少年期[280]過去の結末
「さて、早速本題に入りたいのだがいいかな?」
「大丈夫です」
本題に入るのは一向に構わない、しかしゼルートの目は先程までの様に緩くは無く、無意識の内に鋭くなっていた。
そんなゼルートの様子にアグローザは身構えそうになる。
目の前の少年は目つきが変わっただけで動いてはいない、なのに剣を手に持って自分に向けている様な錯覚を見てしまう。
(これでまだ十二歳か・・・・・・娘の為とはいえ、今回は娘に嫌われてでもゲイル殿の勧誘を諦めるべきだったか)
ゼルートが過去に貴族の子息三人相手に圧勝した事は事前に知っていた。
知り合いの武芸に秀でている貴族から話を聞いたアグローザはその話を信じた。
しかし少し話が盛られているのではとも思った。
結末は変わらずとも家庭は違うのではと。
だが目の前で瞬時に雰囲気を変えた少年を見て、話が全て真実なのだと納得がいった。
そしてアグローザは娘の為とはいえ、危ない橋を渡ろうとしたことを後悔している。
「君の従魔のゲイル殿と出来ればラーム殿を我が娘の護衛にしたい。勿論唯でとは言わない。金貨五百枚を用意する」
金貨が五百枚。子爵家の平均的な財産を考えると決して安くは無い額である。
Bランク冒険者やAランク冒険者の報酬と同じ、もしくはそれ以上の価格であり、従魔の事を道具としか思っていな者であれば直ぐにでも渡すかもしれない。
アグローザからの提案を聞いたゼルートは即座に答えを返す。
「申し訳ありませんが、ゲイルとラームは俺の仲間です。仲間を金で売るような真似はしません」
ゼルートの答えが分かっていたゲイルとラームだが、それでも嬉しく思い表情が緩んでしまう。
アレナとルウナも同様にゼルートの仲間を思う考え嬉しく、微笑んでしまう。
アグローザもゼルートが自分の提案が断られると元々解っていたため、溜息こそ吐くがそこに悔しさの表情は無い。
後ろに控えていたリサーナの騎士であるバレスはアレナとルウナの表情に見惚れ、頬をほんのりと赤くしていた。
そんな中でリサーナだけが声を荒げる。
「何故ですか!! 金貨五百枚ですよ!! 冒険者、それもDランクの冒険者にとっては破格の報酬の筈です」
「金貨五百枚ですか・・・・・・ノーザス子爵様、あの時の決闘の賭けの内容を覚えていますか?」
話を振られたアグローザは直ぐに頷く。忘れる筈もない、その敗北で人生が逆転する事を意味する逆転の内容を。
「・・・・・・ああ、勿論覚えているとも。同じ貴族といえど、位が下の者があそこまで大胆に宣戦布告した決闘の賭けの内容は初めて聞いた」
「まぁ、そうかもしれませんね。ならあの時俺に、俺の実家にいくら金が入ったのか正確には解らなくても、大体は予想出来ますよね」
アグローザは予想出来る額に冷や汗を垂らしながら頷く。
「それなら・・・・・・金貨五百枚。確かに大金ですけど俺が仮に仲間を売ってまで欲する金額だと思いますか?」
「いや、全くそうは思えないな。寧ろ少なすぎる」
アグローザが提示した金額に文句があった訳では無かった。
ただそれでもその金額で自分はゲイルを売ったりしないと示すには十分な発言。
ゼルートが金貨五百枚ではゲイルを譲ってくれないと解ったリサーナは良い返す言葉を思い付かず、握りこぶしを作り、目には薄っすらと涙を浮かべてゼルートを睨み付ける。
(普通なら少しぐらいは小さい子を泣かせたって事で罪悪感が浮かぶと思うんだけど、仲間が関係しているからか全く感じないな)
リサーナを睨み付けられたところでゼルートの表情は変わらない。
「そ、それなら私の騎士であるバレスと戦いなさい!!! そしてバレスが勝ったらゲイルを私の護衛として譲ってもらうわ!!!!」
唐突なリサーナの前言にアグローザは両手で顔を覆い、深いため息を吐く。
ゲイルとラーム、そしてゼルートとアレナとルウナはある程度そうなるかもしれないとい予想がついていたので、特に驚きはしない。
ただ、ゼルートと戦う事になるかもしれないバレスだけが顔中汗まみれになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます