第39話「パーフェクト・ドラグーン、電次元へ飛ぶ!」~ストーリー構想など~

・玲也達は最後になるかもしれない夕食を食べていた。この日は理央が作っており母の手料理を食べるのも久しぶりで、味は何とも言い難いかもしれないが、それと別に箸が異様に進んでいた。だがあと僅かで食べ終わる所で玲也の箸が止まってしまう。皆がどうしたのかと心配するが、彼は「食べ終わりたくない……」と意外なことを言い出し、食卓の場で思わず泣いてしまう……この夕飯がもしかしたらこの地球で食べる最後の食事になってしまうのではないかと、母さんの手料理を久しぶりに食べたけれども、それが最期になるかもしれないと思うと、彼は今まで恐怖を押し殺して戦争に身を投じて戦い続けてきた。それがこの日になって一気にあふれ出すように玲也は涙を流していた。こんな場で泣いてはいけない、ニア達にこんな情けない俺の姿を見せたくないと分かっていても涙が止まらないのだ。


・するとエクスとリンは玲也の手をそれぞれそっと握っていた。恐怖に耐えていたのは自分も同じだから……と。リンは自分に希望をくれて、そして守るべき相手として玲也がいなくなってしまう事を恐れて、エクスは家族に代わって自分を支えてくれて、共に誇りある者同士として玲也がいなくなることに恐れて泣いたこともあり、その時玲也は自分たちを温かく見守ってくれていたのだから、今度は私たちが見守らないととの事だった。そしてニアは玲也の頬をつねる。これに思わず彼の涙が止まるが何をするのかと思わず突っ込む。すると彼女はあんたがそういう弱音を吐くとあたしの調子が狂うとニアは二人と異なりしっかりしなさいと彼を窘める。玲也がお前もこの前俺の前で思いっきり泣いていただろうと突っ込むと、確かにそうだけどと彼女の言葉の歯切れが悪くなる。最もニアはあたしもあんたもこれで情けない面を見せた者同士御相子ねと彼女は笑ってみせる。エクスはもう少し玲也さんに優しくできないのですかとニアを窘め、リンはニアちゃんなりに気遣っているとフォローする訳だが、理央は彼らの様子を見て玲ちゃんが素晴らしい仲間に恵まれたと笑顔で評する。玲ちゃんが自分で決めた道なら簡単にあきらめちゃダメ、けど玲ちゃんは今までもそうだったけど一人で背負い込んで頑張ろうとしていた、でも辛いときや苦しいときはもっと誰かを頼ってよいのと優しく語り掛ける。最も玲也にとってニア達が既に大切な相手であって彼女たちがいない事がもう考えられなくなっているのでは?と理央は突き付けると玲也は図星のような表情をしており、格好良いようにふるまっているけど本当は玲ちゃんが一番心配していると茶化せば、リンは恍惚して感動しており、エクスはさらに熱烈なアプローチをしかけ、ニアは少し照れて素直になれないながらもまんざら悪い様子でもなかった。そんな折に転送銃G1へアンドリューとリタから無事帰ってくることができたとのメッセージが届いた。この様子に思わず玲也達は喜びをあらわにする。理央は玲也へ元気出たでしょ?と語ればいつの間にか涙が止まっていた事に気づく。私はこの場で何も力になれないけれども、皆がもう私の子供のような存在だからきっとできる、一人一人が小さくても力を合わせれば何だってできると激励すれば、玲也からすっかり恐怖は吹き飛ばされていた。

・それからその夜だが、玲也はなかなか寝付けずシャルと才人とラインでやり取りしていた。シャルはやはり出動前になるとエレナは寂しがっていたが、オレアンはやはりお前はスチーブらとわしらの子だと涙ながらに彼女と最後になるかもしれないパーティーを開いて激励してくれたとの事。一方才人はイチと共にドラグーン・フォートレスで最後のパーティーに参加していたそうで、家族がもういない俺にとってお前らが少し羨ましいと思うけど、家族と別れることを考えたら……と不安そうな話を振る。これにシャルがそういう話題を前日にするのはどうなのと突っ込み、玲也も確かに自分もつらいがもう決心したとの事……と返事をしようとしたらリビングから誰か泣いていた。こっそり覗いてみると、涙の主は理央だった。彼女もまた玲也達が自分の元から離れて、もう帰ってこないかもしれない戦いに赴くことに悲しんでいた。しかし彼女が同時にもう玲ちゃんもそろそろ自分の足で貴方に追いつき追い越そうと羽ばたこうとしている頃かもしれないとの言葉に彼はハッとさせられる……。


