第11話

振りほどこうとしたが、男の力が強くて駄目だった。


――いや、ちょっと、いくらなんでも……


苦しい。


本当に苦しい。


なんとかしようと考えたが、苦しみとあせりで頭が思うように動かなかった。


すると。


ゴン


と大きな音がした。


首を絞める力が無くなっている。


見れば男が白目をむいて立っていたが、やがて前のめりにゆっくりと倒れてきた。


私は慌てて避けた。


うつぶせの男の後頭部が見えた。


それはばっくりと割れていた。


気付けば小太り女がそこにいた。


その手に金属バットを持っている。


夕食後に男が素振りをしていたのを見たが、そのときに使っていたバットのようだ。


私は助かったことは助かったが、男が死んでしまった。


この女は私を助けるために自分の彼氏を殺したというのか。


私は女を見た。


女はそのバットを再び振り上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る