エピローグ 紫音と祖父
ギリア元国王が亡くなってから翌日の夜。スナック マザー・ラブ♡ の店内でおじさんと隣同士で座っている。
「そうかぁ。全て終わらせて来たんじゃな」
「はい」
「何だかんだ言って、王の座にいた頃から彼奴は愚かな国王じゃったからなぁ。その点息子達の方がしっかりしていたのやもしれぬ」
「息子達ですか?」
「ああ、彼奴には4人の子がおった。その内の1人がセイラなのじゃよ。セイラは1番上の兄のような武芸はなかったんじゃが、頭のキレに関してはズバ抜けて優秀じゃった。財政などの政治の一部を担っていた。
もちろん不正も暴いておったぞ」
知らなかった。お母さんが政治に関わっていたなんて。
「第1王女だったアナタの母は数々の功績を残していたわよぉ〜。国が負けてしまってからは語り継がれる事はなかったけど一部の人は覚えている筈よぉ〜」
真理亜さんはそう言った後に僕の前にはコーラ、おじさんの前にウィスキーを置いたら出入口の扉が開いた。
「お、やっぱりここにいたかぁ」
「いらっしゃぁ〜い! また来てくれて嬉しいわぁ〜!!」
「188さん。どうしてここに?」
「いやな、お前さんの事を探していたんだよ。あの後どうなったのか誰からも連絡くれなかったからなぁ」
「す、すみません!」
あの後現場の処理をしてから工藤さん達のブリーフィングをしていたら夜の10時になってしまい、僕達は疲れ果ててしまっていた為に帰って来て早々に眠ってしまったんだった。
「まぁ、その様子だと無事にサイボーグを倒したようだなぁ。俺が渡したウィンチェスターは役に立ったか?」
「はい、188さんが渡してくれたM1887役に立ちましたよ!」
えげつないぐらいのギリア元国王のボディを凹ませていたし、撃たれた瞬間に身体を押さえていたから効果は絶大だったと思う。
「ほう、そうかい。紫音くんに渡した甲斐があったぁ。あ、バーボンのロックで」
「はぁ〜い! バーボンのロックねぇ〜!」
188さんは僕の隣に座り、こっちを見つめて来る。
「ところで紫音くん、クアッドを作っていた責任者の話を聞いたか?」
「責任者って、エルザさんの事ですか?」
「ああ、そうだ。彼女は本部の意向で会社を辞めさせられたらしい」
「エルザさんがっ!?」
「ああ、何だかんだで今回の暴走の件について彼女にも非があるって事で辞任させられたらしい」
「そんなぁ」
暴走した原因は僕にあるのに・・・・・・。
「そんな顔をするなって。彼女自身なら自分で何とかするだろう」
「それよりも、お前の祖父に親父さんの昔話しをして貰えよ。気になるだろう?」
「えっ!? それはそうですけどぉ〜・・・・・・」
「ウチも紫音くんの父親がどんな人だったのか、気になるっス!!」
真奈美さん、いつの間にそこにいたの?
僕がそう思っていると、おじさんが フフッ と笑い声が聞こえて来た。
「いいぞ、話してやろう。ヒューリーの昔話をのぉ」
「いいの?」
「ああ、アイツはこの場にはおらんからのぉ。好きなだけ話してやるわい」
「ちょっとテレビ点けてもいいかしらぁ〜?」
「ああ、構わんよぉ〜」
真理亜さんはリモコンを取り出すとテレビを点けた。
『はぁ〜い、今日は
「警察予備高校?」
「何だ紫音くん、警察予備高校の事を知らないのか?」
「あ、はい。初めて聞きました」
「だって警察予備高校が出来たのは最近の事だし、紫音ちゃぁんが知らないのは仕方ないじゃないかしらぁ〜?」
最近出来た? いやでもぉ〜・・・・・・警察学校は関東にもあるけど、高校ってあったっけ?
