少年期[266]迷惑料

泣きながら喜び合うセフィーレ達を見ながらゼルートは何かが足りないと感じる。


(なんだろう、何かが足りない・・・・・・・・・・・・あっ、そうか)


足りないと感じていた原因に気が付いたゼルートは後方に目を向ける。

そこにはゼルートのスタンバーストを喰らって未だに意識は戻らないローガスがいた。


(怒りが一周して呆れに変わったけど、よくよく考えればこいつ俺を殺そうとしたんだよな。思いっきり死ねって言っていたし。まぁ、一撃も喰らわなかった訳だが)


摸擬戦の時もローガスはゼルートを殺す・・・・・・とまではいかずとも、重傷を負わせるつもりで攻撃していた。

だが、今回は明確な殺意を持ち、それを表に出してゼルートに襲い掛かって来た。


(俺への恨みが溜まりに溜まっていて、それを押し込めていた蓋がズレてしまい憎悪の感情が溢れ出してから。っていうのはなんの良い訳にもならない。正直、俺がこいつを殺しても許される気がする。法的には知らないけど)


呆れはしたが、取りあえず一発ぶん殴ってやりたい。

ただ、ゼルート自体の今の立場は冒険者だが、ゼルートの父は男爵の位を持つ貴族。


自身の行動が父親を、領民を脅かす可能性は決してゼロでは無い。

殺す場合は出来る限り暗殺が好ましい。


しかしゼルートは今後ローガスが自分の中での一線を超える言葉を出さないか、自身の逆鱗に触れるか否かで対応を決めようと考える。


(仏の顔も三度までと言うけど、こいつの問題行動は発言は丁度三回を超えた気がするんだよな・・・・・・まぁ、俺の場合は仏でなく人間なんだから三度も許す必要は無いんだけどな)


何はともあれ、ローガスに対して殺意は抱いていないが今回と今までの行動に関して、本来の報酬とは別の物を貰いたいとゼルートは決めた。


(セフィーレさんとミーユさんの性格を考えればその父親、アゼレード公爵は横暴な貴族って事は無いだろう。ローガスの家族はどうか知らんが)


親は子に似る。それが全ての家族に当てはまるとは思わない。

しかしその可能性は十分にあると、そこだけゼルートは不安に思った。


(何を要求するか・・・・・・金は大量にあるからな。いや、あって困る事無いから報酬を上乗せって感じも良いんだが、出来れば有能なマジックアイテム。もしくは高ランクの魔物の素材とかでもいいな・・・・・・一先ず今セフィーレさん達に水を差すのは悪いから少し間をおこう)


悪感情を持つ相手には基本容赦しないゼルートだが、それを持つ相手では無いセフィーレ達に今は声を掛けなかった。


「随分と何か考え込んでいるみたいだけど、どうしたの?」


「いや、あいつがやらかした件について何を請求しようか考えていたんだよ」


小声で尋ねて来たアレナにゼルートも小声で返す。


「あ~~~・・・・・・確かに、感情が溢れ出して衝動が抑えられませんでした、ごめんなさいって感じで許されるものじゃ無かったものね。あれは流石に私も許せない・・・・・・というか、少し呆れるわ。奇襲という形で襲撃したのにも関わらず一撃も与える事無く気絶したのは惨めに思うけど」


「それな。とは言って、少しだけ焦ったぞ。全く予想していなかったから。っとに・・・・・・その憎悪をオーガジェネラルに向けろって話だよ」



そして数分後、落ち着いたセフィーレ達は従者と同僚が自分達を完全サポートしてくれた人物に何をしたのか思い出し、顔を真っ青にしながらゼルートの元へやって来た。

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