少年期[586]拗れた結果
現在ゼルート達は三十八階層を探索していたのだが……少々面倒な件に首を突っ込んでしまった。
「すまない、本当に助かった!!!!」
「わ、分った。あんたの感謝の気持ちは十分に伝わった。だから顔を上げてくれ」
ゼルートの目の前には綺麗な土下座をしているイケメンがいた。
事の経緯はゼルート達が三十八階層を探索している時、セーフティーポイントで休息を取っている一つのパーティーを見つけた。
冒険者がダンジョンのセーフティーポイントで休んでいる。
なんら珍しい光景ではない。
だが、一つの違和感を覚えた。
結界石が使われているので、万が一モンスターがなんらかの例外で襲ってきた時、もしくは他の冒険者が襲い掛かってきた時に対処出来る。
しかし見張りが一人も経っていなかった。
不審に思ったゼルートは結界石を鑑定眼で調べた。
粗悪品でもランクが低い物ではない。ある程度の強度が高い結界を張れる一品だ。
それでも……この階層を探索する冒険者の攻撃を完全に防げるのか……それに関しては否だった。
ますます疑問が増えていく。その時、ルウナの表情が歪んだ。
「ゼルート、中で誰かが襲われている」
「ッ!!!! 解かった!!!!」
それは流石に無視出来ない。
そう思ったゼルートは全速力で走り出し、張られている結界も思いっきり殴った。
殴る瞬間に身体強化を使用した一撃に結界が耐え切ることは出来ず、あっさりと結界は砕かれてしまった。
二つあったテントの片方から武器を持った半裸の男が現れた。
「な、なんなんだてめぇら!!!」
「そりゃこっちのセリフだ糞野郎!!!」」
力の限り殴って前身の骨をバキバキに折ってやろうかと思ったが、とりあえず顎にジャブを掠らせてからスタンを浴びせる。
「あががががががががッ!!!!!! …………」
「そんで……こいつはどっちなんだ?」
目の前で気絶している男が獲物を狙った部外者なのか。
それとも……パーティー内での恋愛事情が崩れた結果なのか。
どちらなのか考えていると片方のテントからは服が訊崩れたふわふわした見た目の美女が、もう片方のテントからはナイスガイ系のイケメンが現れた。
「お兄さん、とりあえずこっちの女性から事情を聞いてくれ。俺らはたまたま悲鳴が聞こえただけだ」
ルウナやラルでなければ聞き逃す様な声だったが、それでもふわふわした美女が悲鳴を上げたことに変わりない。
ナイスガイなイケメンがふわふわ美女に駆け寄ると、自分が助かったという安堵感から少しの間泣き続けた。
そんな悲しい時間が終わるまで全員が待ち、喋れるようになるとふわふわ美女は事の顛末をナイスガイなイケメンに話しだした。
その話を簡潔に纏めれば、パーティー内の恋愛事情が拗れた結果……今のような状態を招いた。
ナイスガイなイケメンにふわふわ美女は惚れていた。
そしてナイスガイもふわふわ美女に気があった。だが、お互いに一歩踏み出せない状態が続いていた。
もう一人、パーティーメンバーであるサバサバした男はふわふわ美女に完全に惚れていた。
しかし自分に仲間としての好意を向けられていても、異性としての好意は全く向けられていない。
そんな現実を何度も目のあたりにした。
そしてサバサバ男は男としての本能を抑えきれなくなり、ふわふわ美女襲おうとした。
テントは一緒ではなく、一応男女という事で別れている。
自分が見張りのタイミングでふわふわ美女を襲えば、ナイスガイにバレる事無く惚れている女性の体を味わえることが出来る。
テントの中の音は外に漏れにくい。
そしてふわふわ美女が仲間思いという点を利用しようと思い、今回実際に行動に移した。
だが……そこでサバサバ男にとっては運が悪く、ナイスガイとふわふわ美女にとっては運良くゼルート達が擦場を通った。
そして今の状況に至る。
(確かに感謝される流れだとは思うが、土下座はやり過ぎだぞナイスガイなイケメン兄さん。てか……最終的にはこいつをどうにかしないとな)
頭を下げ続けるナイスガイを立たせ、冷たい目をサバサバ男に向けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます