紫音とM1887の反動
エルザさんが一括で買ってくれた魔改造M1887を試そうと言うので、ガンショップの隣にあるシューティングレンジまでやって来たのだがぁ・・・・・・。
「紫音、いい加減撃てよ」
「ムリムリムリムリッ!? 腕が折れちゃいますよっ!!?」
「力一杯握っていりゃあ折れねぇよ」
そう、僕はM1887を構えたまま撃てずにいた。
ねぇ知ってる? 10番ゲージのショットシェルと12番ゲージのショットシェル。知らない人からしてみれば12番ゲージの方が大きいんでしょ? そっちの方が数字が大きし。って思うでしょ?
違うんだよ! 12番ゲージよりも10番ゲージの方が0.0いくつの差で直径が大きくて長いんだよ! たったそれだけの差で反動が格段に変わるし、何よりもバレルが短いから恐いに決まってる!!
「ねぇ、この中で一番力が強いリュークがあれを撃つべきじゃないの?」
「う〜ん、先ずはシオンくんが撃った様子を見てから判断するよ」
「ねぇ、自身がないのバレバレよ」
「あ、バレちゃった? 流石のボクだってあれを撃つのは難しいよ」
いえいえいえ、リュークさん撃って下さいよ! もう僕はもうガクブルですよ!
「あ、撃つ前に一応言っておくが、その商品が壊れたと言うクレームは対応するけど、怪我に付いては一切の対応はしないぞ」
「何でですかぁっ!?」
「それは元々、危険過ぎるという事で破棄する予定だった物だからだ。でも耐久力テストは通っているから、壊れる安心しなくていい」
つまり僕は異悪付きの銃を購入させられたって事ですかぁ!? 酷い! 酷過ぎますよ! そんな物を僕に売らないで下さいよぉ!! この武器を今すぐに返品した方がいい!!
「撃てったら撃て」
「あ〜もうっ! 天野さんの人でなしぃっ!!」
そう言うのならやってやりますよぉっ!!
「それじゃあ、撃ちますよ!」
「お前のタイミングでどうぞ」
大きく深呼吸をした後に ウィンチェスター M1887 をターゲットに向かって全身に力を込めて構えると、ゆっくりとトリガーを引いていく。
もうちょっと。後もうちょっとでハンマーが落ちる。
ビビリながら落ちる手前まで引くと、再度ターゲットの真ん中に狙いを定めてからトリガーを引き絞った途端に鋭い反動が銃を握っている手から肩まで駆け巡った。
「〜〜〜〜〜〜ッ!!?」
M1887を撃ったら悶絶するほど痛いのかなぁ。と思っていたけど、ちょっと手がジンジンするだけで、痛くは無かった・・・・・・強がりました。嘘です。手が痺れて痛いです。
「大丈夫、シオン?」
「あ、はい・・・・・・大丈夫ですぅ〜」
「おお〜、こりゃヤバイねぇ。売っておいて言うのも何だけど、これに撃たれたくないなぁ」
「売った張本人が何を言っているんですかぁっ!?」
「しかし、何だ。いいところを当ててるじゃないか」
天野さんはターゲットを見て言うので、僕も確認してみると大体中心より左寄りの下に弾が当たっていた。
「シオン、腕は何とも無いか? ワシに見せてみるんじゃ」
ああ〜、今触らないで下さい。今普通状態でジンジンしているのに刺激されるとぉぉぉおおおおおおっ!!?
「ギャァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!?」
「どうしたシオン!? やはり何処か折れておるのか?」
「それはチガうと思いますよ」
「どういう事じゃ?」
「シオンのおじいさんが痺れている手をサワっているから、シオンは苦しんでいるのですよ」
「なぬっ!? 本当かシオン?」
叔父さんが僕にそう聞いて来るので僕は全力で首を縦に振ったら、おじさんは慌てた様子で手を離した。
「すまんシオン! 悪気は無かったんじゃ!!」
おじさんはそう謝りながら抱き締めて来るが、その行動のせいでまた腕に痺れを感じてしまい、今度は声にならない悲鳴を上げた。
「まぁでも、これで狙いが何となくわかっただろう?」
「いえ、全然把握していません」
「ならもう数発撃つか?」
「あ、うぅ〜〜〜ん・・・・・・」
M1887の反動はデカくて嫌になるけど、これを使いこなさない事にはあのサイボーグと張り合えそうにない。
「もう数発だけ撃ってみようと思います」
「そうか。わかっていると思うがくれぐれも怪我をするんじゃないぞ」
天野さんはそう言うと、何も言わずにシューティングレンジを出て行ってしまった。多分煙草を吸いに行ったんだと思う。
「・・・・・・ジンジンする手がだいぶ治って来たので、また撃ってみます」
「それじゃあ、シオンくんが撃った次はボクが撃つよ」
「撃つのならそれなりの覚悟をしていた方がいいですよ」
リュークさんにそう言った後にコッキングをしてからまたターゲットに向かってM1887を構えると、今度はすぐにトリガーを引いて撃った。
「ナイスショット!」
「ど真ん中に当てるなんてスゴイわねっ!!」
「何処を狙えばいいのか把握出来ましたから」
それに、8mぐらいだったら簡単だしね。
「はい、リュークさん」
「どうも」
僕からM1887を手渡されたリュークさんは僕と同じようにターゲット狙いを定めると、トリガーを引き絞り撃つとちゃんと身構えていなかったせいか1歩下がったのだ。
「これヤバイよシオンくん! これ狙い辛いよ!!」
「やっぱりそう思います?」
「リューク、お前は気付いていないと思うが、撃った弾は明後日の方向に飛んでいるぞ。ほら、右側の土壁を見てみろよ」
神崎さんがそう言うので指をさしている方向を見つめてみると、何と土が抉れていたのだ。
「流石にストックなしの長物を撃つのは難しいよ」
「そうじゃなぁ。あ、因みにワシは撃たんぞ」
「俺もストック有りのM1887だったら撃つけど、ストック無しだったら撃たない」
「俺もストック無しの10番ゲージは撃つ勇気はない」
オズマさん、リガードさん、神崎さんの順にそう言って断って来た。
「私もスナイピングに影響しそうなので、コンカイは遠慮させて頂きます」
うん、そうだよね。コニーさんはこの後すぐに仕事に取り掛かるスナイパーだから、僕のように腕にダメージを与えるような事をしちゃいけないよね。
「ワシはぁ・・・・・・」
「おじさんは規則上、撃ってはダメですよ」
「あ、そうなんじゃな」
おじさんは撃ちたかったのか、残念そうな顔をさせながら耳を垂らしてしまう。
「シオン。もうわかっているとは思うけど、ダブルオーバックとは違ってスラグ弾はショットシェルの中に1発しか弾が入ってないの。
アナタが使う10番ゲージはとても強力だから、場合によってだけど自動車のエンジンを狙って撃てば1発で停める事が出来るのよ」
「えっ!? 1発で?」
「ああ、10番ゲージのショットガンは、ちょっと昔のアメリカでは道路封鎖用で使われていたからな」
「ええ〜!?」
188さんの説明に対して、信じられないと言わんばかりの顔でM1887を見つめてしまう。
「それにお前さんも知っていると思うが、ショットガンの射程は短いから出来るだけ敵に近づいて撃てよ。最大距離は12mってところだが、ライフル弾と違ってモロ空気抵抗を受けるから外では10m未満まで近付いた方が外れる心配がないぞ」
「え、でも。リュークさんが外していませんでした?」
「アイツはお前と違って射撃が苦手だし、初弾で何処を狙っていいのか把握してないから当たら無かったんだよ」
「何かちょっと傷付くなぁ」
「まぁまぁ、アナタは別方面で活躍しているから気にしないの」
そして188さんは自分のポケットから5つぐらいの数の10番ゲージのショットシェルを取り出しと、僕に目の前に差し出した。
「ほら、これは俺からのサービスだ。受け取ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
お礼を言いつつショットシェルを受け取ると、188さんはニッコリと微笑んだ。
「自分の両親の生い立ちを知るのも、祖父に会うのも遅かれ早かれ訪れる運命だったのかもな」
「え?」
「いや、何でもない。それじゃあ紫音くん、俺は仕事もあるから帰らして貰うよ」
「あ、色々とありがとうございました!」
「ああ、工藤達によろしく伝えておいてくれ」
188さんはそう言って手を振った後にシューティングレンジから出て行くのであった。
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