少年期[561]様々な例外
「すぅーーーー……うおおおおぉぉおおおおおおおおーーーーーーッ!!!!!」
大きく息を吸い、咆哮のスキルを使いながら雄叫びを上げるルウナ。
咆哮には相手を怯ませる効果が有るのだが、ルウナの実力とサイクロプスの実力を考えればそこまで硬直することは無い。
だが、ルウナとゲイルが対峙しているサイクロプスは自分の力で全く倒せる気配を感じない二人に恐怖を抱いている。
それ故に、咆哮の効果がモロに効いた。
「ッ!!!???」
何故自分の体が固まっているのか、動けいないのか解らなかった。
逃げてしまいたいという感情が薄っすらと浮かべた。
だが……そこはモンスター、そんな恐怖を無理矢理打ち消す。
「グルゥアアアァアアアアアアーーーーッ!!!!」
ルウナと同じく咆哮を使用して雄叫びを上げた。
その結果、体は動くようになり、再び攻撃に移ることが出来る。
だが……そこで一つ気付いたことがあった。
一人いないと。
一人の人間と一体のリザードマンと戦っていた。
それは覚えている……だからこそ、直ぐに疑問を持った。
「ほぅ……恐怖に打ち勝ったか。それは見事だ」
「ッ!?」
「だが、遅い」
ルウナが雄叫びを上げ、サイクロプスを怯ませて注意を引いた瞬間にゲイルは既に背後へと移動していた。
そして雷を纏う長剣が横に振られる。
「そのタフネス、そして恐怖に打ち勝った精神力は見事なものであった……しかし、経験が足りなかったな」
何度も実戦の経験を積んだサイクロプスであれば、ここまですんなりと事が運ぶことは無かったかもしれない。
だが、今回戦ったサイクロプスは生まれたばかり。
「それでも……中々楽しませて貰ったがな」
「うむ、ルウナ殿の言う通りだな」
ゲイルに首を切断されたサイクロプスの頭部はゆっくりと落ち……地面に転がった。
そしてそれに続くように体も地面に崩れ落ちた。
「どうやら、良い戦いが出来たみたいだな」
「あぁ、あそこまで私の拳を耐えるとはな……もう少しスピードがあればスリルのある戦いとなっていただろう」
「ルウナにとってはその方が良かったのかもしれないけど、この階層でサイクロプスが出現するのは完全なイレギュラーなのよ。あの怪力だけでも厄介なのに、それに加えてスピードまで強化されたら……この階層の冒険者は全滅してしまうでしょ」
「むっ、それを言われてしまうとなぁ……」
ルウナも不謹慎な事を願ったという自覚はあった。
ただ、今回ゼルート達が遭遇したサイクロプスは完全なダンジョンイレギュラー。
仕方ない出来事だ。
「そこまで怒るなよアレナ。ここはダンジョンだ……そういう結果も含めて自己責任だろ」
「……それもそうね。ちょっと良い過ぎたわ」
一先ずサイクロプスの解体は後回しにし、アイテムバッグの中に入れて再びダンジョンを降り始める。
「にしても、ニ十階層でサイクロプスか……偶にCランクのモンスターが現れる程度だからな。人型だし、知能を持ったら階層を上がってきたりするのか?」
ダッシュで階層を下りながらも先程のサイクロプスの登場に関して少々驚いていたゼルートは、そんな疑問が頭の中に浮かんだ。
「……無いとは言い切れないわね。基本的にその階層に生息する魔物は階層から違う階層に移動しようとしない。でも、明確な自我が芽生えた魔物は稀に……本当に稀に階層から階層へ移動するのよ。ボス部屋を跨いだという話は聞かないけど」
「そういう例外もあるのか……まっ、そんな事は起こらないのが一番だな」
ダンジョンで生まれた魔物が階層を移動する例外がある。
それを知ったゼルートの頭の中に最悪なケースが脳裏に浮かんだ。
(……もし、仮に人の味を覚えてしまい、好んでしまった魔物が自我を持って人の言葉を理解したら……どうなるんだ?)
ダンジョンの階層を跨ぐモンスターが生まれる可能性があり、人の言葉を魔物が理解する可能性もある。
それなら……ダンジョンボスを倒してでも上に向かおうとすれば?
ゼルートが戦った悪獣の件に関してはそれに近い部分がある。
その強さは異常だったが、悪獣がいなくても魔物が地上に出る可能性は十分にある。
それに加えて人の肉の味を覚えてしまった個体。
(……考えただけでもゾクッとするケースだな。そういう例外も起こらない事を祈ろう)
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