ミュータント・ブラッド・ゼロ

玖音ほずみ

第一章 純然/神倉沙月

0/純然

0/純然 ①

 あの娘はね、天才だよ。

 まさしくギフテッド。神からの贈り物と評するのが適しているだろう。

 だって、そうでもなければ――彼女はこの世界に存在しているわけがないのだから。



 変異血種ミュータントは、主に三種類に分類されるということは、君も知っているだろう?


 自然環境などが原因で起きた後天的な突然変異による、自然変異型。

 同じく後天的だが、薬物投与や肉体改造による、人工変異型。

 そして――先天的に変異している、天然変異型。


 天然変異型の変異血種ミュータントは、それほど珍しいものじゃない。

 人間、動物、あるいは植物。

 おおよそ生物に分類されるモノからは、極稀に遺伝上ありえない変異をした状態でこの世に生まれ出るモノがある。


 通常はそれを突然変異と言うのだが――その中でも元の種から超越した変異を起こして、生命として生まれ出た存在。それが天然変異型の変異血種ミュータントだ。


 人間が元となった変異血種ミュータントで例えるのならば、鬼や吸血鬼がそれらに分類されるね。

 動物が元となるものなら、神話上に現れるヤマタノオロチのような怪獣、怪談や民話に現れるなどの妖怪もそうだろう。


 もっとも――別に珍しくは無いと言っても、変異血種ミュータントに至るような突然変異体なんて、そうそう簡単に生まれるものじゃない。だから、人工変異型の変異血種ミュータントなんてモノを作り出す不埒な輩が後を絶たないんだけどね。


 自然変異型の場合、主に覚醒することで変異血種ミュータントになることが多いんだけども――まあ、こっちもそう簡単に生まれ出るものじゃない。


 昔はそういった変異血種ミュータントになる可能性があるモノを、人工的に覚醒させようとする実験が主流だったのだけれど、それは人工変異型を作り出そうとするより難しく、何より覚醒後のコントロールが効きづらくて危険でね。そんな実験を今でも主流にしている研究者たちがいたら、時代遅れの阿呆か、意地になってやめられない愚か者の集まりか、その危険すらも凌駕してその先が見えている超越者か――そのいずれかだろうね。


 っと、話が少々ズレてきた。すまないすまない。


 つまるところ、変異血種ミュータントは突然変異体であることには変わりない。通常の突然変異体と比べると、元の種を越えた異常な変異を起こしている――という違いはあるけどね。

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