少年期[290]老後

ガンツとの食事を終えたゼルート達は変わらず周囲からの視線を受けながら以前泊まっていた宿へと向かっている。


「・・・・・・・・・・・・」


「ゼルート、さっきからずっと無言だけど何を考えているの? 権力者を潰す計画?」


「そんな事考えてないよ。日常生活中にそんな面倒な事考えないって。単純に明日どんな依頼を受けようか考えてるんだよ」


ゼルート達は現在冒険者のランクがDなので、一つ上のCランクの依頼まで受ける事が出来る。


「そういた依頼を受けようと考えているんだ?」


「採集系で良いのがあれば受けても良いかなって思ってるけど、基本的には討伐系かな。ゲイル達がいる事だし、そう時間をかけずに終わらせる事が出来る。だから討伐系と一緒に採集系の依頼を同時に受けても良いかなって考えてるんだ」


「確かに私達の機動力を考えれば採集系のクエスト、討伐系のクエストのどちらかを先に終わらせても、日が暮れるまでには余裕で終わりそうね。ただ、そうなると早起きしてクエストの争奪戦に行くの?」


ゼルートが基本的に寝坊助なのを知っているアレナは、良い依頼を獲得する為だけにゼルートが早起きするとは考えられない。

そして案の定、ゼルートは早起きする気は殆ど無かった。


「俺がそんな面倒なの行く訳無いだろ。絶対に俺に突っかかる奴が出てきて乱闘騒ぎになるっつーーーの。別に俺は報酬が良い依頼を探している訳じゃ無いんだぞ。対象の魔物が強かったり、珍しい植物や鉱石の採集が目的の依頼だったら良いんだよ」


「・・・・・・そういえばゼルートの全財産はどのくらいあるんだ? 教えて貰った気がしなくもないが具体的な金額を忘れて覚えてないない」


「そうだなぁ・・・・・・まぁ、普通にそこまで贅沢な暮らしをしなければ死ぬまで働かず生きていけるだろうな」


黒曜金貨を十枚近く持っており、盗賊がため込んでいたお宝もしっかりと回収しているため、ドーウルスの街でそこそこな金額を使ってしまったが、それでもまだかなりの余裕がある。


「それだけ大量のお金があるならもうあまり冒険が出来ない老後にはやりたい事は何でも出来るんじゃない?」


「まぁ、大抵の事は出来るだろうな。ただそんな四十、五十年も先の事なんて今は考えられないよ」


レベルという概念の影響で歳を取ろうともある程度体を動かす事が出来る。

寧ろレベルが上がれば上がるほど寿命が延びるとも言われている。


「四十年や五十年程度では私達にとってはそこまで大した時間ではありませんね。ただ、私は一生ゼルート様にお仕えいたしますが」


リザードマンであるゲイルが喋った事で周囲の一般人、冒険者達の表情が一斉に驚いたものに変わる。

ただゼルートはこの先ゲイル達が人の言葉を話せる事、人の姿に慣れる事を隠す気は無い。


「いや、それは嬉しんだけどさぁ・・・・・・どうせなら俺が結婚して生まれて来た子供の面倒でも見てくれよ」


「ゼルート様のお子様の面倒を・・・・・・確かにそれはそれで面白そうですね」


ゼルートに子供が出来るのがいつかはまだまだ分からないが、従魔達はそれぞれ自分とゼルートの子供と戯れる様子を頭の中で浮かべていた。


「ゼルート・・・・・・あなた冒険が恋人じゃ無かったの?」


「おい、俺をからかうのもいい加減にしろよ。俺だって人並み程度には結婚願望があるんだよ。つっても、結婚は一先ず置いといて恋人がまず出来るかどうかが問題なんだよなぁ・・・・・・」


「何故だ? ゼルートの容姿なら今はともかく、後数年もすれば整った顔になると思うぞ。それに何といっても強い!! 大抵の女は惚れるんじゃないのか?」


ルウナが言っている事は決して間違ってはいないが、ゼルートには彼女をつくるにあたって色々と不安な事があった。

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