・そして翌朝、朝食を済ませる玲也達だが理央の姿はそこになかった。玲也は昨夜の様子から、今から死地へ赴くかもしれない自分たちを見送るのはやはりつらいのだろうと察していた。しかしその折母がお守りを玲也の為に用意しており、さらにニア達だけでなくシャル、才人、そしてアンドリュー、ゼルガの分まで用意してくれていたのだ。この心遣いに玲也は感謝の念を抱いてドラグーン・フォートレスへ向かった。ドラグーン・フォートレスの待つアメリカ大陸には、ビャッコとフェニックスが護衛として配備されており、世界のプレイヤーたちが全員集っている。彼らへ今までに感謝して、また会えたらと約束を交わす玲也達。そしてゲノム解放軍がアンチ・トライアングル・フィールド発生装置を破壊したとの合図とともにフォートレスが一斉に浮上する。なぜなら発生装置が破壊されると同時に、バグロイヤーの太陽系に駐留する最終防衛部隊が一気にドラグーン・フォートレスを潰さんと降下してくるからだ。降下してくるバグレラ・アサルトとバグラムの群れに対して世界各国のハードウェーザーが必死でドラグーン・フォートレスを守らんと防戦する。彼らに守られながらドラグーン・フォートレスは被害を最小限に抑えて大気圏を離脱した。オール・フォートレスとの連結を行う間にバグロイヤーの防衛部隊から艦を守らなければならない。新たに配備されたアトラス・ホワイトらをはじめとする編隊、そしてマーゼスト、クロスト、ネクストがバグラム・ハイマニューバと応戦をし続けるのだが、まるでゲノムの残存勢力を全てドラグーン・フォートレス破壊に注ぎ込むような数に守り切れるかどうかわからない状態だった。


・そして死角からオール・フォートレスのジョイント部分をめがけて襲うバグラムの姿が……しかしサイキック・ビットミサイルが彼を粉砕する。このミサイルを駆使する白銀のハードウェーザーは――リキャストだ。ゼルガが帰ってきたのだ。そして彼はバグラムの編隊に対してバグロイヤー皇帝は既に天羽院の手で暗殺されており、彼が皇帝の名をかたってゲノムを誑かしているのだと、オール・フォートレスへ送った証拠映像と音声を公表するとともに、バグロイヤーはすべて天羽院が黒幕であり、彼らに自分たちは踊らされていたと気づくバグラムのパイロットたちは戦意を喪失していく。ゼルガは彼らに対して自分の到着が遅れたことを詫び、今からでも遅くない、共にゲノムを解放しようではないかと説くと、彼らの大半は投降の意を表した。


・そしてパーフェクト・ドラグーンが遂に合体した。ハードウェーザーの面々はすぐさま艦に張り付いた状態でいよいよ巨大次元跳躍装置が作動した。これによりパーフェクト・ドラグーンは太陽系からゲノム上空へと遂に飛ぶ。最もパーフェクト・ドラグーンを次元跳躍させるのはマリアの開発した巨大次元跳躍装置でも制御しきれずに故障してしまう。ブレーン博士はいわゆる片道切符だろうかと不安を述べるが、エスニック将軍は帰りの片道切符は自分たちで手に入れろとの事だと改めて、バグロイヤー打倒の最終作戦を成功させようと檄を飛ばす。


・ゲノムの現状は、ゼルガによる告発でバグロイドを駆る者たちの半数は戦意を喪失、または降伏の意を表明しているがまだ完全に駆逐されておらず、各地でレジスタンスとの戦闘が続いている。エスニックが考案した最終作戦はまずネクストが戦闘区域を駆け回りジャミングを駆使しながら敵側をかく乱していく事。それと並行して、パーフェクト・ドラグーンそのものを駆使してバグロイヤー勢力を駆逐しながら各地のレジスタンスや避難民たちの救助を行う事。そして天羽院はセントクロスと手を組んでおり、超常軍団がまだ兵力を温存しているとの事で彼らとの相手にクロスト、ヴィータスト、スフィンストが応戦する。そして残りのブレスト、リキャストがバグロイヤーの本陣を制圧せんと進軍する。この四方に分けてバグロイヤー駆逐を目的とする作戦は“オペレーション・X“いわば未曽有の作戦としてXと名付けたとの事。この作戦で玲也はネクスト、クロスト、ブレストの3機をマルチブル・シンクロードで同時に動かす必要があり、かなりの負担がかかるとの事、クロストにはシャルと才人、ブレストにはゼルガがフォローに回るとの事で、玲也はまずネクストに乗り込んだ。


