少年期[325]考える素振りぐらいしろよ
「なんでまた王都から結構な距離が離れているドーウルスなんかに」
「んーーーー、あんまし詳しい事は分らねぇけど、生徒からの強い要望で場所が変わったって話は聞いたな。今年入って来たルーキーがあんまりにも強くて、自分達も強くならなきゃって思ったんじゃねぇのか?」
デックの考えは殆ど的を得ていた。
そしてそのルーキーとはゼルートが良く知る四人でもあった。
「なるほど・・・・・・人数はそこそこ多いのか?」
「一学年の中でも実力別にクラス分けがされているみたいでな。その中で一番上のクラスの連中が来るらしい。人数は二十人程度だった筈だ」
「おそらく下手なルーキーよりは戦いに慣れているだろう。だがそれでも所詮は体験していない知識だけを得た優等生だ。護衛の数が多い事にこした事はない。そに学校の方からも数名引率の教師が来ると書かれてあった」
当たり前の内容だが、ソンの話を聞いてゼルートは少し安心していた。
(ここに来る生徒は二年生、もしくは三年生なんだろ。とりあえず絶対俺にいちゃもんをつけてくる筈だ。俺達より弱い奴に護衛されるとかあり得ない的な。実質二年生、三年生は俺より歳が上だから仕方がないと言えば仕方がないよな)
ただしゼルートも自分よりほんの少しだけ歳が上の奴に嘗められた態度を取られてへらへらと笑えるほど懐は広くない。
(・・・・・・まっ、顔合わせした時に俺に文句がある奴全員を相手にしてボコればいいだけの話ではあるか)
結果いつも通りの考えに纏まった。
「学生と出会った時の対応を考えていたわね」
「ああ・・・・・・どうすると思う?」
「あなたの実力に文句がある学生を全員纏めて相手にして圧勝する。そんなところかしら」
百点満点の回答にゼルートは苦笑いになりながらも正解だと答える。
「合ってるけど、もう少し・・・・・・いや、何でも無い。取りあえず対処方法はその通りだからな」
「手加減を誤って怪我をさせるなよゼルート」
「それぐらい言われなくても解ってるよルウナ。学生のレベルを考える、俺が手加減をミスったらとりあえず骨は砕けるだろうし」
例えそうなったとしても、ゼルートお手製のポーションで治り、回復魔法でも治す事が出来る。
「それじゃあこのメンバーと後はゼルートさんの従魔達で依頼を受けるという事で決定ですね」
ミルシェは満面の笑みを浮かべている。ヒルナやシェナンも異論は内容で笑顔で頷き答える。
しかし一人だけ反対はしないが、てとつもなく不機嫌になっている男がいた。
「・・・・・・はぁーーーーーー。そんなに俺と一緒に依頼を受けるのが嫌か、ダン?」
「嫌だね。姉さんが了承しなかったら絶対に断る」
(ノータイムで嫌って言ったよこいつ。しかも渋々了承した理由がミルシェさんって・・・・・・もう、マジでマジのシスコンだな)
デック達はその光景に慣れているのかヤレヤレといった表情で茶化さずにニヤニヤとしている。
そんな態度のダンにミルシェが頭部目掛けて杖を振り下ろそうとしたが、それをゼルートが片手を上げて止める。
「それは前回の討伐依頼の時にしっかりと解ったから別に構わない。ただ、依頼に私情を持ち込むなよ。グレイスさんとコーネリアさんの息子ならそれぐらい出来て当然だよな」
テーブルに肘をつき、口角を上げての挑発にダンはちょろい程簡単に乗ってしまう。
「俺だってプロだ! それぐらい出来るに決まってるだろ!!!」
「バ――――カ、冒険者歴はまだルーキーの域を出ていないだろ。プロなんて言うのは冒険者歴がせめて五年以上になってから言え」
ゼルートの返しに一段と顔を赤くするダンを見て周囲には笑いが起こる。
デックとヒルナはゼルートのからかいに遠慮なく笑い、ソンとシェナンにミルシェまで小さく笑っていた。
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