真実を知った紫音

今日はみんなといっしょに、おそとへお出かけする日。くろのおにいちゃんといっしょに行けるとおもったけど、おしごとに行っちゃった。一緒におでかけしたかったなぁ。

シロはそう思いながら、お友達と手を繋ぎながらキョロキョロと辺りを見回していた。


「シロちゃん、どうしたの?」


「せんせい、くろのおにいちゃん」


「くろのおにいちゃん? もしかして紫音お兄さんの事かな?」


「うん! うん!」


勢いよく首を縦に振る姿を見た飯野は、クスリッと笑った。


「じゃあ、今度紫音お兄さんを誘ってお出かけしてみようかしら?」


その言葉を聞いたシロは、明るい笑顔で頷く。


「シロちゃんはシオンおにいちゃんのこと、大好きだよね」


「うん、大好き!」


だってやさしくて、いい匂いがするから。


「止まれ! 止まらないと撃つぞっ!」


「チッ、しつけぇんだよっ!!」


なんだろう?


シロがそう思いながら声のした方向へ顔を向けると、何と銃を持った男2人が走ってこちらに来ていたのだ。しかも、肩から血を流している方の男が後ろを振り向き、追っている人達にM4A1(5,56×45mm使用)を向けて乱射し始めた。


「オラオラ死ねや、このクソPMCどもっ!!」


「止めろ、ネルガム! 一般市民に当たったらどうすんだっ!?」


「うるせぇなっ! こうなっちまったら、プライドもクソもねえだろうがよぉ!!」


店のウィンドに駐車してある車のボディ、さらには壁。ネルガムと言われた男は手当たり次第に撃ちまくるが、銃声が突如ピタリと止む。


「あ、クソッ! 弾切れかよ!」


そう言った後に銃に付いている空のマガジンを抜き、腰のベルトに挟んで刺していたマガジンを取り出すとチャージングハンドルを引く。そして撃つ構えをしたが、またチャージングハンドルを引いてから撃とうとするが弾が出ない。どうやら故障してしまったようだ。


「ッチクショウ!」


眉間にシワを寄せながらそう言うと、フレームの側面に付いているボタン。ボルトフォアードアシストノブを何度も押そうとするが、ビクリとも動かない。


「クソッ、このポンコツ銃がぁっ!?」


男は相当怒っているのか、自分が使っていたM4A1を地面に叩きつけた。


「ヤマ、アイツらに向かって撃て!」


「ダメだ、一般市民に当たる可能性がある。だから逃げるぞ!」


「当てちまってもいいじゃねぇかよ!」


その言葉口にした瞬間、ヤマと言われた男性の顔が険しくなった。


「そんな事をしたら、テロリストと一緒になっちまうだろ! 殺し屋のプライドを捨てるつもりなのか、お前は?」


「プライド? そんなもん、はなっからねぇよ! 手っ取り早く大金を貰えりゃあ、どんな事だろうがやってやる! 例えば・・・・・・」


ネルガルキョロキョロと辺りを見回した後に白い髪の子供と目が合った。その子に目を付けたのか、ニヤリとさせながら、その子に駆け寄った。


「こんな事もなぁっ!!」


ネルガルはその子供の首に腕を回して逃げられないようにすると、その子供の頭に銃を突き付けた。


「動くな、PMC共! このガキがどうなってもいいのか? あぁっ?」


恐くなったシロはネルガルの腕の中で泣きじゃくりだした。



〜〜〜 紫音 side 〜〜〜


「全員その場で止まるんだっ! 」


天野さんがそう声を掛けてくるので、壁に隠れたまま止まった。


「クソッ、最悪だ。アイツら子供を盾にしやがった」


「どうするの? 撃つ?」


「ダメだリトア。子供どころか周りにも人がいて撃てる状況じゃない。退かすか、それともこのまま粘るしかないな」


気になったので、天野さんの後ろからそぉ〜っと覗いて見た。


「あれは、シロちゃん!?」


僕の声に反応して、肩に傷を負った男が銃口を向けて来たので、素早く隠れるのと同時にパァンッ!? という発砲音が聞こえた。


「あの子供、知り合いか?」


「は、はい。今日行った孤児院に入っている子の1人です。でも何でこんなところにいるんですかね?」


「さぁな。理由はどうあれ助けなきゃならないな」


そんなやり取りをしていると、向こう側から怒声とも思えるような話声が聞こえて来た。


「その子を離して下さい!」


この声は田端さん?


「その子が可哀想です! 止めて下さい!」


飯野さんもいる!


「うるせぇっ! お前ら殺されてぇのかよぉ?」


「そ、その子の代わりに私が人質になるので、どうか離してあげて下さい!」


田端さんはそう言ってから男に近づくが、男は田端さんに向けて持っているCOLT M1911A1(45ACP) を突き付ける。


「信用出来るか! それ以上近づいて来たら殺すぞババァッ!」


田端さんは顔を青くさせながら、ピタリと止まる。


「おい、行くぞ!」


「・・・・・・その子は離せ」


仲間らしき男がその男に近づいて言う。マスクのせいで表情はわからないけど、声に怒気が含んでいた。


「んだとぉ?」


「だから、その子は離せと言っているんだ」


「てめぇ、俺に逆らおうってのかぁ?」


何か、雲域が怪しくなって来たぞ。あれ?