・そしてネクストは各地を走り回りながらバグレラやバグラムを駆逐しつつ、トランスクロスとグレーテスト・サークルを併用してバグロイヤー側の連携をかき乱す。そのさなかゼルガから玲也へ通信が入る。彼はゲノムの混乱に地球人の君たちを巻き込んで、ゲノムの代表として頭を下げたいと詫びると、玲也は同じ地球人の天羽院がゲノムを混乱に陥れているのだから、お互い様だと彼を許す。それからゼルガは秀斗が生きており、現在も抵抗活動を続けている事を明かした。これにリンは何故早く言わなかったのですかと問うと、ユカからゼルガ様も早く伝えたかったけれども、それ以上に秀斗様が息子には伝えないでほしいと頼まれたからと意外な内容だった。ゼルガは玲也が父を超えようとして、ここまで来ていることに対して、彼を誇らしげに思うがゆえに敢えて自分から明かしたくないとの心境だった。自分の力でこの父に会ってみろ、お前が父を超えられるかどうかは話はそれからだ……との父の想いを知り、玲也はやはり父さんだと苦笑しながらも、やはりうれしかった。そして母からのお守りを見て、俺より父さんを守ってほしいと念じた所、リンはそのお守りの中に何か入っているのでは?と問う。これにお守りを開けてみてみれば、理央の手紙が入っていた。そこにはもしかしたら玲ちゃんがもう二度と帰ってこないような気がしたと考えるとやはりつらかった事、けれども玲ちゃんがもう帰ってこなくともきっと貴方はどこかで元気にやっているような気がしたとの事。お父さんを乗り越えることを貴方はきっと果たしてくれることを信じている。そこからもっともっと羽ばたいていけることを貴方の母は祈っている、お父さんに会ったら私は元気ですと伝えてほしい……この内容の手紙に玲也は自分を戦場に送り出すことがとてもつらいと思うのに、それでも自分の事を温かく優しく見守り信じている彼女の愛を思えば、何としてでも父に会い乗り越えていかなければならないと固く誓う。そんな理央の愛にゼルガも君の父だけでなく母も立派な人のようで素晴らしいと、もし会うことが出来れば会いたいとの事。そんな彼へゼルガにも母がお守りを用意したと話すが……。


・だがその時、リキャストとブレストの前に1機のハードウェーザーが姿を現した。その名はアルドスト……ハドロイド・レーブンに記録されており、そのプレイヤーこそハインツだ。ゼルガは彼にバグロイヤーは既に天羽院の手によって牛耳られているのにまだ戦い続けるのかと呼びかけるも、ハインツはそのような事は既に知っている。しかし、代々トレントス地方の将軍であった家としてたとえ皇帝が取って代わろうとも自分はバグロイヤーを見限るつもりはない、それに娘を生きながらえさせるためにハドロイドにまでした今、自分が戦わない事は娘を裏切ることにもなる。親子で最後までバグロイヤーの元で戦うつもりだと攻撃の手を緩めない。


・この事態に現れたのはイーテスト・インフィニティだった。アンドリューとリタは電装したら助からないかもしれない状況の為非常時の控えとして回っていたのだが、アンドリューはその非常時が今じゃねぇかと、ブレストとリキャストを守らなきゃ意味ねぇだろとの事。それから彼はハインツへ俺が相手になってやると2機を逃がして牽制をかける。この挑戦にせめて最期に親子ともども誇りある戦いで幕を閉じようとするならば、お前が相手ならちょうど良いとアルドストはイーテストに突っ込んでくる。リタに対してアンドリューは、あの時は運よく一命をとりとめた訳だが、今回は流石にどうなるかわからねぇと覚悟について確認すると、リタはあたいが一番もうダメだってわかっていた。


「見とけ玲也、ゼルガ。これが全米NO1ゲーマー、花形プレイヤーアンドリュー・ヴァンスの一世一代の大勝負になるってことをなぁ……!!」

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