最終話~ミドル2~
過去について調べるために、春見は文献を当たっている。一般に出回っていた過去の新聞。護人会、そしてUGNによって作られたデータベース。
それらを読み漁る事で、影裏が生き、そして死んだ痕跡を見つけようとしていたが──
春見:「……見つからない。どこ、何処のタイミングなの?」
なにせ量が多すぎる。その成果は一向に上がらないままだった。
そうして文献を片端から読んでいるところに、
京香:「春見ちゃん! 写真が──!」
ノックを忘れるほどの勢いで、京香が飛び込んできた。
春見:「落ち着いて都築さん。写真がどうしたの?」
慌てる素振りを見せず、余計な心配を与えないよう眼鏡を外して応対する。
京香はひとつ大きく深呼吸すると、手に持った写真を机へと置く。
京香:「結理君が写ってる写真、見つけたよ!」
判定項目:写真から情報を読み解け
<情報:友人> 7
仲良し四人組の誰かにロイスを結んでいると達成値に+2、Sロイスの場合+4の修正。
春見:写真を見るだけだけど判定なんだね。
GM:うむ。成功すれば分かるが、ちょっと特殊な写真でね。
影裏:特殊な写真、か。
春見:判定してみてのお楽しみだね。結理君にSロイス結んでるから+4して(ダイスころころ)
GM:達成値13か、さすがだな。
情報:写真から情報を読み解け
いつか影裏が手にしていた、高校時代に仲良し四人組で撮った写真だと思い出せる。
しかし写っているべき影裏だけは、ひどくボヤけた状態だ。
この事から、高校時代には既に影裏には何かが起きた後だという事が推測できる。
春見:「これ、高校生の時に撮った写真だから……。
それよりずっと前に介入された事になるね。お手柄だよ都築さん!」
京香:「ありがとう。──この写真、春見ちゃんに預けるよ」
春見:「……いいの?」
京香:「うん……結理君との絆は、春見ちゃんの方が強いと思うから──悔しいけど」
寂しげで、困ったような。それでいて、どこか吹っ切れたような顔で、京香は笑う。
それに薄く笑みを浮かべ、言葉を返す。
春見:「ありがと。でもね、都築さん。私たちの間に強いも弱いもないよ。少し、質が違うだけ」
懐かしむように少し目を細めて──、
春見:「結理君、都築さんの事をずっと……ずっと心配してたんだから。
二人の絆が弱いなんて事は、絶対にない」
勇気づけるように、優しく断言する。
春見:「結理君には、都築さんだって大切な人だよ」
京香:「──。ありがとう……春見ちゃん、変わったね。
体感時間が大きく飛んでるから、余計にそう感じるのかな」
春見:「そうかな……そうかも。色々、不安だった事とかが解決したからかな」
嬉しそうに頬を緩めるも、すぐにそれは苦笑へと変わった。
春見:「でも私、中身はそう変わってないよ?
この歳になって分かるけど、人間ってそう簡単に成長なんてしないみたいだから」
京香:「そんな事ないよ」
いつになくハッキリと否定する。
京香:「私にとっては、ついさっきまで高校に通ってたから。だから──分かるよ。
春見ちゃんも、及川君も。……結理君も。みんな──成長した」
自分の事ではない。それでも誇らしげに──
京香:「だからって訳じゃないけど。私は、皆を信じてる。これまでよりも、ずっとずっと、信じてる」
しかしどこか、寂しげに口にした。
春見:「都築さん……。うん、私も信じてる。皆なら信じられる。でもね、都築さん」
京香:「……?」
だからこそ春見は断言してみせた。その不安を打ち払うかのように。
春見:「過ぎ去った時間が、そのまま成長にはならないよ。
身体がどれだけ成長しても、皆の時間はあの頃のままなの。
輝かしい、まだ新品の制服に袖を通してた、あの時に囚われたまま」
視線は、真っ直ぐに京香を射貫いたまま。
春見:「だからさ」
「結理君を連れ戻したらまた皆で歩き出そう。今まで止まっていた分も、一緒に。ね?」
京香:「──、うんっ」
目尻に小さな雫を湛えながら、力強く頷いた。
京香から受け取った写真を手に、春見が四人の絆を感じた時。
脳裏に、ある光景が過ぎる──。
判定項目:過ぎる光景を掴め。
<意志> 10
春見:では思い出の一品の効果を乗せて……(ダイスころころ)達成値25! どやぁ。
影裏:これは鷲掴みしてますわ(笑)
情報:過ぎる光景を掴め。
春見の脳裏に過ぎった光景。それは先ほど影裏が登場した千夏の過去シーンの光景だ。
更に、影裏に対してSロイスを結んでいるため、千夏と会話する影裏の存在を捉える事ができた。
これらから、影裏が存在を保てている事を確信できるだろう。
春見:「──っ、今の……」
京香:「大丈夫、春見ちゃん?」
春見:「平気……都築さん、朗報だよ。
結理君、頑張ってる。ガイアの中で必死に、できる事をやってる」
京香:「──! じゃあ私たちも頑張らないと、だね」
春見:「うんっ! でも長くは持たないみたい。都築さんのおかげで時間特定はぐっと楽になったし、急ごう!」
四人の間に、確かに感じる絆。互いの存在が、心を落ち着けてくれる。
膨大な史料は、一定の期間に確かに絞られただろう。
だがそれでも、過ぎ去った多くの時間が彼女を阻み続けるのだ──。
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