第四話〜オープニング1〜
GM:オープニングを始めよう。シーンプレイヤーは春見。影裏の登場は不可とさせていただこう。
春見:単独オープニングか。シーンイン!
春見は幼い頃の夢を見ている。佐倉家の鍛錬の間、そこはレネゲイドで満たされた危険な部屋だった。彼女が9歳くらいの頃までだろうか。あの頃は鍛錬の間で倒れるまで瞑想させられていた。──今見ている夢は、その頃に起きた出来事だ。
薄れていく視界の中、近くでは佐倉厳蔵らしき声が誰かと話しているのが聞こえる。
春見:「(……あたま、ぼーっとする。おじいさま?)」
やがて厳蔵は部屋を立ち去り、残されたもう一人が春見に近寄り、視界を塞ぐように覗き込む。
春見:「(だ、れ……?)」
紫髮の少女:「──ごめんね、春見。私はあなたの──にはなれない。……ふさわしくないから。だから──」
覗き込む紫髮の少女は、アンナの姿とよく似ている。少女は、躊躇いの後に、ゆっくりと噛みしめるように言葉を紡ぐ。
紫髮の少女:「だからあなたに。お母さんよりも大切な春見に、私は"嘘"を吐く。……私の、佐倉 杏子の一生をかけて、嘘を吐き続けます」
春見:「(……あん、ず?)」
杏子:「だから、神様。どうか春見に──」
最後の方は、聞き取ることができなかった。けれど何かを祈っているように君は見えただろう。
春見:「(……どうして、そんなに──悲し、そうに……)」
その祈りが終わると、横たわる春見の目を塞ぐように手を添える。すると、急激に意識が朦朧として──現実の春見は目を覚ます。夢が、頭の中に居座る感覚が残っている。
春見:「ん……あれ、私寝ちゃってたんだ」
ふと、思い詰めるように黙り込む。
春見:「そういえば、あの頃は修行もすごい大変だったっけ。お爺様のシゴキがずっときつくて、それこそ倒れるまでやったもんね。でも──」
居座る夢。紫髮の、どこか見慣れた、けれど名も知らない少女。
春見:「……でも、あの人、誰だっけ。あん、ず。杏子。佐倉 杏子……」
脳裏に何かが掠めそうになったその時、小さく頭痛が走る。
春見:「っ……あれ、私。なんで彼女の事……何も覚えてないの?」
忘れてはいけない事を忘れているような、そんな感覚が胸の中を渦巻く。それは、そこはかとない不安感を沸き起こす。
それを、春見は頭を振って立て直した。
春見:「いけない。私、やらなくちゃいけない事あるんだった。結理君、どこかな」
自分は今や裏切り者なのだ。ゆっくりしていられる暇は、ない。しばらくすればアンナが定時訪問してくる。──その前にやらなくてはいけない事は山のようにあるのだ。
たとえ、胸の奥に疼きのような痛みがあったとしても──。
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