犬神憑きの末裔
山田健一郎
人外喫茶ソーマ
俺の名は犬神健
東京のとある4階建てのビルの地下1階で喫茶店のマスターをしている。
店の入り口の木の扉にはサンスクリット語でソーマと書かれている。
ソーマとはインド神話に出てくる神々の飲料である。伝説上の飲料とされているが実在する。
高揚感や幻覚作用を伴うが酒ではない。ソーマは神々と人間に栄養と活力を与え、寿命を延ばし、霊感をもたらす霊薬といわれている。神々とは人外の者の事だ。人外の者とは人間以外の者。つまり妖怪、鬼、怪物、霊、悪魔・・・いろいろな呼び方をされている者達の事だ。
俺はこの店でソーマを作っている。
このビルには普通の人間は入って来ない。ビルの入り口に結界が張られているからだ。人外の者達と俺の様な特殊な人間だけが入れる。俺は霊能力を持っている。名前の通り犬神憑きの一族の末裔だ。
犬神憑きとは平安時代から行われている蠱術(こじゅつ:蠱道、蠱毒とも呼ばれる。特定の動物の霊を使役する呪詛で、非常に恐れられた)の事だ。 飢餓状態の犬の首を打ちおとし、さらにそれを辻道に埋め、人々が頭上を往来することで怨念の増した霊を呪物として使う方法が知られている。複数の犬たちを殺し合いさせて餓死寸前に首を切り落としてから呪術に使ったりもする。
この術を使った一族は代々犬神に憑かれるのさ。俺の場合はそれが特に強く出たらしい。子供の頃からひどい目にあってきた。これのせいで小学校は4回も転校する羽目になった。なんせ俺には人外の者、妖怪や、霊などが見えるからだ。普通の人間が見えない者たちは、見える者を発見するとちょっかいを出してくる。そして誰かが不幸になる。何人も死んだ。若いころは親や先祖を恨んだものだが、もはやどうでもいい。おかげで高い収入を得る仕事にありつける。
普段は人外の者達にソーマや特殊な食べ物を食べさせる喫茶店のマスターをやっている。
依頼を受けて除霊や悪魔祓いも行っている。この店は人外の者達と平和的に交流する場だ。
この店のルールは店の中では喧嘩しない事。喧嘩っていっても人外の者通しの殺し合いの事だ。
店が壊れたら困るからな。俺はここで人外の者達と情報交換や特殊な食材の入手を行っている。
マンドラゴラや烏羽玉やペヨーテ、紅テングタケ、トリカブト、ヒョウモンタコ、THC、リジェルギン酸ジェチルアミド等他にもたくさんあるが切りがない。ここに来る人外の者達は大体人間社会に溶け込んで暮らしている者が多い。例外もあるが。人間社会に溶け込むのには人間を食わない事が必要になる。だから奴らの食欲や攻撃性を非常に弱らせる飲み物や食べ物を作って人外の者達に食べさせるのが俺の普段の仕事だ。
店内はカウンターに5人座れる席がある。4人座れるテーブル席が4つ。俺1人で切り盛りしているが忙しい時は4階に住んでいるビルのオーナーの娘にアルバイトしてもらう事がある。もちろん人間では無い。
今は月曜日の午後2時お客さんはカウンターに1人だけだ。
20代半ばの男性。名前は佐藤さん、常連だ。彼は狼男だ。月を見ると変身してしまう。普段は普通の人間だが変身すると毛むくじゃらになり顔の形は狼のようになり爪が伸び人を襲う。変身しないようにここにソーマを飲みに来る。満月の時は特に人の肉を食らいたくなるそうだ。今日はこの店特性のピザも食べている。ピザ生地はイースト菌を40度のお湯で活性化させて特殊な小麦粉を使って発酵させて焼いた。
「マスターこのピザ美味いですね!!シーフードときのこのピザでこんなに旨いのは初めてですよ!!」
「ありがとう。具はエラブウミヘビとヒョウモンダコ、饅頭ガニ、テングタケだよ。人間が食べたら死ぬ。だが特製の調味料を加えてあるし食材の組み合わせで相乗効果を発揮して、君の人を食べたくなる衝動を更に抑えてくれる働きをする」
「マスターいつもありがとうございます!!」
「いや、どういたしまして。それより噂の吸血鬼とコンタクトとれたかな?」
俺は今1番気になる事を佐藤さんに聞いた。
「ばっちりですよ。」
俺は吸血鬼のねぐらを聞き出した。
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