仕方ない。人が相手の気持ちを完全に読めないのは勿論だが、人は自分の気持ちを隠そうとする。

プイーレは上手く自分の気持ちを二人に悟られないように隠していたのだ。


「わ、私からも、お……お願い、します」


シーラもダイブと同じく頭を下げてゼルートに頼んだ。

しかしその目には涙が零れており、それは恐怖からではなく悲しみから生まれた涙でだった。


確かにプイーレはシーラを襲った。それはもう変えられない事実だ。

だが、一緒に困難な依頼を達成したり、助けられたという過去も変わらない事実。


そしてゼルート達がプイーレを始末するのだが、それを決定したのは自分とダイブ。

元という言葉が付くが、仲間を殺すと決めたのは自分達。

その選択が二人の肩に重く圧し掛かっていた。


「分った。こいつはこちらで処理させてもらう。それと……二人が気を病む必要は無い。こいつはシーラさんを強姦しようとした。女性からすればそれだけで死んで欲しいと思うものだ。そして思い人で仲間でもあるダイブさんが同じ気持ちになるのも当然だ」


寧ろこの状況で全く犯人に対して死んで欲しいと少しでも思わない者はいない。

もしそんな人物がいれば、それはただの変人だとゼルートは思ってしまった。


「だからこいつの死を二人が背負う必要は無い」


自分達よりも人生経験が少ないゼルートからの言葉を聞いて二人の心は少々軽くなった。

完全に背負っている見えないお守りが消えた訳ではない。これから一生消えないかもしれない。


それでも二人の心は確実に軽くなり、前を向き始めていた。


「それじゃ、こいつの始末を始めるから二人は少し目を瞑っといてほしい」


「分った」


「分かりました」


ゼルートに言われた通り、二人は速攻で目を閉じた。

どう始末するのか多少気になる部分がないと言えば嘘になるが、ここまで自分達のこれからの為に協力してくれたゼルートを裏切ろうなんて気持ちはゼロ。


「さて、久しぶりに頼むか」


そう言いながらアイテムバッグから錬金獣を取り出す。

そしてプイーレが身に着けている装備やマジックアイテムを剥がし、まだ意識を失っているので軽く首をスパッと斬ってしまう。


最後に穴を掘り、そこに埋めてしまえば自然とダンジョンの養分となる。

この作業を錬金獣は全て一人で終わらせてしまった。


「二度目だけど、本当に驚かされる光景よね」


「そうだな。こんな物を造れる者などゼルートだけではないのか?」


いったいどんな物でどうやってプイーレを始末したのが気になる二人だが決してその内容は訊かず、ゼルートから目を開いて大丈夫だと言われてから瞼を上げた。


「さて、これで問題は解決した。あいつの遺品はこれで全てだ」


二人としてはここまでやってもらったゼルートの懐に入れてもらっても良かったのだが、そこは甘えて装備やマジックアイテムを受け取った。


「二人はこれからどうするんですか?」


「場所が場所だから帰還石を使って直ぐ地上に戻ろうと思う」


「そうですか……とりあえず三日ぐらいは休むことをお薦めします」


「気遣い、感謝する。ゆっくりと休んだらまた冒険者として活動するよ」


今回の件で確かに心にダメージを負ったが、直ぐに回復するから大丈夫というメッセージが込められていた。


お互いの思いを確認し合った二人なら乗り越えて行けるだろうと思い、ゼルートは少し安心した。

そしてダイブとシーラと別れたゼルート達は再び探索を開始する。

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