月の裏側

 やっと二月のカレンダーをめくった。捨てようとしたら、裏側に書いてある文字に気付いた。

『そろそろ迎えに来るように!』

 二月二十七日に大ゲンカして、以来実家に帰っている妻の字だ。

 三月一日に僕が気付くと思って彼女は書いたのだろう。もう十三日だ。相当怒っているに違いない。

 ため息をつきながら、なんとなく三月の裏側を見るとそこにも文字があった。有名な洋菓子店の名前と商品名らしきもの。ご丁寧に値段まで書いてある。

 明日これを買って迎えに行くか、と考えてから、ふと思い出す。明日はホワイトデーなのだ。見透かされているような気がして笑ってしまった。そういえば、自宅で笑ったのは久しぶりだった。


2013.03.13 22:41(Wed)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る