第9話 ゆりの欠席

 やっぱり体育の時間は大変だった。なんで四十キロ走った翌日に走り幅跳びなんだ?琴は恨めし気に砂場を睨んだ。

放課後、琴は4組を覗きに行った。えーっと、ゆりはどこだ?

「すみません、羽田ゆりさんってもう帰っちゃったですか?」

「あー、ゆりちゃん、今日休みだよ。病院に行くって」

へ?病院? 昨日、何かあったのかな?全然平気そうだったけど。

案外私と一緒くらい足痛がってたりして。また明日聞いてみよ。

琴は、深く考えずに帰宅した。


翌日の放課後、琴は再び4組を訪ねた。

「あ、ゆりー、昨日どうしたの?私は足大変だったけど、ゆりも?」

「ごめんね、来てくれたんだってね。お小夜が言ってた。ちょっと足痛くてさ、筋肉痛とは違ったから、もうすぐ中間試験だし、行ける時に行っちゃえって整形行ってた」

「えー?大丈夫だったの?」

「うん、成長痛じゃないかって。あたし、急に大きくなるかもよ。あたしさ、密かにヨシノさんに憧れてんだ。ヨシノさんみたいにすらっと伸びて、体育の先生になって、イケメン男子をビシビシしごくの」

「はあ?またなんて夢なんだ」

「あの先生、美人だけどおっかねーって言われたいんだ」

「あんたドSか。でもヨシノさんってビシビシなの?優しそうだけど」

「ん、一緒にツーリング行くとね、坂道でへばってても、はいはい回してーってニコニコしながら叫ぶんだよ。鬼コーチよ」

「へえ、見かけによらないんだ。じゃあゆりは体育大学とか行くの?」

「うん、教育大かな。学費安いし」

「そうなんだ。私は進路なんてなにも考えてない。高校入ったとこだし」

「普通はそうだよ。ま、だから成長痛はウェルカムね」

「そっか、大丈夫ならいいけど。それじゃ中間終わったらまたどこか連れてって」

「オーケイ。今度はもうちょっと距離伸ばすよ。五十キロ超えかな」

「私も王子様のオトコ磨いとくよ」

「早く名前決めなね。王子様に跨るのって下品だからさ」

「ドSが言う事じゃないよそれ」

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