第28話
暗闇の中では小百合さんが腕組みをしながら凛々しく立っていた。
制服姿の彼女は微笑みながらこう言った。
「君が学校を休むなんて初めてだから、心配になって見に来たんだ。昨日の事もあるしな」
その気持ちは本当にうれしいが、俺はふと疑問が浮かぶ。
「なんで俺の家知っているんですか?」
「後輩から聞いたんだが?」
なぜそんなことを聞くのかと首をかしげる。きっと小百合さんにとっては当たり前の情報なのだろう。俺の個人情報は駄々洩れ何だな。この分だとすでに俺の携帯番号を知っていてもおかしくない。
みんなから信頼されている完璧超人は恐ろしいな。
「それで、何かあったのか? 君が学校を休むなんて珍しいと後輩も言っていたぞ」
俺は凛の事を話すべきか少し悩み、目の前に見える小百合さんの邪悪な微笑みを見て、すぐにバレてしまうことを察した。
どうせバレてしまうのであれば隠さないで打ち明かしといたほうが、何かと平和的に事がすむだろう。
「小百合さん、少しお話があるので中に入ってもらっていいですか」
「いいのか! 智樹君の家にお邪魔していいのか!」
家に入るだけなのに小百合さんはとても嬉しそうだ。
小百合さんは礼儀正しく、きちんと靴をそろえて入る。
「お邪魔します……。…! これが智樹君の家か…! 智樹君が毎日のように歩いている廊下…! 智樹君の匂いがするぞ…!」
小百合さんはせわしなく首を動かし、あたりを見渡している。口元が緩み切っているのが彼女らしくない。
「…大丈夫ですか……?」
「ん。大丈夫じゃないかもしれない。私は今…この家に性的興奮を感じている!」
えーーー。怖いんですけど。
「さ、小百合さん……?」
気が付くと、自室から顔だけ覗かして怯えている由衣がいた。
「お、由衣ちゃんだ! 元気にしていたか、我が妹よ!」
小百合さんは由衣に駆け寄り抱き着く。由衣は驚いて抵抗もできず、ただやられるがままにされている。その様子はまるで、小動物を捕食しているヘビのようだ。
「な、な、な、な、何ですか! わ、わ、わ、わ、私は小百合さんの妹ではありませんよ!」
「くーー! かわいいやつめ! 将来的に私の妹になるのだから、今からそう呼んでいても問題なかろう?」
そのセリフを冗談抜きの真面目なトーンで言っていることが一番怖い。
「お、お兄ちゃーん、助けてーー!」
本気で助けを求める妹は可愛いのでしばらく眺めておきたかったが、このままだと一向に本題に入れそうにないので小百合さんを制止に入る。
「小百合さん、妹が困っているのでそろそろ離していただけませんか」
「そうなのか? 私には喜んでいるようにしか見えないが」
小百合さんの目はどうやら異世界でも見ているようだ。どう見ても喜んではいない。
「あの、俺の部屋で話をしたいのですが……」
「何!? 智樹君の部屋だと!? それはぜひ行かなければ!」
駆け寄ってくる小百合さんの目がまぶしいほどに輝いて見えた。
あれ? 小百合さんってこんなキャラだっけ?
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