死者の書

俺はネパールへ旅立った。チベット仏教の聖地で「死者の書」を手に入れるためだ。

死者の書とは、チベット仏教の経典であり、死者の魂が死後迷うことのないよう導いてくれるものだ。


人間はみな死ぬ。死ぬ義務がある。人の一生は短い。100年なんてあっという間だ。

そしてすべての人は生まれ変わる。輪廻転生だ。


チベット仏教の「死者の書」では、こう説かれている。

次の生への執着があると、地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天、六道のいずれかに転生する。

そして、生前の行いが鏡に映し出されるが、これらも全て自らが創りだした幻影であることを悟ることができれば、解脱することができる。解脱とは煩悩の束縛から解放されて、安らかで自由な悟りの境地に達すること、輪廻転生から解放される事だ。

しかし、生前に犯した罪が極めて大きい場合は解脱することができない。

カルマによって六道のどこに転生するかが決まる。

それはつまり、次の世界へ転生することを表している。

チベット死者の書の経典では、転生の選択するときに、人間界かまたは天上界への転生を勧め、決して地獄、餓鬼、畜生、阿修羅界には行かないよう説かれる。




だが、俺は「死者の書」は神と交信するための特別な仏具だと考えている。

つまり言い伝え、伝聞よりも「死者の書」と呼ばれる経典その物が強大な呪力を持つ神の持ち物だと思う。

俺はその経典の事が頭から離れない。


俺は東京からタイに飛び飛行機を乗り換えネパールに向かった。

ネパールのカトマンズ上空に近づくと雲の上にヒマラヤ山脈がそびえたっていた。

神々が住む山、と言われている。


俺の魂は震えた。

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