アネクメーネ

 突然、手元も見えないほどの吹雪になった。上からも下からも雪が吹き付ける。寒いのか痛いのかよくわからない。振り返ると、窓越しに太陽がなんとなく見える。外は変わらずいい天気だ。

 慌てて、手探りで彼女の手を取り、両手で握ってなだめる。

「落ち着いて。誤解だよ、誤解。どこにも行かないから大丈夫」

「ほんとう?」

 涙声で彼女は聞く。僕は力強く何度もうなずき返した。彼女が落ち着きを取り戻すにつれ雪も収まってくる。勢いがなくなると、積もった雪はあっという間に溶けて消える。

 ちょっとした失言ですぐこうなってしまう。彼女に悪気はないから困る。

「ずっと一緒にいてくれる?」

「ああ」

「私を置いて出て行ったりしない?」

「もちろん」

 外は灼熱の砂漠なのだから。


2013.01.29 21:22(Tue)

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