少年期[362]一ミリも参考にならないがカッコイイ

グレイスとコーネリアが護衛に入ってから数日。当たり前の事だが生徒達が大怪我を負う事は無い。


雑魚な魔物が集団攻めて来て生徒だけでは対処が不可能だと判断した場合、ルウナとゲイルに教師が反応する前にコーネリアが発動した無詠唱の初級魔法によって殲滅される。


Dランクの中でも巨体を持つモンスターと遭遇した場合、グレイスは生徒には少し荷が重いと判断した場合は単身で挑み、素手でぶっ倒すという生徒達に一ミリも参考にならない倒し方をしてしまう。

しかし生徒達にはそんなグレイスの姿が雄々しく映り、特に男子は興奮していた。


二人共休憩中などはベテランらしく新人の内は大事にしなければならない事、新人が良く失敗してしまう事などを生徒達へ教えている。

ベテランであり、高ランク冒険者からの言葉に生徒達は普段授業で先生達の講義を訊く時よりも真剣な表情になっており、それを見た先生達は普段の授業もそれぐらい真面目に訊いて欲しいと苦笑いになりながら思う。


「サーベルタイガーを、じゃなくてサーロングタイガーをテイムしている盗賊団か。そりゃまた特殊な盗賊団と戦ったもんだな」


「実際に戦ったのは俺じゃなくてゲイルですけどね。ただ盗賊団自体は大して強くありませんでした。俺とアレナとラームだけで十分だったんで」


本音を言えばラームだけでも十分だったかもしれないが、それでは見た目がスライムであるラームがどれだけの強さを秘めているのだと思われるためそれは匂わせない様に話す。

今のところラームは魔物の体型で複数の触手を伸ばし、その先からウォーターボールを放ち射殺。その戦いしか見せていない。


(ラームは持っているスキルが特殊だからなそれ以外の倒し方も色々とあるが・・・・・・それを態々見せる必要は無いからな)


ゼルートは全てのスライム系の魔物に会ってきた訳では無いが、それでもラーム以上の強さを持つスライムがいるとは思えなかった。


「盗賊団相手に二人と一体で十分って時点で色々と可笑しいんだけどな。だがこのラームの技があればある程度の雑魚が束になっても無駄なのは確かだな」


ラームの複数の触手からウォーターボールを放つ攻撃を見たグレイスは先日のミルシェ達と同様に驚く。

その威力も一般的にウォーターボールを使う事が出来るスライムの物とは圧倒的に差があった。


(集団戦に関しては中堅どころの冒険者達よりも戦果を上げる事が出来る。それにゼルートがテイムしているスライムだ。攻撃方法がウォーターボールだけって事は無いだろう)


リザードマンの希少種に雷属性のドラゴンを従魔に持つゼルートの仲間であるラームの実力は自分の予想は遥か斜め上を行くだろうとグレイスは確信している。


「グレイスさんは魔物をテイムした盗賊団と遭遇した事はありますか?」


「過去に数度だけあるな。だがどの盗賊団もサーロングタイガーの様な高ランクの魔物をテイムしている盗賊団はいなかった。魔物を従魔にするには勿論テイムのスキルを持っていた方が有利なのは確かだが・・・・・・結構運も必要だからな。その盗賊団自体が大して強くなかったんなら文字通り運良く従魔にする事が出来たんだろう」


「私の故郷にはそこそこ魔物を従魔にしている人がいたわね。野生で生きている魔物じゃなく既に従魔として狩りをサポートしている従魔の卵から孵った鳥系統の魔物だけれどね」


「へぇーーーー、森の中で活動するエルフにとって鳥系統の魔物は相性が良いって事ですか?」


鳥系の魔物を従魔にしている姿を浮かべたゼルートは鷹狩をイメージしていた。


「ある程度その鳥系の従魔と信頼関係を築けると従魔との視界をリンクする事が出来るらしいの」


「そういえば俺の知り合いにもそういう事が出来る冒険者がいたな。そいつは斥候専門の奴だったが、その能力のお陰で目当ての魔物を探すのがかなり捗ったのを覚えているぞ」


自分が知らなかった従魔との可能性を知ったゼルートは時間が出来た時に是非ラルと視界をリンク出来るのか試そうと考えていた。

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