おぼえている景色
御徒町組
第1話 純喫茶ドリーム 1 父が働いていたお店
自動扉が開き、中に入ると外より暗い照明で、でも丸い深緑の照明スタンドが真正面に見え、その色が好きだった。店内はタバコの香りがする。今のように、禁煙なんてことは言われておらず、各テーブルには灰皿があり、ドリームという店名が入った、マッチ箱が置いてあった。そのマッチには、カレンダーが印刷されており、月ごとにかわる絵が楽しみだった。そして、いつも有線がかかっていて、色々な曲が流れていた。そういえばマッチはあまり見かけなくなった。昔は食べる店なら、灰皿とマッチは机にあったはず。あと、星占いの丸いもの。あれは一度もやったことないけど、いつかやりたいと思っていたが、うちの店にはなく、この年になってもやったことがない。
店には、お掃除や飾りつけをしてくれる人が毎晩来ていた。その飾りのガラスケースの中には硝子の置物があり、その下にちりばめられている、色ガラスの砕けた小さな破片達がとても素敵だった。小さい頃の私はそれがとても欲しくて、いつも
「怒られちゃうから少しだけ。」
と父は言い、2つか3粒、その欠片をくれた。
硝子の破片は、一見鋭そうな形だが、触っても手が切れないように、仕上がっていた。どのようにして加工していたのか、わからないが。
あと、なぜだか孔雀の羽が何本か飾ってあって、目のようできれいだと思った。
今のように、携帯電話がないから、ピンクというか肌色というか、十円を入れると電話ができるのもあった。2台も。
キャンベルのベジタブルスープの缶も飾ってあり、なんだかいいなと思っていた。
とにかく、お店でアイスを食べたり、クリームソーダが飲めたりするチャンスも少しはあった。あと、インベーダゲーム。机型のゲーム機が二階にあり、やらせてもらえたのだが、どんなに頑張っても、最初の一面しかクリアできなかった。
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