第14話

「……」


「というわけであんたも殺してあげるからね。覚悟しなよ」


「……あなたにそれが出来るかしらね」


「なんだってぇ!」


女はバットを闇雲に振り回し始めた。


私は避けながら機会を待った。


そしてそれはすぐに訪れた。


女が力いっぱいバットを振り下ろした際、その勢いで少しバランスを崩したのだ。


私はそれを見逃さなかった。


私はすばやく女に向かって踏み込むと、右手を女の喉もとめがけて突き出した。


「ぐぶっ」


私が右手を引くと、女の首から大量の血が噴出した。


それはまるで小さな噴水のようだ。


私の手にはサバイバルナイフが握られていた。


さっき護身用にと思ってテントから取ってきて、そのまま隠し持っていたものだ。


女は手で首を押さえて出血を止めようとしたが、そんなもので頚動脈を切って流れ出る血が止まるはずもない。


女はそれでも片手で握り締めたバットを力なく振ってきたが、もちろんそれが私に当たることはない。


やがて女は動きを止めて、地面に倒れこんだ。


――やったわ!


安堵とともに、得体の知れない恐怖心がふつふつと湧き上がってきた。

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