少年期[220]緻密な操作

ゼルートが放った一撃により、五体の魔物が一瞬で命を落とした。


「ゼルート、あまりやりすぎないでくれ。私の分がなくなってしまうだろ」


『ルウナ様の言う通りですよ。今のゼルート様の状態は少しだけとはいえ枷を外しているんですから。頑張りすぎてうっかり全滅させないでくださいね』


二人の言葉、特にラルの言葉にやってしまいそうだなと思ったゼルートは、少しテンションを抑えることにした。


「悪かったよ。もう少し抑えて戦うようにするよ。さて、取りあえずはお互いの攻撃が当たらないように、目の前の敵を殲滅する。異議は?」


「全くない!!!」


『ルウナ様と同じく』


二人の気合いの入った返事に、ゼルートは抑えかけた気分が高まり大声で解散の合図を出した。


「そんじゃ・・・・・・各自好きなように闘え!!」


ゼルートの合図とともに、ルウナとラルは魔物の群れの中に突っ込んだ。


「よし、俺も仕事するとしますか」


ゼルートは右手に持っているフロストグレイブの刃に魔力を纏わせ、自分に向かってきている複数のコボルトとゴブリンの上位種に、自ら突っ込んだ。


「グギャアアアア!!!」


「ガルルルルルアアアア!!」


ゼルートに攻撃を仕掛けてくるゴブリンとコボルトの上位種達は、倒した冒険者達から奪った剣や槍、短剣や手斧を持っていた。勿論スキルも持っているため、補正でスピードとパワーも上がっている。中には技を放っている魔物もいる。


(全員持っている武器は粗悪品っていう程悪くはない。スキルも持っている。レベルも地上にいる奴らと比べたら高いから、速さと力も一段二段違うな。でも・・・・・・)


コボルトとゴブリンの上位種達は、目の魔の敵を殺すことに興奮しているのか、周りが見れていなかった。


「同じ種族じゃないからか、それとも統率者がいないからか・・・・・・全く連携が取れていないな」


コボルトとゴブリンの上位種達の攻撃は、スピードはあってもどれも考えなしの大振りで、ゼルートにとっては躱すことに何も苦はなかった。


自分に跳んできた斬撃波を、空中でブレットを展開して放ち、ゼルートは全ての斬撃波を相殺する。

今までほとんど防がれたことが無かったのか、驚いた顔になり動きが一瞬止まった。


「何度も思うけど、何で戦いの最中に動きを止めちゃうかな」


コボルトとゴブリンの上位種が動きを止めた一瞬は、ゼルートが次の行動に移るのに十分な時間だった。

剣で斬りかかって来たコボルトの上位種を、自分に刃が届く前に横に真っ二つに斬り裂き、左手を前にだして指先に魔力を集めた。


「ブレット、フィンガーショット」


それっぽい名前を言ってゼルートは指先から小さな魔力の弾丸を、計五つ発射した。

放たれた小さな魔力の弾丸は、魔力の弾丸に反応して攻撃を防ごうとしたコボルトの上位種達の腕や武器を躱して脳や目、心臓を貫き命を奪った。


「・・・・・・魔力の操作もしっかりと成長してる、な!!!」


「グギャアア!!??」


ゼルートのスキを狙ったつもりで手に持っている斧に、不器用ながらも魔力を纏い攻撃を仕掛けてきたゴブリンの上位種に、ゼルートは魔力を左足に纏い、斧を蹴り飛ばしてそのまま一回転して、今度は右足に魔力を纏ってゴブリンの上位種の頭を刈り取った。


「さて、お次はどいつだ、っと」


向かって来るコボルトとゴブリンの上位種の上位種も倒し終え、次の獲物を探そうとした瞬間、ゼルートの後ろからグレーウルフの上位種が、ゼルートの頭を噛みつこうとした。


(気配感知は解いていなかったんだけどな・・・・・・気配を感じるのが随分接近されてからだったな。見た感じ上位種だな。そういった特性、能力でも持ってんのか? まぁ、楽しめそうなことに変わりはないか)


ゼルートは乱戦の中、大変楽しんでいた。

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