少年期[417]内容によって変わる

「アジトに着く前に一応確認しておきたいんだが、お前さん報酬はどれぐらい出せるんだ」


「そうだなぁーーー、セーコ・ルギーズはどれぐらいあんたらに払ったんだ? それによって変わってくるな」


ある程度の大金は出せるが、余裕があるにしても無駄に出費はしたくないゼルート。

なので先にレイリアを攫うように指示をしたセーコ・ルギーズがどれほどの金額を払ったのか尋ねる。


「それもそうだな。あの坊ちゃんは金貨六十枚ぐらいだったか。貴族かまたはその関係者を攫うって金額の最低限の相場は超えていたな」


「やっぱり受ける内容によって報酬って変わるんだな」


「そりゃそうさ。攫うって依頼内容に関しても貴族の子供と一般市民とじゃまた変わってくる。もっとも攫う人物の人間関係によっても変わってくる」


「なるほど。てか、それを俺に教えても良かったのか?」


「別に教えたところでどうこうなるもんじゃ無い。こんな事は表の組織の上の連中なら知っていて当たり前の情報だからな。んで、報酬は幾らぐらい払えそうなんだ?」


「白金貨でこのぐらいかな」


そう言いながらゼルートは指を三本立てる。


「・・・・・・マジで金持ってるんだな。男爵家の子供つっても今はDランクの冒険者だろ? 辺境にはそんな割の良い仕事があるのか? いや、あの噂が本当だったって事か」


「マジで裏の世界はおっそろしいな。なんでそれを知ってんだよ」


ここまで広まっているなら多くの者が噂ぐらいなら知っているだろうと思い、ゼルートは特に否定しなかった。


「俺達にも色々と情報の経路があるんだよ」


「それは秘密って事か。まっ、何となく想像が付くから良いけど。ただ、俺が今持っている金は純粋に自分で稼いだ金だ。知ってるか? 盗賊のアジトをぶっ潰せば結構纏まった金が手に入るんだぜ」


「は、はっはっは。そんな事を笑顔で言うお前さんの方が恐ろしいぜ。なぁ?」


「同感だ。頭のネジが幾つかぶっ飛んだガキってのは偶にいるもんだが、兄ちゃんはちょっとぶっ飛び過ぎだな」


「まだ十五にも満たない冒険者とその仲間に殺される盗賊達。中々にプライドが砕け散りながら死んでいっただろうな」


盗賊も暗殺者も同じ悪党という一括りになるので、暗殺者たちはゼルートが悪党の天敵にしか思えなかった。


「盗賊なんて頭が切れる奴か、ずば抜けた腕っぷしを持っている奴以外はいずれ死ぬんだからいつ死んでも大差無いだろ。あんたらみたいに裏で生きる者や、俺みたいに死と隣り合わせで生きている者はいつ死ぬか分からん。そんあの常識だろ」


「そりゃそうだが、お前さんの場合は達観し過ぎなんだよ。っと、着いたぜ。ここが俺らのアジトだ。ちょっと待っててくれ」


「りょーかい」


六人の内、三人が中に入って組織のトップに事情を話しに行く。

その間ゼルートと暗殺者たちは暇だったので先程まで狩人とターゲットとは思えない様子で話し始める。


「俺達もこういった仕事をしてるから冒険者の情報は良く耳に入ってくるが、お前程冒険者になってから短期間の間に大きなイベントと遭遇している奴は殆ど聞いた事が無い」


「殆どってことは、そういう奴らはそこそこいるのか」


「ほんの一握りだけどな。ただ、お前程規模の大きいイベントには遭遇していない。遭遇していたとしても、そのイベントの中心人物では無いな」


ゼルートの様にモンスターの大群に関する討伐依頼にルーキーが参加し、新人らしからぬ功績を上げた話は国中や他国を見渡せばチラホラといる。

だが敵のトップを単独で倒したルーキーはそれこそ歴史上で数えるほどの者しかいない。


「おう、話し合いは終わったから入ってくれ」


「うっす。んじゃ、行くぞラーム」


「はーーい!! 基本は大人しくしてたら良いんだよね?」


「あぁ。まっ、状況次第だけどな」


ゼルートの言葉にそうなって欲しくないと暗殺者たちは願いばかりだった。

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