第31話「少女とオカリナと電次元獣(バグビースト)」~ストーリー構想など~

・アフリカ大陸を奪還された七大将軍。グナートとハインツはこの敗因がトループが何者かと結託して作戦を妨害したことにあり、トループは散ったものの自分たちの存在を良しとしないものがいるのではと考える。ただレーブンだけは自分たちが一向にハドロイドを仕留めることが出来ないとなれば猶更見限られると主張。軍議の彼女は部下のソニアス・ボゥに出動を命じていた。彼女は元々バグロイヤー西橋荒れ田惑星スコルピオンのエージェントの一人で、レーブンらバグロイヤー幻獣の侵攻を前にエージェントたちが悉く全滅していく中で唯一生き残った。しかし戦いの中でこれ以上戦うことがスコルピオンの破滅に繋がってしまうとの事でまだ14歳の彼女は降伏を選んでしまった。その為守るべきはずだったスコルピオンの民から裏切り者として蔑まれていたという。


・一方レーブンは彼女を配下に加えていた理由は彼女の能力と別に、スコルピオンの巨大生物・ハウンドローを手懐けていることにあった。ハウンドローは彼女の命令に従って圧倒的な戦闘能力を発揮する。彼女自身ハウンドローを可愛がっている事もあり戦闘には反対していたが、彼女の手柄がスコルピオンの解放につながるとの事で従わざるを得なかった。その戦闘とはハドロイドを仕留める為に羽鳥玲也を暗殺しろとの事。彼を狙えば最大3人のハドロイドを手に入れることが出来るから……またソニアスからすれば生身で自分の手だけを汚す方が良いと思ったからだ。


・その頃電装マシン戦隊ではドラグーン・フォートレスが日本へ遂に到着。一方ゲンブを第4のフォートレス、もとい第2の遊撃部隊として運用する流れとなっており、ゲンブにはユーストとウィストが配備され、ウィストの代わりにビャッコにはサンディストが配備されることが決まった。そしてデュアル・メメント・モリとの合体機構を始めゲンブの改造が行われている中、同じ遊撃部隊同士か、玲也はステファニーから一緒になれてうれしいと求愛される。この様子にニアとエクス、ついでにシャルもヤキモキしており、4人の女性に囲まれている玲也にコイは風紀が乱れると嘆いており、シーンからもステファニーは自分のパートナーだからもう少し距離を置いてほしいと頼まれてしまう。玲也はステファニーを彼の元へ返して、別に自分はその気はないから安心してほしいと弁明するが、シーンからはけれども玲也はただでさえ3人のハドロイドに囲まれているハーレム状態、色恋沙汰で縺れが怒ったら大変ではと指摘されてしまう。ふとこの指摘にレクターからマルチブル・シンクロードを会得するには強い信頼関係が必要とのことで、このままの関係を続けていくことは大丈夫なのかと彼は考えてしまう。これにエクスがだったら自分が最も相手に相応しいとアピールしだすので猶更収拾がつかなくなる。シャルとニアが共に反発するので3人で玲也の取り合いへ発展してしまい、遠くからウィンが呆れ、才人が涙目で羨ましがっている。


・そんな状況の中リンから約束の時間に送れるとの催促を受けて玲也は3人の争いから抜け出すように逃げた。リンとの約束とは今日が理央の誕生日であり、プレゼントを二人で決めることにしていた。リンはプレゼントを選ぶのに結構はしゃいでおり何にしようかと迷っていた。自分はいつも母が気になっている本やBlu-rayなどを送っているとの事だが、流石にマンネリ気味かもしれないと思っていた。リンは確かに両親がいたころまで自分もプレゼントに迷っていた、そもそも家の事を普段からやっていると家事を手伝うことが当たり前になってしまうとの事だが……玲也はなら今日の夕飯はお前が作ったらどうだと提案する。リンは今まで玲也の事を気にかけて料理を作ったりしていたが、今日くらい別にお前の作りたいものを作ればよい、自分からしても気分転換になると寛容な様子であり、二人はさっそくスーパーへと向かった。こう買い物をしている様子を見て玲也は主婦の素質があるとつい彼女を評する。自分の母が多忙かつ家事が苦手なので自分が代わりにやっていた所があったので、人にやってもらうと凄い助かるのだとも……。これにリンは自分が玲也にプロポーズされているのかと勘違いして戸惑う訳で、一応誤解を解く玲也だが、正直3人に囲まれている中でお前は全然俺の事でアプローチしてこないと前々から気になっていた事を聞くと、自分はそういう争いがあまり好きではないと謙虚に答える。本当は3人と比べて魅力がないと言いたげだが彼女は彼を心配させたくないとそのことを話さなかった。ただ、玲也はお前のそういう所は好きだ、一緒にいて安心すると答えた。正直自分はそこまで恋愛ごとに関心はないのだが、ただこのままの日々は決して悪いものではないと今の心境を彼女に打ち明ける。その日々に対してリンもまた素直に微笑んで返した。


