第5話 オタクのハロウィン
・オタクのハロウィン
「ふぅ…本日の業務終了、と…」
一息の様にそう言いながらボクは背筋を伸ばすとふとカレンダーの日付に目をやる。
今年ももうすぐハロウィン。
今まで日本ではハロウィンはそこまで流行ってた訳ではないがSNSやネットの存在もあってか
今じゃほぼハロウィンの季節はお祭り状態だ。
気になって軽く調べてみたけどもハロウィンとは日本でいうお盆にあたる行事で
ジャック・オー・ランタンなどは調べれば「なるほどなー」って思える様なトリビアだった。
そんな我が家もなんだかんだとハロウィンを楽しむ為の準備などしていた。
「と言ってもハロウィンに関するネタとかをSNSに投稿とかぐらいだけどな…」
苦笑しながら一言の様に呟いた後、コーヒーを飲もうと作業場からリビングへと足を運ぶ。
リビングに出るとふとヨメの作業場へと視線が向いた。
10月に入ってから仕事以外でも度々作業場に籠ることも多くなったが一体何をしているのかまでは
流石にボクは詮索する気はなかった。
ハロウィンに向けてハロウィン絵を描いている、と最初は思っていたのだが
通販などで衣類用の布や小物類などを買ってきてるらしく、今年はかなり気合を入れているなと思った。
(そういえば昔コスプレ衣装を作ったことがあるって言ってたな)
今の仕事と結婚もあってか作らなくなったようだが、一度も見たことがなかったこともあってか
ボクとしてはちょっと見てみたい衝動に駆られた。
(けど完成するまでは敢えて我慢するのもありかもな…)
ヨメに「完成するまで見ちゃダメ」と釘刺されてるのもあってか無性に観たくなってはいるけども
やっぱここは我慢の子と意志を高めている次第。
(とりあえずどんなものができるのかは当日まで想像して楽しもう)
そう思いながらボクはお昼の用意へとそのまま突入していった。
「ねえ、ちょっといい?」
お昼の後、唐突にヨメから呼び止められた。
何事か?と応じるととりあえず立ったまま背中向けてと言われて言う通りにした。
すると“何か”がボクの背中に触れていた。
彼女の胸ではなく、布と思われる感触だった。
もしかして、と言おうとしたけども動かないで言われたのでそのまま言う通りにしました。
それからしばらくして
「…よし、ありがとうもう大丈夫だよ~」
そう言うと彼女はそそくさと作業場へと引っ込んでしまう。
少し寂しさを感じながらも自分もハロウィンの準備の為に買い物へと向かうのであった。
そしてハロウィン当日。
お菓子やら料理やらを用意し、リビングもハロウィンの飾りを行うなどプチハロウィンパーティーの様相を呈してきた。
「さて用意はこんなところかな、そろそろ呼ばないとな」
とヨメの作業場に向かおうとした時だ。
彼女の作業場からヨメが姿を現した。
「ト、トリック・オア・トリート…ッ!!」
ボクは一瞬驚いたが彼女の恰好を見て更に硬直した。
彼女の服装がハロウィン衣装だったのだ。
気合を入れたのか今風の魔女といった感じなのだがいつもの服装とは
だいぶ印象が違うこともあったのかボク自身の思考はだいぶ止まっていた。
同時に彼女も気合入れ過ぎたのもあってか若干気恥ずかしい感じらしく、顔が少し赤くなっている。
「ど、どう…」
「…あ、ああ…凄く…いいよ…」
完全に頭の中が真っ白になってるせいか全然言葉が出てこなかった。
だがふと思い出した。そういえばこの前、ボクの採寸もやってたような、つまり
「うん、当然キミのもあるよ」
そういうと彼女は作業場から畳まれた一着の衣装を手渡された。
衣装的にはタキシードみたいな感じだが多分ハロウィンだから
「さ、早く着替えて着替えて!!」
急かされてハロウィンの衣装に着替えたボク。
衣装は十中八九ドラキュラ伯爵をイメージしたものだった。
「うん、サイズピッタリ!!」
ガッツポーズするヨメを見て楽しんで貰えてなによりを感じたボクは
ヨメと一緒に小さなハロウィンパーティーを始めるのであった。
皆さんトリック・オア・トリート
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます