(丁)
明暦三年、睦月十八日のことである。
『むさしあぶみ』によると、死傷者は十万を優に数えたという。火を避けて川に飛び込み、溺死した者も多かったという。
この未曾有の大火災は「明暦の大火」、俗に「振袖火事」とも呼ばれ、長く人々の記憶に留められることとなる。
古書に曰く、「すべて女は はかなき衣服調度に心をとどめて なき跡の小袖より手の出しを まのあたり見し人ありと云」と。
この大火も、亡き娘の
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