・その帰りだが、自分の家にソニアスという少女が住んでいた。理央に聞くと戦災で家族を失って逃げ伸びた所行き倒れになっていたのを拾ったとの事だそうで、身元引受人がくるまで面倒を見ているとの事。この様子に半分母の人が良すぎると戸惑う玲也だが、ソニアスは彼の顔をじっと見つめていた。エクスは彼の事を狙っているのかとライバル視するが、リンはバグロイヤーの侵攻で両親を失った彼女に対して、凄く分かるものがあると彼女を庇った。理央が菓子とジュースを持ってきて新しい家族が加わったようなものと喜んでもてなすと、ソニアスが玲也にジュースの入ったグラスを渡そうとするが……リンは自分のものかと誤解して取ってしまう。最も直ぐ玲也から指摘されて渡すのだが、その直後玲也の転送銃G1に近くにいるはずの彼女のメッセージが入った。「とりあえず頃合いを見て昼寝をしてください、私があぶりだしてみます」との内容で、玲也は事情を察しながら、いきなり怪しまれないようにニアを呼びに行くと二階に上がった。


・二階ではニアが少し不機嫌そうな表情をしていた。玲也は何があったか聞くと彼女は自己嫌悪していたとの事。よくわからないが二人の買い物の様子を見ていて、最近少しずつ分かってきているような気がするけど、あたしには家族に関してよい思い出がない事を気にしていた。みんな幸せそうな家族をもっているのと違ってあたしには何もない。エクスはともかく、人として嫌なところが殆どないリンにまでそのことで嫉妬している自分が嫌になっていたらしい。そのしおらしい様子にお前も結構変わったと玲也は以前だったらもっと尖っていたが、丸くなったと感じていた。この事にニアは変に同情するなと突っかかるも、正直自分も人との接し方で時々悩むことがあるとここ最近の事を話す。これに少しニアは納得した様子で、まぁないものを今からねだっても仕方ないから先を行くしかないねと少し和らいだ様子になっていた。とりあえず玲也は少し安心しながら、リンのメッセージをニアに示した。かくして二人で示し合わせて芝居を打つ。


・それから昼過ぎにソニアスは玲也の様子を確かめに向かうと、彼はまだ吐息を立てていた。その様子から早まったと彼女が感じた時は既に遅く、リンが暗器を突き付けて彼女の動きを止める。ニアが理央に対してソニアスの親族が現れて、迎えが来ると説明しており、大ごとにならないつもりでこの事件をリンは解決したかった。彼女はグラスに致死性の高い毒を入れていたのに自分は気づいていて、わざと間違えてグラスを取った時に毒を払っていたという。ついでにリンはイチへ密かに連絡しており、彼の調査で彼女がスコルピオンのエージェントだと分かったとの事だった。ソニアスは故郷がバグロイヤーの侵攻に遭った際、降伏してしまい、守るべき人達からも恨まれていた。エージェントたちがほぼ全滅して自分一人だけしか生き残れなかった故に、故郷の存亡の選択を託されたのは彼女には荷が重すぎた。そんな彼女が故郷にできる償いがハドロイドを仕留めて、故郷を解放させようと働きかける事だった。バグロイヤーの侵攻はゲノム以外にも手が伸びていて、そこには戦いを強いられる犠牲者が目の前にいる。玲也はだったらバグロイヤーに立ち向かうため共に戦おうじゃないかと説得を試みるも、バグロイヤーを倒すのとハドロイドを一人仕留めるのと比べないでとソニアスは反発。あなたみたいな敗北と屈辱を知らない相手にこの気持ちがわかるかと指摘されると玲也に思わず迷いが生じてしまう。自分は結局違うのか……と。


