少年期[338]余裕がある奴とそうでない奴
(あれが冒険者学校の学生たちか・・・・・・当然俺より年上だから体格が良い奴が多いな。てか。女の子も結構いるんだな。それにちょっと貴族感がある奴が数名・・・・・・はぁーーーー面倒な予感しかしない)
生徒が十六人いる中で女子は七名ほどいた。
ゼルートとしては予想よりも数が多く驚いたが、上手くいけば稼げるのでそこまで珍しい選択では無いのだろうと考えた。
「どうも、自分達が学園の生徒達の演習中に護衛を担当する者です」
「そうか、君達が護衛をしてくれる冒険者か。私はボウド、今回の演習の責任者といったところだ。よろしく頼む」
身長は百八十センチ近くあり、背には大剣を背負っている。
顔は少し強面だが、それでも頼りがいのあるナイスガイな容姿。
それがゼルートのボウドに対する第一印象。
(団体を仕切る人ってのは大抵こういう人じゃなきゃダメな風潮でもあるのか?)
アレナを除き、一番の年長者であるソンがボウドと確認事項を話し合っている中、生徒たちがゼルート達に値踏みする様な視線を向ける。
そんな視線に対しアレナはそういう年頃なのだろうと解っているので軽く流している。
ルウナは特に強そうな奴がいないと分ると興味無さそうな目をしてつまらなそうにしている。
ミルシェとシェナンはどうしていいのか分らず少しおろおろしているが、ヒルナも生徒と同様にどの程度の実力を持っているのか観察中。
デックはアレナと同様に生徒達が背伸びしたい年頃なのだろうと解っているため強気な態度でいる事無く、余裕な表情で薄っすらと笑っている。
護衛側の中で唯一ダンだけが生徒達と同じように目を逸らしたら負けだと言わんばかりの眼光を放っている。
そして・・・・・・ゼルートは生徒達からどういった気持ちで見られているのか解っているので表情には出さず、どうやって自分の実力を解らせるか考えていた。
(やっぱ、摸擬戦をやって圧勝するのが一番か)
ソンとボウドの話し合いが終わるとゼルートはソンに耳打ちする。
「なぁ、ソン。・・・・・・から、・・・・・って思ってるんだけど良いか?」
「・・・・・そうだな。翌日に時間をつくるのは勿体無い。今日済ませた方が良いだろう」
ソンから了承を終えたゼルートは前に出て生徒達の前に面と向かって立つ。
「俺は明日からお前らの護衛を担当する冒険者の中の一人であるゼルートだ。さて・・・・・お前らの中で俺には護衛としての実力は無い。俺より自分達の方が実力だからこいつは必要ないだろ。そう思ってる奴らは正直に手を上げろ」
いきなり予想もしていなかった問いに生徒達は当然驚く。
こいつは突然何を言い出すんだと。
ただ、ゼルートの言葉通りに思っていた者がいるのも事実。
ゼルートが何を考えているのか解った先生達は黙って状況を見守っている。
「安心しろ。別に俺は怒っている訳じゃない。ただ、お前らが俺の事をそんな感じに思ったまま演習をし、緊急時に俺の言う事を訊かずに突っ走ってもらったら困るからな。・・・・・実力差をしっかりと知って貰うと思ってるんだ」
実力差を知って貰う。それは君たちは俺よりも実力が下だと明確に言われた。
そう受け取った生徒達の半数以上の表情が歪む。
「だから、もっかい言うな。怒らないから俺が護衛である事に文句がある奴は正直にてを上げろ」
二度目の宣言・・・・・上がるに上がる。十六人中、十人の生徒がゼルートが護衛であることに不満を持っていると伝える。
「・・・・・・十人か。まぁ、数が多かろうと大した時間が掛かる訳じゃない。先生方・・・・・・ボウドさん、少し訓練場に行きたいんですけど良いですけね?」
「ああ、勿論大丈夫だ。ただ・・・・・・あまり生徒達の心を折ってやらないでくれよ」
ゼルートの実力を冒険者としての本能的な部分で理解しているのか、それともゼルートが単独でオークキングを討伐したという情報を知っているのか、もしかすると両方感じて知っているためかゼルートにあまり生徒をボコらないでやってくれと苦笑いで伝える。
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