埜々の本気
「本気って、いやいや、流石にこんな所じゃ無理ですよ!そこまで私、魔力コントロール得意じゃないですし!」
埜々が慌てて首を振る。
埜々が本気を出せないのは威力が強力すぎるからだ。
だが由美子には考えがあった。
「大丈夫大丈夫!埜々ちゃんのフォローは私がするから!」
自信満々にそう告げる由美子とは裏腹に不安そうな埜々。
しかし、埜々は心の何処かで滅多に機会のない自分の本気を出してもいいという許可に心が揺れ動く。
天秤の重りは埜々の本心に傾いた。
「本当にどうなってもしらないですからね!」
埜々は片手を空に掲げ目を閉じる。
「謳え。星光る七つの流星よ」
埜々の上に七つの七色の球体が現れる。
球体一つ一つはバスケットボールくらいの大きさだ。
「一つは赤、それは燃え盛る紅蓮の流星よ。二つは白、導く蒼天の歌声よ。三つは青、・・・・・・」
一つずつ数えていくごとに球体は天高く上っていく。
「七つは黄。織りなす雷は天の怒り!」
全ての球体が空に消えたと思ったら。真昼の空から光のレーザーが降り注いだ。
それは流星のように鮮やかな光を放ち流れていく。
「スターダストレイ!」
次から次へと光線が降り注ぎ、トロールを飲み込んでいく。
そんな中、一筋の光は街の方へ向かい降り落ちようとするのを埜々は止めることができなかった。
「やば!?」
「だからフォローするって!」
由美子手を地面につけると光線が落ちた場所に水鏡のようなものが出来上がていた。
光線はそれに反射し空へ軌跡を残し消えていく。
それに一安心した埜々だがまだ気を抜く事は出来ない。
一体のトロールは流星に体が丸ごと飲み込まれて消滅したが、もう一体のトロールは撃ち抜かれた部分を再生しながら逃げ惑う。
しかし体の大部分を消すような一撃がモロに直撃した。
だが片手指一本、トロールは光の一撃から逃れた。
「まずい!あのすばしっこいのの破片が!」
「あれはいいよ、私が捉える!」
手を胸の前で叩くとその破片の下から紫色の水の塊が現れる。
「アシッドボール!」
すぐさまその水はトロールに破片を包み込む。
するとどうだろうか。
超速再生をしていたトロールだが、破片は再生することなく、水の中を漂っている。
「再生されない?」
「ああ、この水球は物を腐敗させる効果があるからね。この肉片が消滅しない所をみると、超速で再生と破壊が繰り返されているんだろうね」
ふうと2人は息をつく。
「まあ、これで魔獣の方は片ついたかな」
しかし、埜々は辺りを見渡し、穴だらけに周りを見つめながら乾いた笑いを出す。
「しばらくこの校庭は使えそうにないですね」
そんな事を話していると遠くから
パキン
と何かが割れる音が響いてきた。
コップが割れるようなそんな音だ。
「「ん?」」
2人が顔を見合す。
無論2人もそれがなんなのか分からないが、その音がどこからしたのかを探る。
「今のなんでしょうか」
「あっちの方からしたね」
そうして由美子は校舎の方角を指差した。
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