第63話 対戦
お互いに少し離れた場所にセットアップされたらしい。視界、レーダー共に反応無し。
「相手は接近戦よりの機体って言ってたから、先に見付ければ有利に戦えるかな?」
ぶつぶつと、小声で口に出すのが癖になっている…みたい。自分では気が付かないんだよね、こういうの。
操縦桿を倒し、機体をゆっくりと進める。『カション。カション。』と、足音が響く。
「さてと、どうするかなぁ?」
キョロキョロと辺りを見回す。
少し離れた場所にいい感じの高台があるのが見えた。
「とりあえずは、あそこに登ってみよう…。」
高台をとれば、有利になるはず。
しばらく『カション。カション。』と歩くと、目的の高台の近くまで来た。
特集な装備がないので、登れそうな場所を探しながら更に近く。
「あそこからなら登れそうだ。」
そちらへ向かう。
その場所に後少しってところで、無意識に左手でグリグリを操作して盾を構え直した。
直後、目の前が『ちゅどどどどーーーん!』と連続で爆発した。
「ヤバ! 桃河さんが何か仕掛けてた!?」
「おーほほ、油断大敵ですわ。葵さん。」
私が登ろうとしていた高台に桃河さんの機体か立って、こっちを見下ろしている! 桃河さんらしい…。
「レーダーには!」
「あら、読んでなかっのですか?」
「えっ? まさか、ステルス付いているんですか?」
「違いますわ。[このステージの岩が赤いのは鉄分が多く含まれていて、レーダーは役に立たない。]って書いてあったでしょう。」
「あっ…。」
いっぱい解説があったから面倒になって全部読んでなかった!
「葵さんたら。」
と、笑っていた。やっちゃったぁぁぁぁぁ!
やっちゃったものは仕方ない! 気を取り直して、
「レーダーに映らないから、私がここに来るのを読んで仕掛けたと…。」
「そうですわ。でも、葵さん私(わたくし)の仕掛けを読んでいましたわね。」
「先輩に似た様な仕掛け喰らいましたから。」
「なるほど、良き先輩ですね。」
「同感です。」
「てやぁぁぁぁぁ!」
桃河さんの掛け声で『バサァー!』と私の機体に『青い奴(仮)』が、頭上から影を落とす。
操縦桿を引き、ペダルを目一杯踏み込んむ。一瞬の空転から地面を捉えたタイヤが機体を後退させた。そして、私の機体のギリギリの所を『青い奴(仮)』の放った白刃の軌跡が二本空を斬った。
やっぱり二刀流だ! カッコ…って、そんな場合じゃないし。
機体を後退させながら、ヘビーライフルの狙いを付け『ドゥ!』と放った。
着地姿勢から素早く立て直した『青い奴(仮)』は、タイヤを軋ませながら回避する。そして、ターゲットが居なくなった弾丸は岩に『ボゥ!』と、大きな穴が開けた。
「すんごい、威力だ。」
と、感心。
「これに、狙われたら嫌だよね…。」
十分威嚇になるって事が解った。続けて引き金を引くが、また岩に大きな穴が開いた。
『青い奴(仮)』は、私の左側に回り込み、ヘビーライフルの死角へと潜り込む。
「桃河さんなら、そうくると!」
シールドを肩の高さで水平にして、『青い奴(仮)』に狙いを付ける。
「いけぇぇぇぇぇ!」
シールドの裏から、白い尾を引きながらグレネード弾が『青い奴(仮)』に飛んで行く。今、速度を落とす様な事をすれば確実にヘビーライフルで狙える。上手く、二択攻撃になった。
『どかーん!』とグレネード弾が命中し、爆炎と爆煙が『青い奴(仮)』を覆う。
「や、やった?」
はっ! し、しまった! 小南先輩に「フラグ立てたら駄目。」って言われてたのに…。また、やってしまった。
爆煙が晴れると、やっぱりフラグの効果なのか『青い奴(仮)』が立っていた。
「あ、あれは!?」
超驚いた。
『青い奴(仮)』の両肩の後ろに付いていた円い中型シールドが胸の前で横に並んで構えられている。それで、グレネード弾を防いだんだ。しかも、両手には剣からを握ったまま。
どうやって、シールド構えたんだろう…。
ん? 両肩から一本ずつ棒の様な物か出でる?
