第一話〜ミドル8(2)〜

春見:「……え、いない? 何で……」 愕然とした表情で資料をめくる。

影裏:「搬入者にも、犠牲者にも、名前がない……。どこに消えたってんだ」

院長(GM):「……言いにくい話だが……」

影裏:「……構いません、言って下さい」

院長(GM):「犠牲者リストは、身元が分かった分しか載っていないんだ。

 オーヴァードが関わる事件では、身元が分からなくなるほど、ひどいものもある」

影裏:「…………そうですか。……春見、可能性は、いくつか考えられる」

春見:「……」

影裏:「……京香と桃矢は、わけあって──例えば覚醒してしまい、力を隠すために行方をくらませた。

 ……あるいは、片方が覚醒し、もう片方を連れて行方をくらませた。

 ……あるいは…院長の言った通り、身元が、確認、できないほど──っ」

春見:「……もういいよ、結理君。それ以上は、言わなくて」

 影裏の頭を抱く。

影裏:「くそっ……くそがッ……!

 あいつらが、何をしたってんだ……なんで、あいつらが…………俺たちだけが……!」

 砕けそうなほど歯を噛み締め、絞り出すように呟く。

「まただ……またこうやって……俺は…………自分だけ…………ッ!」

春見:「……大丈夫。私が”いる”から……結理君だけじゃないよ。

 私が、側に居る。居るから……」

影裏:「……春見……。ごめん、そうだったな。

 二人で戦うって決めたんだ。しっかり、しないとな……」



影裏:GM、ここで春見をSロイスに指定したい。

春見:わぁーい! 私だー!(と言う私も結理君をSロイスに指定したいな)

GM:両思いかよテメェら!

春見:違うよ? すれ違い。

影裏:現時点では家族としてだよ!

GM:というか両依存になりそうな気配が(笑)

春見:そうねぇ。このままだと両依存まっしぐらコース。

影裏:そしてGM、もうひとつロイスの操作をしたい。

 キングタイガーへのN感情を、敵愾心から殺意に変更したい。

GM:……いいとも。

春見:あ、私もここでロイスを新たに一つ取得したい。

 都築さんへのロイス取得なんだけど、いいかな?

GM:もちろん。


 読者諸氏にはぜひ、ここの春見のロイス操作に注目してほしい。

 正直、セッション中の私は、愕然とした。そして同時に、今後の春見を形作る重要な部分だったのだと思う。


春見:都築さんに ○P:友情 / N:嫉妬 でロイスを取ります。

 そして、ここでもう一つロイス操作を。

GM:ふむ?

春見:このロイス、タイタス化させます。

GM:……え?

春見:さっきまではずっと、ロイス通りの感情だった。でも──、


 ”都築さんは結理君の近くから居なくなった”


 それで、P:優越感 / ○N:憐憫 の感情に変わって、絆に変化が生じるから、タイタス化させました。

 今、結理君の近くに居られて、求めてもらえるのは私。

 そういう感情が渦巻いてるのです。

 ……悪い子だ。



 悪い子。この言葉が初めてここで使われた。どうかぜひ、記憶に留めておいて欲しい。

 春見を長く縛り付けることになる、この呪いのような言葉を。



GM:……なるほど。そのロイス操作、もちろん認めますとも。



影裏:ちなみにGM。このシーンで調達って可能ですか?

GM:うむ。可能よ(白目)

春見:何調達する?

影裏:ジュラルミンシールドに挑戦したいな☆(基本ルルブ1、P.177)

春見:鬼。

影裏:人だよ!?(笑)

GM:ダウト。判定どうぞー!

影裏:コネ:手配師を使用して振ります!(ダイスころころ)

 達成値17で成功! 神は言っている……GMを徹底的にぬっ殺せと。

 即装備します。ガード値+6だぜ☆

春見:私はそうだなぁ……無難にUGNボディアーマーでも買っておこうかな。(基本ルルブ2、P.189)

GM:おにー! あくまー! ひとでなし(ジャーム)!

影裏:それはお前だGMよ(笑)

春見:コネ:手配師を使用して判定ダイス+3D。(無慈悲)

 (ダイスころころ)達成値21。馬力が違いますよ。

 あ、即装備しておきます☆

GM:あい。(アヘ顔)

影裏:まあ、正直GMの気持ちはわかるぞ(笑)

GM:だが、言い訳させてほしい。

 実はこれを見越して強く作った!

 ……つもり。

 気持ちだけは、いつでも最強のジャーム!!

影裏:最強のヒールの間違いでは? 影裏は訝しんだ。



 さて。そいつはどうだろうな。心の中でそう返して、私は一人笑みを浮かべた。



春見:「……そろそろ行かないと。院長さんの邪魔になっちゃう」

 抱きしめてる結理に向けて。

影裏:「……そうだな。お邪魔しました、先生」

院長(GM):「ああ……。がんばり……たまえ……」

 メガネを外して目頭を押さえている。

春見:「……お邪魔しました。失礼します」

影裏:「……行こう、春見。奴を止めに。

 手短にはできないかもしれないけど、それが俺たちが今、やらなきゃいけないことだ」

 こちらはこれにて退場。

春見:「……うん、頑張ろう。私が……出来ることをするよ」

 こっちも退場だ。

院長(GM):「オーヴァードか。最初に話を聞いたときには、はた迷惑な存在だと思ったが。

 ……そうだよな。彼らも、人間なんだよな……」



GM:院長室で一人、涙に暮れる。彼が見送った少年たちは、これから死地へと赴くのだ。

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