少年期[286]我流のアドバイス
アグローザの屋敷で一晩を過ごしたゼルート達は翌日には朝食を食べ終えた後、直ぐに出発の準備を済ませる。
そしてアグローザは治める街の門までミーシャやバレスと数人の騎士を連れてゼルート達の見送りにやって来ていた。
「本当に馬車を手配しなくて良かったのか?」
「はい、特にドーウルスまで急いで戻る理由もないんで」
早急に戻る必要が無いのもゼルート達が馬車を利用しない一つの理由だが、一番大きな理由はゼルートが土魔法で作りだした小型トラックの方が馬車より断然速かったからだ。
「そうか、それならいいんだが・・・・・・ゼルート君、今回は本当に迷惑をかけて申し訳なかった。お詫びという訳では無いが、もし何か困った事が有ったら是非頼って欲しい。まぁ、限度はあるがな」
「ふふ、分りました。助けが必要だと感じたら頼らせて貰います」
「ああ、君の力になれる日を待っているよ。さて、言う事があるんだろミーシャ」
父親であるアグローザに背を押されて前に出て来たミーシャは目に涙を浮かべ、スカートの裾をギュッと握りしめていた。
「わ、我儘を言ってゲインルート様を困らせてしまい、申し訳ありませんでした」
「・・・・・・うん、まぁ俺は別に怒った訳じゃ無いからそこまで気にする事は無いよ。ただ、俺は基本的にそこまで横暴な冒険者ではな・・・・・・いよな?」
今までの自分の行動を思い出し、横暴では無くともキレやすい冒険者なのではと思って後ろのいる仲間に確認を取る。
「相手が横暴というか、理不尽な事を言って来る相手に関しては短気かもしれないわね」
「・・・・・・まぁ、そういう面も俺にはある。ただ冒険者って基本的には荒くれ者が多いんだ。お嬢様はノーザス子爵の娘さんなんだからこれから冒険者と会う機会もあると思う。その時はなるべく関わらない方が安全とだと思いますよ」
「わ、分りました。これから冒険者の方々とお会いする時は十分に注意します。そ、それで少しお聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
ミーシャは今回の一件で未練はあるもののゲイルの事を諦めた。
しかしそれでも知りたい事がある。
「俺が答えられる範囲の事であれば大丈夫ですよ」
「あの・・・・・・モンスターをテイムするのにはどういった方法が有効なんですか」
ミーシャからの質問にゼルートはもしかしたらと思っていた内容だったので、特に驚く事は無かった。
ミーシャの父親であるアグローザや、護衛の騎士達もある程度予想がついていたため、慌てる様子もなく苦笑いになっている。
しかしゼルートは一応ゲイルとラルにラームを従魔としているが、テイムのスキルを持っている訳でも無く、三体中二体は一般人には真似出来ない方法と言っても過言では無い。
一番まともな方法と言えばゲイルとの一戦がそれらしいとゼルートの中ではそう思える方法だった。
「テイムのスキルを持っているのが一番良いんですけど、自分の場合はゲイルと一対一で戦って勝利しで従魔にしたという形でした。人型のモンスターであればこちらが言っている事はある程度理解出来る可能性が有るので、その辺り狙い目だと思います。モンスターと戦う力に関してお嬢様はまだまだこれから成長期ですので、壁にぶち当たっても折れずに前に進める筈です。ただモンスターとの戦い方に関しては兵士や騎士の方より冒険者の方が熟知していると思うので、街のランクがある程度高い冒険者に依頼をして話を聞いてみるのも良いと思いますよ」
「わ、分りました。これから精一杯努力して絶対に目標を達成してみせます!!!」
ミーシャへのアドバイスも終わり、ゼルート達はアグローザ達を別れてドーウルスへと戻る。
ただし何事も無くドーウルスに着く事は無かった。
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