「あーっ!」
思わず声が出た。両肩から出てる棒は、実は背中側から出てる細い腕だ! あの『青い奴(仮)』は、四本腕なんだ! ず、ずるい!
そんな一人コントをやってると
「いっけぇ!」
と、叫ぶ桃河さん。
『青い奴(仮)』が胸の前で構えていた二つのシールドの…。
少し説明しとかないと解りづらいかも…。
って事で『青い奴(仮)』の円い中型シールドは、ニ重の円になっていて、中央が濃い黄色で外側が小豆色。その濃い黄色の外側に近い部分がスライドして、小さな穴が円を描く様に十個ぐらい並び、更に小豆色の部分もスライドして、こっち向きに小さな針みたいな奴が、これまた円を描く様にズラリと並んだ。
黄色方の穴から『ダダダッ!』と弾丸。針って思ってた奴は、煙の尾を引きながら無数に射出された小型のミサイルだった。それが左右のシールドから出るから大変!
それは、もう『ギャンギャン』五月蝿いぐらいに、撃ってくるとしか言いようがない。
そうだ! 『青い奴(仮)』から『ギャンギャン』に改名しよう。私の気が確かなら、そんな名前のファション雑誌あった様な…。
私は操縦桿を右に、左に、前に、後ろに…。色々な方向に倒しながら飛んで来る弾丸とミサイルを回避…。できないものはシールドでガード。一発一発はたいしたダメージじゃないけど…。数食らうとヤバい。
それにしても、盾にミサイルとか仕込むのは誘爆したりしないのかな?
あっ、私の機体もシールドの裏にグレネード弾が装備してあったんだ…。
確か【五十歩百歩神拳】って言うはず…。五十歩でも、百歩でも神の拳の威力は同じ…。
………。
…。
お願い誰か突っ込んで……。(読者さんでも良いよ!)
ボケてる間にも、攻撃は私の機体を捉えて来る。
とりあえず、今をしのいでいれば、攻撃を際限無く続けられるわけじゃないはず!
不意に、攻撃が止む。
逆にヤバい!
シールドを外して視界を確保。と、同時に肩のキャノン砲を水平に『どん!』と撃つ。
桃河さんの事だから、接近戦を仕掛けているはず。
「いた!」
キャノン砲の弾を、さっと避ける『ギャンギャン』が見えた。
「流石ですわね。」
桃河さんが嬉しそうに口元を緩ませながら言う。
「お陰様で。」
私も自然と口元が緩み嬉しそうに言っていた。
避けた方向に機体を旋回させながら、ヘビーライフルを『ボゥ!』『ボゥ!』と続けて撃ち追撃する。
少しずつ『ギャンギャン』の機体近くを弾が通る様になってくる。
「そこ!」
旋回の勢いを利用して、キャノン砲を先読み撃ち! それは、狙い通りに『ギャンギャン』を捉え『どぉぉぉぉぉん!』と爆発した。
「やったか?」って言わないよ。あの円いシールドの右側で受けたの見えたから。
でも、キャノン砲の威力に押され『ギャンギャン』はよろけた。更に追撃と狙う。
「やば!」
見えたのは、攻撃を受けてない方の左側のシールドから放たれた弾丸とミサイル。
操縦桿を倒してペダルを踏んで回避しながら、岩陰へ滑り込む。その時に『ギャンギャン』も岩陰へ入ったのを確認した。
「流石、桃河さん。きっちりと反撃してくる。」
小声で、呟く。
「流石、葵さん。当ててきますね。」
小声で呟く。直後に操縦桿を倒し、ペダルを踏む。
「参りますわよ。葵さん!」
お互いに声を出しているが、二人共聞いてない事に気が付いていない。
こっちの機体の方が射撃が有利みたいだけど…。パンツァー・イェーガーの腕前は桃河さんの方が上だし…。
どうする? 打って出る? とか思っていたら『ギュイーーーン!』って、スピーカーから出る音が次第に大きくなっていく。
『来る!』桃河さんが来る!