「ケイサツヨビコウコウって何じゃ? 警察って言葉は知っておるが、その後の意味がわからん」
「日本の警察官の警官になる為の学校の事なんだけれども、1年前に警察学校の入れる年齢の法改正されるのと同時に出来た学校が入浜警察予備高校なんだ」
「政府が秘密裏に準備をしていたって話があるわよぉ〜」
「要は警察官を増やしたいって事だろう」
「今、人手不足ですもんねぇ〜」
そう、真奈美さんの言う通り現在警察官は閉鎖区域の警備に人手を回しているので、交通警備隊など他の方面で不足して悩まされているのだ。
「仕事が多いせいで精神病になっている警察官もいるし、仕事とが辛過ぎると理由で辞めるヤツが多発しているからなぁ。その対策の一環だろうな」
「そうじゃったのかぁ。しかし、その分給料はいい筈じゃろう?」
「ああ、同じ公務員の救急隊よりも1.8倍の給料を貰える仕事になっている。まぁその分辛い仕事がまっているがな」
「そうなんですかぁ〜・・・・・・」
しばらく観ていると射撃場と思わきしところにアナウンサーがやって来た。
「高校に射撃場作っていいんですか?」
「いい訳がないっスよ。普通に教育委員会に怒られるレベルっスよぉ!」
「でも政府がバックに就いているんだからぁ、それぐらいの事は可能でしょうねぇ〜」
「どの国でも政府の力はスゴイのぉ〜」
そんな会話をしていたら、アナウンサーがテーブルの上に置いてあった銃を持ち上げてカメラに見えるようにかざす。
「AR-15?」
それにしては随分とスポーツよりの見た目をしているけど、バレルが14.5インチのM4A1の標準なので不自然に感じる。
「いいや、M4A1をベースにカスタマイズされたヤツだろうな。見た感じ機関部を中心に軽量化も計って仕上がっている感じだな」
「軽量化? どうしてわかるんですか?」
「紫音くん、トリガーを観てみろ。あれアルミ合金製だ」
よく見てみると確かに引き金がアルミ合金と思える表面だった。
「確かにアルミ合金だ。でも、軍用の銃にそんな事をしたら反動がキツくなりませんか? それに耐久性も落ちる筈です」
「政府のヤツらもそこまで馬鹿じゃないだろう。必要最低限の耐久性能を確保しつつ軽量パーツを組んだんだろう」
「自衛隊お抱えの銃器メーカの技術を、惜しみなく使っている感じなのかしらぁ〜?」
「多分そうだろうなぁ。まぁ俺達土竜の方がオーナーが満足出来るM4を作れる自信があるけどな!」
188さんが言うようにそうかもしれない。だって現に僕用に組んでくれたM327 R8 は以前に比べて重くはなったけど連射しやすくなったし、何よりもアイアンサイトが見やすくなった。
「もう、ワシにはチンプンカンプンな話しじゃぁ〜」
「まぁ銃自体は関わる事がないっスから、聞き流してもいいんじゃないっスかねぇ〜」
真奈美さんの言う通りかもしれない。
『では、この銃を現役の学生に撃って貰いましょう!』
そう言ってM4A1を手渡し女子学生を見た紫音の耳と尻尾がピーンッ!? 真っ直ぐになった。
「えっ!?」
「どうしたんじゃ、紫音?」
「舞・・・・・・ちゃん?」
「紫音ちゃぁんはあの子の事を知っているのぉ〜?」
「あ、はい。今テレビに映っている女のkは・・・・・・僕の幼馴染みです」
僕がそう話たら、その場にいた全員はビックリした顔をさせていた。
ところ変わって居酒屋の中・・・・・・。
「うぇぇぇええええええええええええんっ!!? エクストレイル20XIちゃああああああああああああんっっっ!!?」
見崎がカウンターに突っ伏して泣いているところを、隣にいた田嶋が背中を優しくさする。
「社長、仕方ないッスよぉ〜。綺麗に4つに斬られた挙げ句に燃やされたんスよ。修理を諦めるしかないじゃないっスかぁ〜」
「諦めないもん! 絶対に直って走ってくれる筈だもんっ!!」
「・・・・・・お客さん、また車を壊されたんですか?」
「うわぁぁぁああああああああああああんっ!!? アイツらのせいだああああああああああああっっっ!!?」
見崎がそう言って泣き出したので代わりに隣にいる田嶋が説明をする。
「いやね、PMCとサイボーグの戦いに社長の車が巻き込まれたんスよ。それで4つに斬られた上に燃やされてしまって、誰がどう見ても修理不可能って感じだったんスよ。
しかもそのエクストレイルは納車して1日も経っていない状態だったッスから、今はこの状態なんスよ」
「納車1日で廃車ぁ!? それは災難でしたねぇ」
「災難ってもんじゃないっ!! 最悪だああああああぁぁぁあああぁぁぁああああああっっっ!!?」
「社長はこう言ってますけど、サイボーグを作っていた会社の方がその場で全額弁償してくれたッスよ」
「はぁ〜なるほど。それでまた新しいの買えばいいじゃないですか」
「そう言っているんスけどねぇ〜。社長がぁ〜・・・・・・」
「エクストレイルちゃぁぁぁああああああんっ!! カムバァァァアアアアアアッッック!!?」
見崎は明け方までお酒を飲んでは泣いてを繰り返すのであった。
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