第九走 備えあれば患いなし

 私がそもそも走り始めたのは靴さえあれば出来るし、ジムの会費など払わなくてもただ家の周りやそこの公園に行けばいいし、もし三日坊主になっても損害はないからなのです。確かに靴一足だけで十分なので最初は安上がりでした。


 しかし、走り始めてしばらくすると結構出費が嵩んできました。やっぱりヨレヨレのTシャツとスウェットパンツでなくてちゃんとしたものを着たくなるし、給水ベルト、給水バッグ、手袋、帽子、上着、撥水コート、腕カバー、靴下、と挙げだすときりがありません。


 今のところ走る装備でお金がかかっているのは順にGPS時計、靴、MP3プレイヤー、静脈瘤防止用のコンプレッションタイツですね。


 あちこちの大会に出るようになるとその参加費もばかにならない出費です。走ラン会の会費はとても良心的に設定されていて、他の出費に比べると僅かなものです。


 そしてハーフやフルマラソンを走るようになると、泊りがけであちこちの大会に参加するようにもなりました。そうすると旅費がかかります。一人長距離運転したくない、ホテルに一人で泊まりたくないという理由で家族まで連れて行くと当然人数分の旅費がかかります。


 他の出費として、大会の後ちょっと贅沢にスパやエステでマッサージとか、ただ調整のため怪我をした時に整骨や理学療法士の費用とかもあります。




 さて、自分の位置情報からどのくらいの距離をどのくらいの時間で走ったか記録できるのがGPS時計ですが、最初私は代わりに携帯のアプリを使っていました。ただでインストールできる便利なアプリが色々あります。


 自分がどこをどう走ったのか、後からパソコンや携帯で確認するのはとても楽しいのです。地図上に自分の足取りが線で表されます。それをSNS上で公開したりもできます。走っている途中に撮った写真も一緒に添えることもできます。


 しかし、携帯電話ですが冬場は特にGPS機能を作動させているとあっという間に電池がなくなるのです。それからGPSが携帯の位置を見つけるまでに時間がかかりすぎることも多かったのです。


 ということで迷った挙句GPS時計を買う事にしました。これも色々種類があり、値段もピンキリなのですね。そして新しいおもちゃGPS時計はGPSの入りも良く、一度充電すると冬場でもフルマラソン一本走るより余程長い時間もちます。実は色々小難しい機能がありすぎて全てを使いこなせていないと言うのが本音なのです。真面目に走っているのなら投資する価値のある装備だと私は思います。




 一人黙々と長距離を走る時は音楽を聴くこともあります。今使っているイヤホン一体型MP3プレイヤーは絡まるコードもなく、便利です。しかも周囲の音取り込み機能もついています。要するに安全の為、イヤホンで耳を塞いでいても車が近付いてくるのが聞こえるのです。自分の歌声も聞こえ、他人と話もできるのです。


 でも私は最近音楽無しで走ることも多くなってきました。時々は気を紛らわすために好きな曲を聴きたい時もありますが、あまりの長距離走大会中に苦しみが極限に達するとイヤホンから流れてくる曲もウザく感じてしまう事までありました。




 とにかく、出費もなく靴を履くだけで気軽に出来る、と始めたはずなのに結構な投資をしてしまっている私でした。ここ数年はもう私はお出かけ用の服を買っていません。


 フルタイムで働き、週六回トレーニングをしているのですから、一日着ているものと言えば仕事中は制服というかクリーンルーム用作業着、トレーニング中は運動用の服、移動は仕事用の服か運動用の服で、家では寝巻か普段着です。ラン友も皆さんそんなものです。


 あと、大会に出る度にTシャツをもらえるようになったのでTシャツだけは買わなくても間に合っています。しかし、下半身に履くものは買わないといけません。洋服屋でなく、スポーツ用品店の前を通る度に「ちょっと見てもいい?」とツレアイや息子達に聞くようになりました。ジローにはいつも「お母さん、もう十分服も装備もあるでしょ!」と言われるようにまでなりました。




 上に述べたものはランニングをしているだけの場合です。少し前から私はトライアスロンにも手を出してしまったので出費はますます増えました。水泳練習の為にプールがあるジムの会費、自転車、それに伴う装備、自転車用の服、ウエットスーツ……


 洋服、化粧品、宝飾品なんてもう何年も買っていないような気がします。お金をかければいいってものでもありませんが、自転車なんて給料何か月分ですか? の域に達します。婚約指輪なんて買っている場合ではありませんよ。




 先日ある皇族の方の婚約発表がありましたね。婚約者の方のことについて、ある新聞に『マラソンやトライアスロンという趣味にも真面目に取り組んでいる』というようなことが書かれていました。真面目につったってアナタ、不真面目には取り組めませんから、その趣味は! 趣味と呼ぶなら最低毎年一、二回は大会に出ていると考えます。普通なら大会の四か月前から本格的に練習を始めますし、お金もかかっていますから。



 要するに私はもういい大人で、子供も大きくなり、自分の時間とお金を好きなように使ってそれで満足しているということが言いたいわけなのです。


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