このまま岩陰にいたら、有利な位置とられる。
シールドを構えながら目一杯ペダルを踏んで岩陰から飛び出す。
「見えた!」
二つのシールドを全面に構えた『ギャンギャン』が真っ直ぐにこっちに向かって来てきる。
「こらなら!」
私は『ギャンギャン』に向かって反時計回りに動く。
「そうきますか! では、こちらも!」
と、合わせる様に『ギャンギャン』も、向かって反時計回りに動く。
それは、二機で大地に描く大きな円。
私はシールドを構えつつ
「当たれぇ!」
と、『ギャンギャン』に『ドゥ!』とヘビーライフルを撃ち込む。
「甘いですわ!」
スルリとかわす。
「お返しぃ!」
『ギャンギャン』が突き出したシールドから『ギャンギャン』と撃ってくる。
「なんの!」
と、機体を回避させた時『ちゅどどどどー!』と足元が小さく連続で爆発する!
「し、しまった!」
ここにもあった。
その爆発で機体のバランスが崩れた。
「来る!」
こんなチャンスを桃河さんが見逃すわけがない。
「かかりましたわね!」
一気にペダルを踏み込み『キュイィィィィィン!』とタイヤが唸りを上げて加速する。
「まずい、早くぅ!」
体制を立て直すために、ガチャガチャと操縦桿を動かし、上半身旋回用のペダルを交互に踏み込む。
体制が立て直った時には、桃河さんの『ギャンギャン』はもう目の前!
「ま、間に合え!」
盾を突き出し構える。
「てゃー!」
掛け声と共に振り上げていた右の剣で斬りかかった。
『がい〜ん!』とスピーカーが鳴き、モニターが左右に小さく揺れた。それは『ギャンギャン』が振り下ろした剣を受け止めたって事。
なんとか間に合ったみたいと、安心しちゃ駄目だった! 同じ『がい〜ん!』音が響き、モニターが揺れる。二刀流だったぁ!
「受けましたか。でも、これなら!」
斬り下ろした左の剣を引き上げる反動を利用し、機体を右周りに滑らせる。
そこにあるのは、無防備な背中。
「てりゃー!」
右の剣で斬った。
一瞬の間より、ちょっと長い一瞬。それが意味するのは「ヤバい!」って事。
咄嗟に操縦桿を目一杯前にして、ペダルはベタ踏み。離れないとまずい。
『ずばっ!』と惨状を告げる音が響いた。続いて[ALERT]の文字と内容が表示された。
確認すると、今の攻撃でキャノン砲に弾薬を補給するバックバックが破壊されてた。
「やられた!?」
「まただわ。前の戦いでも、私(わたくし)の必勝の一撃の打点を外した…。」
緩んだ口元が今の感情を物語っていた。
「ライバル認定は、間違ってなかった様ですわね。」
「まだだぁぁぁぁぁ!」
ダッシュ中の機体を反転させ『ギャンギャン』の方へと向ける。
「お願い、出て。」
キャノン砲のトリガーを引く。
幸いにも『どん!』と発射された。が、モニターのキャノン砲に[☓(ばってん)]が付いた。もう、使えない。
「そうでなくては。」
二つのシールドを胸の前で構えた。
『どぎゃぁぁぁぁぁん!』と右のシールドに直撃。
「今だ!」
今度は、ヘビーライフルをキャノン砲が当たったシールドへ『ドゥ!』と撃ち込む。
『ぎゃわーーわん!』とシールドに当たり弾かれる。
「まだまだぁ!」
『ドゥ!』『ドゥ!』と立て続けに二発追加で撃ち込む。同じ様に当たるが弾かれた。
「だ、駄目なのぉ…。」
「このシールドの前には、そんな攻撃は無意味ですわ!」
勝ち誇る。
諦めかけ、思いとどまる。[諦めたら、そこで試合終了!]って誰か言ってた! まだ、終わりたくない。
トリガーを引き『ドゥ!』とヘビーライフルを撃ち込んだ。
着弾。
「無駄…。」
って言いかけた、まさにその時『バキーーーン!』と、シールドが宙を舞った。
「な、何が!?」
モニターに表示された[ALERT]に驚いていた。
「いけた。」
ちょっと安心。あの二つのシールドは、[ダメージ]は防いだけど…。[威力]までは防げなかった。だって、あの時『ギャンギャン』がよろけたからね。
頭の中でリプレイ。
「まさかな、戦い方ですわね。」
改めて、自分のライバルに感心し、
「キャノン砲とシールド、痛み分けってところかしらね。」
瞳の奥の闘争の炎が燃え上がった。
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