黒雷
精霊の少女は再び雷となり、康太の前に現れる。
康太は咄嗟に剣で振り払うが、空をかすめただけだった。
気がつくとまたしても背後を取られ、背中に手を当てられた。
「・・・て」
そしてまた少女は何かをつぶやき、魔力の塊を至近距離で当てられる。
「がっ!?」
康太は吹き飛ばされてるが、なんとか受け身をとる。
既にあちこち打ち身だらけで、あとでちゃんと確認しようものなら身体中青あざだらけだろう。
康太はヤケクソ気味に少しニヤつく。
(康太様!大丈夫ですか!?)
「やっばい、結構効いたっス・・・」
リーシャが心配するように声をかける。
康太は背中へのダメージが大きく、康太は片膝をついて息を整える。
少女がつぶやいていたのは呪文だと康太は思っていた。
しかし、今の一撃の際につぶやいた言葉は康太の耳にはきちんと届いていた。
頭の中は冷静でいられるのはきっと痛みのせいだろう。
もし、万全の状態だったらおそらく怒り狂っていた。
「精霊に助けを求められちゃ、それに俺が答えないわけにはいかないっしょ!」
剣を構え、再び精霊の少女に向かい走り出す。
精霊は先程と同じように康太の目の前から消えて、背後の回り込む。
しかし、目で追っていては後手を取ってしまい、また先程と同じような攻撃を喰らってしまいかねない。
「リーシャ!」
(はい!)
康太は地面に剣を突き立てた。
魔力を全て込めるかのように剣が光る。
「炎陣!」
康太の足元に魔法陣が現れそこから炎が溢れ出す。
炎は精霊の少女だけではなく康太をも包み込む。
燃え盛る炎は音を立てながら周囲一体を熱に晒す。
康太自身も体に火傷を負っているが、その代償を払った甲斐は十分にあった。
「捉えた!」
康太は炎に怯んだ精霊の少女の隙をついて鳩尾に拳を打ち込む。
うまく決まったようで少女はそのまま倒れ込み、康太は少女を抱えて、2人を包み込んでいた炎を剣で薙ぎ払う。
先程までの業火が嘘かのように静かな静寂が訪れた。
すると見計らったように疎らな拍手が聞こえてくる。
「すごーい、まさかその精霊を倒せるなんてね」
「あんたらこの子に何をした」
静かに、そして激しく康太は怒っていた。
少女が康太を攻撃するたびに
「助けて」
とつぶやいていた。
どうやって精霊を無理矢理に操ることができていたのかは康太には分からなかったが、その行為を許せないと思った。
彼女ら精霊にも意思がある。
それを踏みにじる行為を精霊使いである康太には許しがたい行為だ。
「そうだねえ。私に勝てたら教えてあげるよ」
そう言って今まで傍観していたカトレアが魔法陣の中から槍を引き出した。
矛先が三又に割れている矛先からは時折電気の流れる音がバチバチと響き、威嚇してくる。
「トライデントっていうの。可愛いでしょう?」
「はっ!どこがっスか!」
既に身体中ボロボロで満身創痍の康太だが、ここで引くわけにはいかない。
だが今戦っても勝機は低いと分からないほど康太は我を失っていなかった。
「リーシャ、もしかしたらアレ使うかもしんないっス」
少し低いトーンでリーシャに語りかける。
それに対して、リーシャの返事は簡潔だった。
「はい」
カトレアがトライデントと呼んだ槍の矛先に目に見えるほどの雷が纏われる。
だが、さっきまでカトレアが放っていた雷とは違い、色が黒く染まっている。
「それじゃあ、さようなら」
雷鳴と共に黒雷が康太達を飲み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます