第五十五話 とある村
物々交換をしに来た町の人たちは、自分たちで育てたであろう様々な野菜や果物を持ち寄り、いつの間にか長い行列が出来ている。
これでも前よりは少ないと、苦笑いしながらゼルギウスさんは言っていた。
ふと、彼らを見てみるのと、その見た目からやはり貧しさがうかがえた。
服は生地が薄く、寒さを耐えるには厳しそうだ。それに、皆やせすぎているような気もする。
食料もあまりないのだろうか。
少しでも私たちの持って来た物が足しになればうれしいな。
そんな事を考えていた時、一緒に来てくれた村の青年たちがひそひそと会話する声が聞こえて来た。
「やはり、前に来たときよりも酷くなってるな」
「あぁ、酷くなる一方だ」
「病気とかも流行っているかもしれないな」
「この町の人たちはいい人ばかりだというのに、この国の王は何をやっているんだ」
「俺たちの村にも攻めて来ていたし、自分の事しか考えてないな」
セイゴさんたちだけじゃなくて、村の他の人もここの王には呆れているみたいだ。
前の王様はこんなことなかったのだろうか。今の王様になってから、こんなひどい状況になったというのだろうか。
どこか胸が痛く感じた。
「綾ちゃん、綾ちゃん」
私を呼ぶ声に振り返ってみると、背中に何人もの子供を乗っけて首を傾げているドゥフトさんの姿があった。
「子供と遊んでいたのですか?」
「そうそう、俺はいつも荷物係で一緒にきて、それでみんなと遊ぶんだー!」
皆とは仲良しなんだよ!といいながらその場で何回か足踏みをする。
その揺れる振動が楽しいのか、子供たちはキャッキャッと楽しそうだ。
「綾ちゃんはここの事良く知らないからね。俺が知ってる事なら答えてあげようと思ってさ!」
「急にどうしたんですか?」
「だってだって綾ちゃん、なんか難しそうな顔してたからねぇ。もしかして、なんか思う所とかあったのかなって思って!」
私の少しの変化にも、ドゥフトさんはどうやら気付いたようだ。
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