悪魔

男が宙に浮いている。地面から1メートル位を浮遊している。上半身裸だ。

ネパール人のようだ。

周りには誰もいない。

だがこの場には異様な威圧感が存在する。魔界 地獄の気配がする。

俺は何度も経験してきた・・・・・だが今回は桁違いだ。


男に近づくと急に圧力が増した!めりめりと音を立てて男が変貌していく。

顔がカラスのそれに変わっていき背中に翼が生え始めた。

恐ろしいうなり声を上げ始めた。ソロモンが使役していた悪魔の一人だ!!


俺の背骨がごりっと音を立て動き始めた。背骨がゴツン、ゴツンときしみだした。

俺の中の魔が悪魔に共鳴している。体中に獣毛が生えてきた。

鼻が前に突き出し口が裂け牙が伸びてきた。身体が腕が足が倍の大きさに膨らんでいく・・・・

体中の骨が筋肉がきしんでいる。

意識が朦朧としてきた。頭の中で狗神が吠えている。

「人も魔も自分も食らいつくせ!!」

俺は狗神と同化した・・・・・・・・・


悪魔が素早い動きで襲いかかってきた。人間の目で追えるスピードでは無い。

だが俺の動きはそれをはるかに上回った。

悪魔の攻撃をかわし後ろに回り込み翼を引きちぎり首元に食らいついた。

貪り食った。俺の口元は悪魔の血と肉でぐちゅぐちゅになった。

悪魔が断末魔の悲鳴を上げた。俺は殴って殴って殴って殴って殴って・・・・・・

気がつくと周りから経文を唱える声が聞こえた。いい香りが漂ってくる・・・・・・・・・・・・

俺は気を失った。


俺は目を覚ました。

ベッドの上にいる。

「気がつきましたか。犬神さん」

なじみのラマ僧が立っていた。

「犬神さん、あなたは己の中に住む魔物に完全に取り込まれるところでしたよ。

 危ないところでしたが、なんとか引き戻せました」

「ありがとうございました。面目ないです・・・まだまだ修行がたりないようです」

「いや!犬神さん!あんな上位悪魔が出てきてしまっては仕方ないと思います。

 ところで犬神さんは死者の書に用があって来たのではないのですか?

 残念ながら死者の書は奪われてしまいました」

「奪われた?」

「ハイ、会話と風体から察するに日本人の集団だと思われます。

 一人の左手の甲の上には六芒星の刺青がありました」

「ソロモンの紋章・・・・・・・・」

「そうです。彼らは死者の書を使って悪魔を呼び出したのです。死者の書は時代を経てソロモンの秘宝とも

 呼ばれるようになりました。死者の書は悪魔を呼び出す事が出来るのです」


「犬神さん彼らは日本に戻ったことでしょう。四国の剣山にもソロモンの秘宝が眠っていると言われています。彼らを止めて下さい。このままでは地獄の釜の蓋が開いてすべての悪魔がこの世に出てきてしまいます。そうなれば人類は滅亡するしかありません。我々も全力で阻止するつもりですが、ぜひ犬神さんの協力が必要です」

「わかりました、今すぐ日本へ戻ります」


俺は一旦東京に戻る事にした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る