「ハドロイドを仕留めるのは簡単といいますが……本当にそうですか!?」


・するとリンの手に力が入りソニアスが思わず悲鳴を上げる。玲也さんは何もできず怯えていた自分に希望を与えてくれた大切な人だ、不可能を可能にさせてくれる凄い人だ。エージェントの端くれとして私だって玲也さんを守りたい、陰ながらでも支えていきたいと思わず彼の前で叫んだ。すると彼女のタグが光り輝いた……玲也はマルチブル・シンクロードの一端を見出したような気がした。


・しかしその時イチからモンゴル付近でバグビースト・バグハウンドローとバグラッシュの群れが接近しているとの報せがあった。ハウンドローがドナルディによって勝手に改造されていたらしくソニアスはただ呆然とする。リンがこれこそバグロイヤーのやり方ですと彼女に語り、玲也と共に出動を誘いかける。彼女は自らの意志でネクストを電装させることに成功。ビーグル形態の彼女に玲也とソニアスを乗せてモンゴルへと転送した。サンディストとウィストが既に戦っている戦場だが、マルチブル・シンクロードによる電装は彼女に結構負荷を与えていたようで、エネルギーが半分近くにまで消耗している状態に追い込まれていた。迫るバグハウンドローはソニアスの声も聴かず、牙となっているビームサーベルでネクストをかみ砕かんとして、至近距離でニードルマイトを連射する。この様子にソニアスがハウンドローの心が残っているならばと、彼を大人しくさせるオカリナを奏でだす。彼女の行動へ玲也は何の役に立つのかと思うものも、ネクストなら出来るかもしれないとサイレント・ブローでバグハウンドローを突き刺し、機能を停止させた状態のうえでグレーテスト・サークルを発動させて周囲をジャミングさせた状態でソニアス奏でるオカリナの音を流す。これによりバグハウンドローはまるでハウンドローの頃のように涙を流しながら静かに動きを止めた。そして、残りのバグラッシュの群れに対してはスフィンストとコンバージョンしてアサルト・シュナイダークローとドリルバンカーの併用で次々と片付けていった。最も玲也はクロストへ電装してバグハウンドローを守るようにゼット・フィールドを展開しており、今のネクストは才人の助けがありながらも彼の脳波に従いながら動いて次々とバグラッシュの群れを退けていった。


・その後戦闘が収まり、ソニアスは動かなくなったバグハウンドローの元へ飛び出していった。バグハウンドローはサイレント・ブローを受けたことで機械としての機能が停止していた事から、重々しくも彼女の元へ動き出した。これにソニアスはリンの制止を振り切って、親友同然の彼が無事だったことに喜ぶ……のだが、動き出したバグハウンドローをまだ敵が生きていると誤認したブルー・ホワイトの放つビームランチャーを受けて爆破四散。この爆発に巻き込まれた後、ソニアスの姿はどこにもなかった……。彼女にとってバグロイヤーに屈してしまい故郷から蔑まれて帰る場所がない中で、ハウンドローが心の拠り所でもあり守るべき存在だったのではないだろうか。彼女にとって故郷を解放する事も、バグロイヤーを倒すことも、そしてハドロイドを倒すことも果たせない。たった一人の彼女は重過ぎる使命に押しつぶされそうになる中で、最期は最愛の友・ハウンドローと運命を共にして楽になりたかったのかもしれない。


「いわないで、玲也さん……!」


・もし自分もそのようなことを考える時が来たら……と恐れが過り、玲也が思わず口にしようとしたとき、リンが彼を抱きしめながら叫んだ。私が玲也さんを守る、なぜなら私は……と。その先彼女が泣いてしまい聞き取れなかったのだが、少なからずいつもとは思えないリンの姿を前に、一瞬の弱気を今は振り切る玲也。そしてバグロイヤーに苦しめられるのは地球やゲノムだけでない。その為に戦わなければだめだと……

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