空へ登れ
ヒメカの発動。
C-07-L『台風』
戦闘エリアを台風の目の中に変更する。
風が吹き始めた。それは左回転に渦を巻き、瞬く間に勢いを増した。風で出来た壺と化した中心点、その空白地帯にヒメカとアタエの2人は対峙していた。
この台風は、無限と言ってもいいくらいに巨大ではあるが、高さは20m程度。風は外に向かえば向かうほど強くなる性質を持っている。脱出は不可能かに見えた。台風自体は移動しておらず、能力発動から5分後には中心地点も含めて全てを巻き込む巨大な風の塊になる。ヒメカが狙っているのがそれだった。
ヒメカの発動。
H-01-S『空中浮遊』
30秒間だけ空中に浮かぶ事が出来る。
ヒメカの身体が宙に浮かぶ。風とは無関係に、自分の意思で上に向かっていく。狭い範囲とはいえ、空を飛ばれてしまっては手の出しようがなく、アタエはヒメカの行動をただ見るだけの形になる。空中浮遊にも弱点はあり、発動時間は最長でも30秒。それが切れれば、発動していた時間と同じだけのインターバルをとらなければ再度飛ぶ事は出来ない。よってアタエからしてみれば、ヒメカが空中から何かをしてこない限り、降りてくるのを待てば良かった。しかし、
ヒメカの発動。
A-07-T『ブロウ』
触れた対象を2秒後に吹き飛ばす。
ヒメカが刻印したのは自身の身体。2秒後には、刻印のついた方向とは反対側に吹き飛ばす力が発生する。もちろん吹き飛ばす方向は、前後左右いずれでもなく上。空へ向かって自分の身体を吹き飛ばす。
『ブロウ』によって身体が浮き上がっている間、『空中浮遊』はその発動を停止する。そして吹き飛ばし効果が切れて落下し始めたら、再度『空中浮遊』を発動する。この2つの能力のループによって、半永久的な飛行が可能となり、少しずつではあるが上昇する。あとは『台風』の時間切れを待つのみ。まさに盲点をついた作戦だった。
この試合、まだ1つも能力を発動していないアタエは、攻撃のチャンスを失った事に気づく。時間には制限があり、そしてアタエは飛び道具を持っていない。ヒメカとの距離は直線にしてまだ5m程度。だが少しずつ『空中浮遊』+『ブロウ』のコンボで浮かび上がっていく。まだ台風の中にはいるが、それも時間の問題と言えた。
アタエは距離を詰めて仕留める方法を考える。メンターからの指示を思い出しながら、1つの作戦を思いつく
アタエの発動。
C-09-B『アミニット』
1分間、身体能力を強化する。効果が切れると同時に死亡する。
覚悟は決まった。後は実行するのみ。肉体は強化されたが、制限時間は更に短くなってしまい、残り1分。だが気にせずアタエは台風の中に自らの身を投げる。外側に向かって猛突進し、風に足元を掬われたかと思えば身体が宙に浮かぶ。風と共にぐるぐると回り始め、普通の肉体であればまず三半規管がやられて意識も飛んでいたかもしれないが、どうにか『アミニット』によって強化された肉体で耐える。
アタエの発動。
A-16-R『清水』
手から無限に水を放出する。
両手からの放水により姿勢をコントロール。更に、今度は台風の中心に向かって少しずつ距離を詰めていく。『台風』の目の中で上下するヒメカには何が起こっているのか分からないが、忠実にメンターの作戦を守り続ける。
アタエがヒメカの姿を再度捉えた。と言っても身体の向きは前後上下左右ばらばらに回転している為、ここから飛びついたり何かを投げたりだはほとんど不可能に近い。だが、アタエにはこの状況でも攻めの手段があった。
ヒメカの頬に水しぶきが当たる。台風の中で、アタエが四方八方に『清水』を撒き散らしたせいで、『台風』は大雨を伴う物へと変化していた。そして次の瞬間、ヒメカの身体を音と光と衝撃が同時に貫いた。
アタエの発動
H-22-S『電体』
最大5秒間帯電する。
アタエは自身の肉体から発せられた電気を、『清水』と『台風』によって吹き荒れる風の中に全てを流し込んだ。それはさながら雷雲のように機能し、ヒメカはそのど真ん中に放り込まれたような形になる。5秒、轟音と雷光は続いた。荒れ狂う風の中、水滴と水滴が雷を繋ぎ、やがてヒメカの身体を横から貫く。
雨が上がり、風も止んだ。
そして地上へ黒焦げになったヒメカの肉体が落ちた。
決着。
アタエの勝利。
参加メンター
アタエ 滝杉こげお様
ヒメカ 百足陣三郎様
感想
今回は先にヒメカが3つ出し、それをアタエが3つで攻略するという流れの試合になりました。試合に関しては出来るだけ2人を公平に描写したいと心がけてますが、この形式だとどうしてもアタエが主人公のようになってしまいますね。
それでも絵的にはなんとも豪快でしたし、攻略不可能な能力の組み合わせをクリアしていくという面白みもあったかなと思うので、個人的には満足です。
ご参加ありがとうざいました。またよろしくお願いします。
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