「何だ? 仲間割れを始めたのか?」


「そんな感じじゃな。一体どうしたと言うんじゃ?」


天野さんとオズマさんはお互いの顔を見つめながら、そう言う。


「好都合じゃないのかな? このまま上手くいけば、2人取り押さえられるかもよ」


「リュークの言う通りだな。何かプランがあるのか?」


「3人がこのビルの裏から出て、脇道を伝って背後に周ってから確保する。ってプランを思いついたんだけど、どう思う?」


「そうだなぁ・・・・・・それしか方法がないか。じゃあ俺達はここで犯人の注意を引くから、オズマ達はリュークの言っていた通り、脇道から頼む」


「わかった」


そう言えば、この声聞いた事・・・・・・あっ!


「思い出した!」


「ん? 何が思い出しただよ。てかどうしたんだ紫音。顔色が優れないぞ」


そう、紫音は顔を真っ青にさせながら、天野の顔を見つめる。


「あのヤマって人は、以前シロちゃんを庇ってくれた人と同じ声をしています」


信じたくない。けど余りにも口調と声が似てる。


「そんなバカな。他人を助けるようないい人が、殺し屋なんてするわけが・・・・・・」


「シロちゃんをはなせぇぇぇええええええっ!!」


一体何が起こっているんだ? と思いながら、ターゲットのいる壁の向こう側を見てみると、何とシロちゃんと仲良くしていた子供の1人が怪我を負った男にぶつかって行ったのだ。


「な、何だこのガキッ!? イテッ! イテテッ!!」


そして、シロちゃんの首に回している腕に噛み付いたのだ。


「フグゥゥゥッ!!」


「イテェッ! 離せ、離せこのクソガキッ!」


肩に傷を負った男は噛み付いている男の子を振り払おうとしたが、中々引き剥がせずにいた。


「いい加減離せっつってんだろうがよぉっ!!」


男の怒りが頂点に達したのか、何とM1911A1で殴り付けた。しかし、その瞬間に腕の拘束が緩んでしまったので、男からシロちゃんは脱出する事が出来た。


「この、いい加減離せ!」


そう言って大きく腕を振ると、男の子の噛み付きが振り解けた。


「このクソガキ! よくもやってくれたなぁ!」


肩に傷を負った男は怒りの表情で、男の子に銃を向ける。


「マズイわッ! 早くあの子を!」


「見りゃわかる!」


天野さんは銃を構えた。


「や、やめてええええええええええええっっっ!!?」


パァンッ!? パァンッ!?


「はぁ?」


「・・・・・・え?」


「・・・・・・嘘でしょ?」


僕達は目の前で起こっている状況を、信じられないと言いたいような顔で見つめている。


「ゴホッ!? おま、え・・・・・・・」


肩に傷を負った男は仲間を睨んでいた。そう、仲間に撃たれたのだ。

その仲間は横たわっている仲間の M1911A1 を奪うと、田端先生に顔を向ける。


「すまなかった」


「え、あの」


その後に泣きじゃくるシロちゃんの顔を見つめると、手を伸ばすが、すぐに引っ込めて走り出した。


「お前! お前ぇぇぇええええええっ!!?」


手を伸ばし、助けてを求める仲間を見向きもせずに。


あの人はやっぱり!


「待って!!」


僕は壁から飛び出して、その姿を追いかける。


「紫音! リガード、神崎、あの男の確保は任せた」


「お、おう」


「わ、わかった!」


オズマと天野達は紫音の後を追いかけるのであった。


男の子を助けた男を追いかけていたら、運送業の倉庫へ来てしまった。シャッターの隣にあるドアノブが壊されていた上に中へとニオイが続いていたので、倉庫内で隠れている可能性があった。

なので慎重に倉庫内へ入って行く。


「何もない」


倉庫内に何も置かれてないので、多分廃業した倉庫なんだろう。と紫音は予想する。


「・・・・・・こっちから臭いがする」


H&K UMP45 を構えながらニオイを辿って行く。


このドアの先に続いている。


ドアノブに手を掛けて回したところで、いきなりドアが開け放たれたのと同時に痛みと共に視界がブレた。そしてそのまま、投げられてしまった。その際に自身が持っていたUMP45を取られてしまった。


「グゥッ!?」


「油断し過ぎだよ。紫音くん」


目を開き、声のした方へ顔を向けた瞬間に、悲しみの表情で仲間から奪ったM1911A1を構えている男の人を見つめる。


「どうして?」


「ん?」


「どうしてアナタはこんな事をしてるんですか?」


「これが仕事だからだよ。私にはこうやって人を殺してお金を稼ぐ道しか、出来ないんだ」


彼はもう、紫音が自分の正体に気づいたのを理解した。彼にとってそんな事はどうでもいい事なのだ。何故なら仕事済ませるだけなのだから。


「さようなら。紫音くん」


紫音の頭を狙いを定めて、M1911A1のトリガーを引いて撃ったのであった。

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