少年期[288]初っ端から失礼
盗賊を倒し終え、ドーウルスの街に辿り着いたゼルートは門に並んでいる商人や冒険者に驚かれる。
直ぐに警備兵がゼルートの元にやって来たが、その中にゼルートが初めてドーウルスへやって来た時に門の前で会った警備兵の内の一人がいたため問題にはならなかった。
しかし門の中に入ってからは周囲の住民から視線が集中する。
迫力があるリザードマンに雷竜。そして何故かスライム。
唯でさえアレナとルウナという美少女が二人いる為周囲の視線、特に男からの視線を集めてしまうのだが、今は男女、大人子供関係なく視線が集まっている。
特に男の子たちは目を輝かせながらラルを見ている。
「・・・・・・周囲の視線が鬱陶しいとは言わないけど、正直嫌な気分だ」
「それは今に始まった事じゃないでしょう。それともゲイル達と一緒に行動すると決めた事を後悔しているの?」
「なわけないだろ。でもそれとこれとは別ってやつだ」
寧ろゲイル達と離れて行動している方が知らない所で問題が起こるかもしれない為、一緒に行動する事自体に後悔は感じていない。
それでも集まる視線に対して不快感はあった。
「おう、ゼルートじゃねぇか。久しぶりだな、元気にしてた、か・・・・・・お前、いや。そういえば従魔がいるとは言っていたな。それがそいつらか?」
「ああ、こっちのリザードマンがゲイル、んでこいつが雷竜のラル。最後にこのプルッとしたスライムがラームだ」
ゼルートによってガンツに紹介されたゲイル達はガンツに一つ会釈する。
そんなゲイル達の態度にガンツの表情は感心したものになる。
「人の言葉はある程度分かるみたいだな。それで普通ならリザードマンと雷竜を従魔にしているのは解るが、なんでスライムみたいな低ランクのモンスターを従魔にしているんだと質問するところだが、どうせそのスライムもお前みたいに見た目じゃ測れない実力を持ってるんだろ」
「ご明察。こいつは唯のスライムじゃない。つーーーーか、集団戦だったらラームが一番強いんじゃないか?」
ゼルートがゲイルとラルに話を振ると二体は考える素振りもする事無く首を縦に動かす。
仲間から集団戦ならば一番強いと言われたラームはプルプルボディをブルンっと揺らす。どうやら本人は胸を張っているつもりらしいがそれを解る者はいない。
「ドーウルスの街には結構長い間いなかったみたいだが、長距離護衛の依頼でも受けていたのか?」
「あぁーー・・・・・・まぁ、間違ってはいないか。取りあえず少し速めの晩飯でも食わないか」
「いいぞ、おすすめの店があるからそこに行こうぜ」
ガンツのお勧めの店に入り注文を頼み終わってからゼルートは離せる部分だけ、護衛依頼について話す。
「護衛依頼って言っても、護衛の対象は貴族だったんだよ」
「・・・・・・お前その貴族と喧嘩しなかったか」
護衛の対象が貴族だと聞いたガンツはまず一番にそれを疑った。
護衛対象である貴族がどんな性格なのかは知らないが、悪い意味で貴族らしい貴族ならばゼルートと必ず衝突するとガンツは確信している。
「お前いきなり失礼だな。護衛対象の貴族とは衝突しなかったよ。まっ、その貴族の部下? に当たる奴とは思いっきり衝突したけどな」
「合計で四回ほど衝突していたな」
「四回も・・・・・・お前よく首を飛ばされなかったな。いや、お前の実力を考えれば物理的に首を飛ばすのは無理な話か」
幾ら幼い頃から英才教育を受けて来た貴族であっても、単身でオークキングを倒す様なゼルートに勝つ事は無理だとガンツは客観的に判断した。
もしゼルートの首を物理的に飛ばそうとすれば、結果的にその相手の首が飛ばされてしまう。
「対象である貴族の人は常識人だったからな。まぁ、ちょっとドーウルスから離れたそこそこ大きな街に行って、色々とあったんだよ」
「その色々を聞いてみたいんだが、そこが話せない部分なんだろう」
「・・・・・・声に出すなよ」
ゼルートはテーブルに指で護衛対象である貴族の名字を書く。
幸いガンツは文字が読めるので、ゼルートが護衛した貴族の家が分かり声を出しそうになった口を無理やり塞いだ。
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